病気の悩みを漢方で

１．建中湯（ｹﾝﾁｭｳﾄｳ）類の意味･･･中（ﾁｭｳ）を建てる

　建中湯（ｹﾝﾁｭｳﾄｳ）の建中は中（ﾁｭｳ）を建てる（しっかりと丈夫にする）という薬能に由来します。
　中（ﾁｭｳ）は胴体の中央部､いわゆる「おなか」です。建中湯類は「おなか」の消化吸収機能を丈夫にする方剤です。
　建中湯類を代表する小建中湯（ｼｮｳｹﾝﾁｭｳﾄｳ）の古典に例示された適応症は虚労（ｷｮﾛｳ）と腹中痛です。虚労は体力が低下して疲れがとれない虚弱状態のことです。

２．小建中湯（ｼｮｳｹﾝﾁｭｳﾄｳ）の適応･･･疲労感､腹痛

　小建中湯は､食が細く､活動性が低下し､疲労しやすく､顔色がさえず､夜泣きや腹痛､便秘（ｺﾛｺﾛ便）を伴う時に用いられます。
　本方は甘くて飲みやすいので小児に適します。
　便秘の漢方（５）を参照してください。

　なお小建中湯は､小児だけでなく成人の夏やせの疲労感や､がん患者の虚弱状態にも用いられています。夏やせの漢方や がんの漢方（１）を参照してください。

３．小建中湯の配合生薬と建中湯類

　小建中湯の配合生薬を図１に示しました。

　小建中湯は桂枝湯（ｹｲｼﾄｳ）の芍薬（ｼｬｸﾔｸ）を増量した桂枝加芍薬湯（ｹｲｼｶｼｬｸﾔｸﾄｳ）に膠飴（ｺｳｲ）を加えた内容です。
　本方は、筋肉の緊張による腹痛を軽減する芍薬（ｼｬｸﾔｸ）と甘草（ｶﾝｿﾞｳ）の組み合わせに特徴があります。
　なお膠飴は緩下作用と栄養補給に関係する水飴です。麦芽糖を含むオリゴ糖が腸内細菌叢に影響して体調を調えます。

　小建中湯に黄耆（ｵｳｷﾞ）や当帰（ﾄｳｷ）を加味した各種の建中湯類があります（図２）。膠飴の配合されていない製剤もあります。

　これらの建中湯類に関しては、便秘の漢方（３）も参照してください。

４．小建中湯の関連方剤

4.1） 大建中湯（ﾀﾞｲｹﾝﾁｭｳﾄｳ）は冷えと腹痛と腹部膨満感に適します。ときに桂枝加芍薬湯と併用されます。
　漢方薬名の意味：大建中湯や便秘の漢方（４）を参照してください。

　小建中湯と大建中湯は共に腹痛や便通異常に用いられますが､腸管筋肉の状態が異なります。
・小建中湯は筋の緊張に伴う腹痛や便秘傾向に適します。
・大建中湯は､冷えて腸管運動の低下による腹部膨満感を温めて腸管運動を調える山椒（ｻﾝｼｮｳ）と乾姜（ｶﾝｷｮｳ）を含む人参配合剤です（図３）。

4.2）補中益気湯（ﾎﾁｭｳｴｯｷﾖｳ）の処方名にも中（ﾁｭｳ）を調える薬能が示されています。漢方薬名の意味：補中益気湯を参照してください。

　小建中湯と補中益気湯は共に体力が衰えて疲労感がある虚労状態に用いられますが､筋肉の緊張状態が異なります。
・小建中湯は筋の緊張に伴う腹痛や便秘傾向に適します。
・補中益気湯は､胃下垂や手足のだるさなど筋肉の緊張が低下した病態を人参（ﾆﾝｼﾞﾝ）と黄耆（ｵｳｷﾞ）と柴胡（ｻｲｺ）　で軽減する方剤です（図４）。