きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。
病気の悩みを漢方で

1.小児の便秘
小児の便秘は、以下のように病型の異なる便秘が複合しておこります。

小児の便秘の予防と治療には保護者の役割が大切です。「ちょっと一言」を参照してください。
2.小児の便秘の治療
小児の便秘の薬物治療では、刺激性下剤を最初から使用するのではなく、まず、 便塊の水分量を増やす便軟化剤(塩類性緩下剤:酸化マグネシウム製剤)や乳酸菌製剤(プロバイオティクス)の使用を考えます。
漢方治療でも刺激性下剤の大黄(ダイオウ)を最初から使用せず、まず、
・糖類性の便軟化薬の膠飴(コウイ:水飴)や
・緩和な刺激性下剤の山椒(サンショウ:サンショウの果皮)や
・筋肉の緊張を緩和して便秘に伴う腹痛を軽減する芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)
・心の状態や胃腸症状を改善するために柴胡 (サイコ)や、人参(ニンジン)、
を含む方剤を考えます(図1)。
身体を温めて腸機能と心身の状態を調えるところに漢方医療の特徴があります。

3.小建中湯(ショウケンチュウトウ)・・・小児の便秘に用いられる基本方剤
小建中湯(ショウケンチュウトウ)は小児の便秘に用いられる基本方剤です。
本方は疲れやすくて腹痛を伴い、便秘や軟便を繰り返す小児に適します。神経質な小児に適応されることが多いようです。
小建中湯は、桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)に糖類性緩下薬の膠飴(コウイ)を加えた方剤です(図2)。

小建中湯に関しては、漢方薬名の意味(6.建中湯類)を参照してください。
4.建中湯類の使い分けと組み合わせ
小児の腹痛、腹部膨満感を伴う便通異常には小建中湯(ショウケンチュウトウ)を含めて以下のような使い分けがなされます(図3)。

1)便秘が顕著な場合は大黄(ダイオウ)を含む桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカシャクヤクダイオウトウ)が用いられます。
なお、桂枝加芍薬大黄湯のかわりに、桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)と大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)か調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)を少量併用すれば、大黄の使用量を調整することができます。
2)冷えと腹痛が顕著な場合は山椒(サンショウ)を含む大建中湯(ダイケンチュウトウ)が用いられます。
大建中湯は桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)と併用されます。痙攣性と弛緩性便秘が併発することに対応する工夫です。
これらの建中湯類の応用に関しては、便秘の漢方(3.痙攣性便秘)も参照してください。
5.小児の便秘に伴う全身症状に用いられるその他の方剤
小児は便秘以外の消化器症状を伴うことが多いようです。
1)ストレスによる胃痛を伴う時には柴胡(サイコ)と芍薬(シャクヤク)を含む方剤が用いられます。柴胡桂枝湯(サコケイシトウ)や四逆散(シギャクサン)が適します。
2)胃腸虚弱状態が背景にあるときには人参(ニンジン)を含む方剤が用いられます。
・胃もたれ嘔気には、茯苓飲(ブクリョウイン)や六君子湯(リックンシトウ)、
・食が細く疲労感やだるさを伴う時は補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、
・疲労感や冷え症の場合には人参湯(ニンジントウ)、
などを用いることで便通が調う場合もあります。
これらの方剤は小児の全身状態を診て個別に判断されます。小児の便秘の漢方相談では、便秘以外の症状をくわしく話してください。
柴胡桂枝湯は、ストレス胃(2.胃痛、腹痛)を参照してください。
茯苓飲と六君子湯は、胃もたれの漢方(3.胃腸虚弱)を参照してください。
補中益気湯は、疲労感の漢方(2.胃腸虚弱と疲労感)でも解説しています。

保護者のトイレ指導と便秘への早期の気づきが大切です。
・排便は大切なこと: 排便は汚いことではなく、生活や成長にとって大切なことを子どもに丁寧に教え、無理に我慢をしないことを理解させてください。
・お漏らしの対応: お漏らしは子どもにとってストレスになります。子どもの自尊心を傷つけないように対応してください。
・便秘予防: 毎日の食事量やその内容に配慮するとともに、数日間の排便回数を確認してください。
・排便後の確認: 子どもは排便時に痛みを伴うと、排便をがまんして便秘になります。排便時の苦痛や排便後のすっきり感などを子どもに確認してください。
・お医者さんと相談
便秘が続き、吐き気、強い腹痛、出血があれば、お医者さんの診察を受けてください。
(2017年5月1日 公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。


漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
症状と漢方薬
- (あ行)
- RSウイルス
- 足腰の衰え(虚弱)
- 足のむくみ
- アトピー性皮膚炎
- アルコール性肝炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー性鼻炎
- 胃食道逆流症
- 胃腸かぜ
- 胃腸虚弱
- 胃腸虚弱(高齢者)
- 胃腸虚弱(フレイル)
- 胃痛
- 胃もたれ
- 意欲の低下
- 意欲低下(虚弱)
- イライラ
- イライラ(産後)
- インフルエンザ
- インポテンツ
- ウイルス肝炎
- うつ感
- 運動器症候群
- 円形脱毛症
- おしっこの悩み(前立腺肥大)
- (か行)
- 顔色不良(虚弱)
- 過活動膀胱
- 過換気症候群(過呼吸)
- 霍乱
- かぜ(風邪)
- 肩・首筋のこり
- 過敏性腸症候群
- 下部尿路症状
- 花粉症
- がん
- かんしゃく
- 関節痛(冷え症)
- 関節リウマチ
- 感染性胃腸炎
- 乾燥肌
- 肝臓病
- 気うつ
- 気うつ(産後)
- 気管支炎
- 機能性ディスペプシア
- 虚労
- 起立性調節障碍
- 緊張型頭痛
- 筋肉減少症
- 軽度認知障碍
- 月経周期の乱れ
- 月経痛(冷え症)
- 月経痛(冷えのぼせ症)
- 月経不順(周期の長短)
- 月経不順(血の道症)
- 月経前症候群(PMS)
- げっぷ
- 下痢
- 下痢(ゲンノショウコ)
- 高血圧
- 高血圧傾向(虚弱)
- 高血糖
- 好酸球性副鼻腔炎
- 口内炎
- 後鼻漏
- 高齢者
- 五十肩
- 呼吸困難(COPD)
- こじれた咳(感冒)
- 骨粗鬆症
- 子どもがほしい
- こむら返り
- コロナ後遺症
- (さ行)
- サルコペニア
- 産後の回復不全
- 残尿感(前立腺肥大)
- CFS(慢性疲労症候群)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 湿疹
- 脂肪肝
- しもやけ
- しゃっくり
- 主婦湿疹
- 暑気あたり
- 女性不妊
- 自律神経失調症
- 脂漏性湿疹
- 尋常性乾癬
- 尋常性ざ瘡
- 頭重感
- 頭痛
- 頭痛(しめつける痛み)
- 頭痛(低気圧)
- 頭痛(婦人更年期障碍)
- ストレス胃
- 生理痛(冷え症)
- 生理痛(冷えのぼせ症)
- 生理不順(血の道症)
- 精力低下(男性)
- せき(咳)
- 咳(こじれた感冒)
- 脊柱管狭窄症
- 喘息
- 喘息(発作)
- 喘息(寛解)
- 前立腺肥大
- GERD
- (た行)
- たん(痰)
- 男性更年期障碍
- 男性不妊
- 蓄膿症
- 血の道症
- チック
- 痛風
- 手足口病
- 手足のしびれ(糖尿病)
- 低気圧頭痛
- 天気痛
- 動悸
- 凍瘡
- 糖尿病
- (な行)
- 内臓脂肪症候群(糖尿病)
- ながびく咳(感冒)
- 夏かぜ
- NASH
- 夏バテ
- 夏やせ
- 2型糖尿病
- にきび
- 尿意切迫
- 尿失禁
- 尿路結石
- 尿路不定愁訴
- 妊娠力をつけたい
- 認知症
- 脳血管性認知症
- 熱中症
- 脳梗塞と脳出血
- のぼせ感
- ノロウイルス下痢
- (は行)
- 肺気腫(COPD)
- 排尿異常
- 鼻アレルギー
- 鼻かぜ
- 鼻づまり
- 鼻水
- 非アルコール性肝炎
- 冷え症
- 冷えのぼせ症
- 鼻炎
- 皮膚炎
- 皮膚瘙痒症
- 肥満
- 肥満(糖尿病)
- 疲労感
- 頻尿
- PMS(月経前症候群)
- 不安定膀胱
- プール熱
- 腹痛
- 副鼻腔炎
- 婦人更年期障碍
- 不眠
- 不眠(産後)
- フレイル(虚弱)
- ヘルパンギーナ
- 変形性膝関節症
- 片頭痛
- 便通異常
- 便秘
- 膀胱結石
- (ま行)
- マタニティー・ブルー
- 慢性胃炎
- 慢性気管支炎(COPD)
- 慢性の咳(COPD)
- 慢性疲労症候群(CFS)
- 慢性閉塞性肺疾患
- むくみ(足のむくみ)
- 無月経
- 胸やけ
- メタボ肥満
- メタボリック・シンドローム(糖尿病)
- めまい
- めまい(婦人更年期障碍)
- (や行)
- 夜間頻尿
- やせと栄養失調
- 腰痛
- 抑うつ感
- 抑うつ感(虚弱)
- 夜泣き
- (ら行)
- 冷房下痢
- 老年症候群
- ロコモ
漢方薬名を選ぶ!
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)
- 参蘇飲(ジンソイン)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)