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病気の悩みを漢方で
イライラ
1.イライラに用いる生薬
黄 連
漢方医療ではイライラしている患者さんを診ると、黄連(オウレン)、柴胡(サイコ)、桂皮(ケイヒ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)などの含まれた処方をまず想定します。
その上でイライラ以外の症状や患者さんの様子から処方の選定を行います。
2.黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)…イライラ・のぼせ
黄連解毒湯の適するOGさん
(みぞおちのつかえ感)
山梔子は、クチナシの果実
黄連解毒湯は黄連を含む頻用処方です。
イラストのOGさんのような、体力中程度以上で、のぼせ気味で顔色赤く、イライラして落ち着かない傾向のある人には黄連解毒湯が適します。
黄連解毒湯は、OGさんのような人の「胃炎、不眠症、動悸、口内炎、湿疹皮膚炎」のような症状・病名に適します。OGさんは仕事をバリバリこなす仕事人間ですが、自己を過信する傾向があるので、狭心症に注意しないといけません。
なお黄連解毒湯は更年期の婦人のイライラやのぼせ感(更年期障害)にも用います。
黄連解毒湯には、黄連、黄芩(オウゴン)、黄柏(オウバク)、山梔子(サンシシ)という4種類の苦い生薬が配剤されています。漢方医学では苦い生薬は、熱(のぼせ)を冷やし、気持ちの逆上(気逆-キギャク)を治すと考えています。
黄連解毒湯の4生薬の中では黄連と山梔子(クチナシ果実)がイライラを鎮めるのに寄与しています。
3.三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)…イライラ・のぼせ・便秘
OGさんと同じような病態で便秘であれば、三黄瀉心湯を短い期間使用することもあります。本方は、黄連、黄芩、大黄(ダイオウ)から構成される黄連解毒湯の関連処方です。
大黄にもイライラを鎮める効果が期待できます。
4.大柴胡湯(ダイサイコトウ)…イライラ・腹部膨満感
大柴胡湯の適するDSさん
(脇腹のつかえ感)
柴胡を含む処方には大柴胡湯や柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)がイライラに用いられます。
大柴胡湯はイラストのDSさんのような、体力が充実し、大声でどなりちらすような雰囲気で、活性が高く肥満、便秘傾向の人に適します。DSさんは腹部膨満感があり、ベルトを強く締めるのを好まず、脇腹からみぞおちにかけて閉塞感に悩んでいます。
大柴胡湯は、DSさんの「不眠や高血圧に伴う頭痛、肩こり、耳なり、じんましん、痔疾」のような症状・病名に適します。
なお医療用の大柴胡湯製剤は慢性肝炎や肥満期の糖尿病の口渴にも用いられています。
大柴胡湯の8生薬の中では柴胡と大黄と枳実(キジツ)がイライラを鎮めるのに寄与しています。とくに大黄と枳実は、腹部 膨満感を軽減して不快感を解消します。
柴 胡
大 黄
枳実は、ダイダイの果実
枳 実
5.漢方医学の眼
黄連の適応は、時間に追われていてもたってもいられない焦燥感、不眠、動悸、胸やみぞおちのつかえ感を伴うイライラです。これを漢方医学では心火(シンカ)と考え、黄連と黄芩を組み合わせた処方(瀉心湯類)を用います。みぞおち部分のつかえ感を心下痞(シンカヒ)と称します。
柴胡の適応は、怒りっぽいイライラです。ときに憂うつ感を伴うこともあります。これを漢方医学では肝火(カンカ)や肝気鬱結(カンキウッケツ)と考え、柴胡と黄芩を組み合わせた処方(柴胡剤)を用います。脇腹のつかえ感を胸脇苦満(キョウキョウクマン)といいます。
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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