きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。
病気の悩みを漢方で
1.フレイル(趣味を継続したり人と交流する意欲の低下)
意欲が低下すると、今まで楽しんでいた趣味に無関心になったり、社会との関わりが減ります。これは精神的・社会的フレイルや軽度認知障碍(MCI)に進展します(図1)。
今回は、前回に続いて精神的・社会的フレイルに見られる意欲低下や無関心に用いられる漢方方剤を解説します。
意欲の低下を予防するためには、閉じこもらず外に出て人と話す機会を増やすことです。ちょっと一言を参照してください。
2.フレイル(意欲低下)に用いられる主な生薬と方剤
フレイル(意欲低下)の管理では
1)消化吸収機能を調えて体力を維持する人参(ニンジン)や黄耆(オウギ)と、
2)不安感、抑うつ感、意欲低下・無関心、不眠には遠志(オンジ)、
酸棗仁(サンソウニン)竜眼肉(リュウガンニク)を含む方剤が用いられます(図2)。
補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、胃腸虚弱で疲労倦怠感、手足のだるさ、夏ばてになりやすいフレイルに用いられます。
本方は、補気薬に加えて、理気薬(リキヤク)の柴胡(サイコ)や陳皮(チンピ)を含むので意欲低下や抑うつ傾向にも適します。
本方に関しては男性更年期障碍の漢方(3.倦怠感)も参照してください。
3.人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)・・・倦怠感、意欲低下、咳嗽、息切れ
人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)は、倦怠感、顔色不良などの身体的フレイルに加えて、抑うつ感、意欲低下、不眠を伴う精神的フレイルに適します。
最近、本方の医療用製剤がフレイルの管理に活用されています。
本方は、フレイル(顔色不良)に用いられる十全大補湯と同様に
・胃腸を調える補気剤(ホキザイ)の四君子湯(シクンシトウ:図3の黄色で囲んだ4生薬)と
・熟地黄(ジュクジオウ)や当帰(トウキ)などの補血薬(ホケツヤク)を含みます。
本方に含まれる五味子(ゴミシ)と遠志(オンジ)が、抑うつ感や不眠の改善に寄与します。
人参養栄湯と帰脾湯と十全大補湯に関しては、フレイル(虚弱)の漢方(3.顔色不良)も参照してください。
4.帰脾湯(キヒトウ)・・・心身の疲れ、不安、不眠、動悸
4.1)帰脾湯は、疲労倦怠感、心身の疲れ、精神不安、動悸、不眠、抑うつ感を伴う身体的・精神的フレイルに適します。
本方は人参養栄湯より不眠、不安、動悸の著しい時に適します。
本方には熟地黄の代わりに不安、動悸、不眠を軽減する竜眼肉(リュウガンニク:図4)や酸棗仁(サンソウニン)が含まれています。
4.2)加味帰脾湯(カミキヒトウ)
帰脾湯に柴胡(サイコ)と山梔子(サンシシ)を加味した方剤です。
本方は帰脾湯の適応症状に加えてのぼせやいらだちを伴う場合に適します。
加味帰脾湯に関しては、男性更年期障碍の漢方(3.倦怠感)を参照してください。
フレイルに伴う意欲低下は体力の低下や栄養不足に起因しますので、まず消化吸収機能低下を改善して栄養状態を良くすることが大切です。
さらに考えたり感動し続ければ脳機能は維持できます。そのため趣味を継続し、義務感ではなく無理なく楽しく自分のペースで自己啓発と社会参加してフレイル(意欲低下)を予防してください。
1.ネット交流だけでなく、こまめに外出して人と会話。
(一人で黙々と散歩するより、人と会話しながら散歩する)
2.少しでも地域に貢献できれば、やりがいが生まれます。
(2019年3月6日 公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
症状と漢方薬
- (あ行)
- RSウイルス
- 足腰の衰え(虚弱)
- 足のむくみ
- アトピー性皮膚炎
- アルコール性肝炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー性鼻炎
