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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

糖尿病の漢方

1.糖尿病の概要

 糖尿病は、インスリンの量や働きが低下している疾患です。そのため血液中のブドウ糖が細胞で利用されない高血糖になり、糖が尿に漏れている病態です。

 糖尿病は、血糖値を検査して診断されます。図1の縦軸は(食後10時間程度の)空腹時の血糖値です。健康診断で測定される値です。横軸は空腹時にブドウ糖(75g)を飲んだ2時間後の血糖です。健康診断で空腹時血糖が高い人に実施される経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。

 図1HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、検査の1-2ヶ月前からの血糖状態を推測する指標になります。

※ 糖尿病は検診が大切:糖尿病には特有の初期症状がありません。糖尿病を早期に発見する検診を定期的に受けることを勧めます。

 なお、筋肉が少ない高齢者は糖尿病が悪化しやすいことが分かっています。肥満でなくても定期健康診断を受けてください。

2.メタボ肥満から2型糖尿病へ

 糖尿病には、膵臓からインスリンが分泌されない1型糖尿病(インスリン依存性:IDDM)と、インスリンが分泌されていても、その働きが悪くなった2型糖尿病(インスリン非依存性:NIDDM)があります。
 ここでは日本に多い2型糖尿病を中心に考えます。
 2型糖尿病は、内臓脂肪症候群(メタボ肥満)に伴って発症します(図2)。メタボ肥満のきっかけは、飽食や就眠前の摂食するなどの不適切な生活習慣です。肥満(1)を参照してください。

3.糖尿病治療の概要

 糖尿病治療は、個々に応じたHbA1cの目標値を設定します。肥満を伴う病態では、インスリン抵抗性を想定してインスリン分泌を促進しない薬物が選択されます(糖尿病, 2022; 65: 419-434)。

 最近、糖吸収遅延薬糖排泄促進薬など新たな作用機序の高血糖治療薬が開発され、低血糖になりにくい薬もあります。病態に応じて使い分けられますので、主冶医にご相談ください。

 糖尿病治療の概要を図3に示しました。西洋薬で血糖は管理し、漢方薬症状を軽減して生活内容の質(QOL)を維持することが現実的です。
 非薬物療法が基礎になります。要領は脂肪肝の養生と同様です。肝臓病(2)ちょっと一言を参照してください。

4.糖尿病の漢方治療の概要

 図3の下段には、漢方医学の病理病態の経時変化(病期)と治療方針を示しています。病期は、脂ぎったメタボ肥満期から、病態が進行し皮膚乾燥傾向でやせた羸痩(ルイソウ)期に分けます(図4)。病期虚実と寒熱を参照してください。

 肥満期は、体力と病理の実証(ジッショウ)です。大黄(ダイオウ)を含む瀉剤の適応になります。活血剤(カッケツザイ)も必要です。肥満(2)を参照してください。

 羸痩期は、痩せて喉が渇き多尿を伴う津液不足(シンエキフソク)を伴う病理の虚証が主体ですが、水滞を伴う虚実錯雑病態にもなります。八味地黄丸(ハチミジオウガン)のような補益祛邪(キョジャ)を組み合わせた方剤の適応になります。

 糖尿病に対する現代の漢方治療では、
1)西洋医学的診断を指標として、血糖管理薬の適応であればこれを活用し、
2)漢方薬は合併症の早期治療と進展防止に使用されます(日東医誌., 2004; 55: 737-750)。

 次回以降に糖尿病の随伴症状と合併症に用いられる方剤を解説します。

ちょっと一言:(トピックス)

漢方の眼が必要な糖尿病治療

 糖尿病の漢方の病理病態経時変化します(図3図4)。糖尿病という病名だけで「●▲湯」と決めることが出来ません。

 病態の経時変化(病期)に応じて適切な方剤を使い分けるためには、病理の実証虚証を診る漢方の眼が必要です。

(2024年9月9日 改訂公開)


病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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