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１．芎帰調血飲（ｷｭｳｷﾁｮｳｹﾂｲﾝ）の意味

　芎帰調血飲の芎帰（ｷｭｳｷ）は､主薬の川芎（ｾﾝｷｭｳ：理気活血）と当帰（ﾄｳｷ：補気活血）の意味です（図１）。

　この両生薬が連携して方剤名の調血に寄与します。調血は血証（ｹｯｼｮｳ：血虚 ｹｯｷｮ と 瘀血 ｵｹﾂ）を調整する薬能です。
　芎帰調血飲の適応となる血証を図２にまとめました。

２．芎帰調血飲の適応

　芎帰調血飲は､図２に例示した血証による倦怠感､冷え症､顔色不良､月経不順に用いられます。
　本方は､血証の背景にある気虚や気滞も調整し産後の神経症や不安､動悸などの不定愁訴を軽減します。血の道症（７）を参照してください。

　本方が産後うつ症状（ﾏﾀﾆﾃｨｰﾌﾞﾙｰ）を軽減した報告があります。

　本方は､女性に使用されることが多いですが､冷え症傾向の男性の心煩（不安､落ち着かない､いらだち､焦り､胸苦しい）にも用いられます。

３．芎帰調血飲の配合生薬

　芎帰調血飲の配合13生薬を図３に示しました。

　図３の上段は活血薬､２段目は､気血を動かす理気薬､３段目は､四物湯（ｼﾓﾂﾄｳ ４味：補血活血）に含まれる３生薬です。
　１－３段目の生薬が本方の骨子です。川芎､当帰と香附子（ｺｳﾌﾞｼ：理気活血）と熟地黄（ｼﾞｭｸｼﾞｵｳ：補血）が重要です。

　最下段は補気薬と散寒薬（ｻﾝｶﾝﾔｸ）です。冷えとむくみを軽減する苓姜朮甘湯（ﾘｮｳｷｮｳｼﾞｭﾂｶﾝﾄｳ：温裏利水 ｵﾝﾘﾘｽｲ）の４生薬が含まれています。

　本方には青字の生薬が多く含まれていることから､冷え症傾向に適していることが類推できます。

４．芎帰調血飲の関連方剤

4.1）芎帰調血飲第一加減（21味）は､芎帰調血飲（13味）に８種類の活血薬や理気薬などを加味した方剤です（図４）。

　芍薬（ｼｬｸﾔｸ）と桂皮（ｹｲﾋ）が加味されたので､連珠飲（ﾚﾝｼﾞｭｲﾝ：四物湯＋苓桂朮甘湯）や補気補血剤の十全大補湯（ｼﾞｭｳｾﾞﾝﾀｲﾎﾄｳ）の人参､黄耆（ｵｳｷﾞ）以外の８生薬を含むことになります。

　延胡索（ｴﾝｺﾞｻｸ）や紅花（ｺｳｶ）牛膝（ｺﾞｼﾂ）桃仁（ﾄｳﾆﾝ）などの活血薬の強化によって瘀血による疼痛を軽減する折衝飲（ｾｯｼｮｳｲﾝ）の方意も加わりました。

4.2）加味逍遙散（ｶﾐｼｮｳﾖｳｻﾝ）は､婦人更年期障碍や月経前症候群（PMS）に伴う冷えのぼせ､いらだち､抑うつ､不安など変動する多愁訴に用いられます。冷え症（１）を参照してください。

　本方と芎帰調血飲の配合生薬を比較しました（図５）。

　加味逍遙散と芎帰調血飲は､ともに補血､活血､理気降気､利水補気薬を含む適応領域の広い方剤です。

　加味逍遙散は､柴胡（ｻｲｺ）や瀉火除煩薬の山梔子（ｻﾝｼｼ）を含み､芎帰調血飲より発作性で熱証のいらだち､冷えのぼせに用いられます。話は⻑く､症状は種々変化し､感情の起伏が大きい状態に適します。
　芎帰調血飲は､加味逍遙散の適応より冷え､顔色不良､不安がいらだちより顕著な病証に適します。

4.3）女神散（ﾆｮｼﾝｻﾝ）は､のぼせ､めまい､頭痛､耳鳴り､いらだち､焦燥感などを軽減する方剤です。清心瀉火薬（ｾｲｼﾝｼｬｶﾔｸ）の黄芩（ｵｳｺﾞﾝ）と黄連（ｵｳﾚﾝ）を含む瀉心湯類（ｼｬｼﾝﾄｳﾙｲ）です。芎帰調血飲より熱証傾向に適します。

　芎帰調血飲､加味逍遙散､女神散の適応症を冷えとのぼせに着目すると､芎帰調血飲（冷え）､加味逍遙散（冷えのぼせ）､女神散（のぼせ）になります。
　この３方剤は､漢方薬名の意味：女神散で比較しています。