- 胃食道逆流症
- 胃腸かぜ
- 胃腸虚弱
- 胃腸虚弱(高齢者)
- 胃腸虚弱(フレイル)
- 胃痛
- 胃もたれ
- 意欲の低下
- 意欲低下(虚弱)
- イライラ
- イライラ(産後)
- インフルエンザ
- インポテンツ
- ウイルス肝炎
- うつ感
- 運動器症候群
- 円形脱毛症
- おしっこの悩み(前立腺肥大)
- (か行)
- 顔色不良(虚弱)
- 過活動膀胱
- 過換気症候群(過呼吸)
- 霍乱
- かぜ(風邪)
- 肩・首筋のこり
- 過敏性腸症候群
- 下部尿路症状
- 花粉症
- がん
- かんしゃく
- 関節痛(冷え症)
- 関節リウマチ
- 感染性胃腸炎
- 乾燥肌
- 肝臓病
- 気うつ
- 気うつ(産後)
- 気管支炎
- 機能性ディスペプシア
- 虚労
- 起立性調節障碍
- 緊張型頭痛
- 筋肉減少症
- 軽度認知障碍
- 月経周期の乱れ
- 月経痛(冷え症)
- 月経痛(冷えのぼせ症)
- 月経不順(周期の長短)
- 月経不順(血の道症)
- 月経前症候群(PMS)
- げっぷ
- 下痢
- 下痢(ゲンノショウコ)
- 高血圧
- 高血圧傾向(虚弱)
- 高血糖
- 好酸球性副鼻腔炎
- 口内炎
- 後鼻漏
- 高齢者
- 五十肩
- 呼吸困難(COPD)
- こじれた咳(感冒)
- 骨粗鬆症
- 子どもがほしい
- こむら返り
- コロナ後遺症
- (さ行)
- サルコペニア
- 産後の回復不全
- 残尿感(前立腺肥大)
- CFS(慢性疲労症候群)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 湿疹
- 脂肪肝
- しもやけ
- しゃっくり
- 主婦湿疹
- 暑気あたり
- 女性不妊
- 自律神経失調症
- 脂漏性湿疹
- 尋常性乾癬
- 尋常性ざ瘡
- 頭重感
- 頭痛
- 頭痛(しめつける痛み)
- 頭痛(低気圧)
- 頭痛(婦人更年期障碍)
- ストレス胃
- 生理痛(冷え症)
- 生理痛(冷えのぼせ症)
- 生理不順(血の道症)
- 精力低下(男性)
- せき(咳)
- 咳(こじれた感冒)
- 脊柱管狭窄症
- 喘息
- 喘息(発作)
- 喘息(寛解)
- 前立腺肥大
- GERD
- (た行)
- たん(痰)
- 男性更年期障碍
- 男性不妊
- 蓄膿症
- 血の道症
- チック
- 痛風
- 手足口病
- 手足のしびれ(糖尿病)
- 低気圧頭痛
- 天気痛
- 動悸
- 凍瘡
- 糖尿病
- (な行)
- 内臓脂肪症候群(糖尿病)
- ながびく咳(感冒)
- 夏かぜ
- NASH
- 夏バテ
- 夏やせ
- 2型糖尿病
- にきび
- 尿意切迫
- 尿失禁
- 尿路結石
- 尿路不定愁訴
- 妊娠力をつけたい
- 認知症
- 脳血管性認知症
- 熱中症
- 脳梗塞と脳出血
- のぼせ感
- ノロウイルス下痢
- (は行)
- 肺気腫(COPD)
- 排尿異常
- 鼻アレルギー
- 鼻かぜ
- 鼻づまり
- 鼻水
- 非アルコール性肝炎
- 冷え症
- 冷えのぼせ症
- 鼻炎
- 皮膚炎
- 皮膚瘙痒症
- 肥満
- 肥満(糖尿病)
- 疲労感
- 頻尿
- PMS(月経前症候群)
- 不安定膀胱
- プール熱
- 腹痛
- 副鼻腔炎
- 婦人更年期障碍
- 不眠
- 不眠(産後)
- フレイル(虚弱)
- ヘルパンギーナ
- 変形性膝関節症
- 片頭痛
- 便通異常
- 便秘
- 膀胱結石
- (ま行)
- マタニティー・ブルー
- 慢性胃炎
- 慢性気管支炎(COPD)
- 慢性の咳(COPD)
- 慢性疲労症候群(CFS)
- 慢性閉塞性肺疾患
- むくみ(足のむくみ)
- 無月経
- 胸やけ
- メタボ肥満
- メタボリック・シンドローム(糖尿病)
- めまい
- めまい(婦人更年期障碍)
- (や行)
- 夜間頻尿
- やせと栄養失調
- 腰痛
- 抑うつ感
- 抑うつ感(虚弱)
- 夜泣き
- (ら行)
- 冷房下痢
- 老年症候群
- ロコモ
漢方薬名を選ぶ!
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)