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病気の悩みを漢方で

肥満の漢方
1.メタボリック・シンドロームの肥満に用いられる大黄剤(ダイオウザイ)
メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群、メタボ)の便秘・高脂質血症を伴う肥満には、主に大黄(ダイオウ)を含む漢方方剤が用いられます。
これは、大黄剤を脂肪吸収抑制剤として利用する考えです。便秘して食物が腸管に長く留まると脂質の吸収率が高まります。瀉下薬の大黄を含む方剤で便塊の排泄を促進すると、高脂質血症や肥満を軽減できると考えられます。

メタボ肥満の便秘に用いられる漢方方剤については、便秘の漢方(2.弛緩性便秘)と共通する部分があります。参照してください。
2.大柴胡湯(ダイサイコトウ)・・・上腹部のつかえ感のある固太り肥満
大柴胡湯(ダイサイコトウ)は、筋肉質でがっしりとした固太り肥満で、上腹部(心窩部や脇腹)のつかえ感、のぼせ、興奮、怒り、気うつ、頭重感、肩こりなどを目標にして用いられます。
本方は、弛緩性便秘に対する瀉下薬の大黄(ダイオウ)と、腹部膨満感を軽減する柴胡(サイコ)と枳実(キジツ)を含む方剤です(図2)。

3.防風通聖散(ボウフウツウショウサン)・・・副鼻腔炎、湿疹皮膚炎を伴う固太り肥満
防風通聖散(ボウフウツウショウサン)は、大柴胡湯と同様には、メタボでがっしりした固太り肥満や便秘に用いられます。
両方剤の配合生薬を図3に比較しました。
・防風通聖散は、便通を調える大黄と芒硝(ボウショウ:塩類性の便軟化薬)を含めて多様な生薬が配合されています。肥満・便秘と湿疹皮膚炎、副鼻腔炎などの慢性炎症性疾患を伴う場合に適します。
・大柴胡湯は、上腹部のつかえ感と図3右側のイラストのように怒り、いらだち、気うつなど精神神経症状を伴う人の肥満に適します。

大柴胡湯と防風通聖散に関しては、
糖尿病の漢方(2.病期に応じた治療1)も参照してください。
4.桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)・・・のぼせのある更年期女性の固太り肥満
更年期になり女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、脂肪代謝を促す作用が低下するので高脂質血症になり肥満します。
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)は、肥満した婦人の月経前症候群や更年期障害の頭痛、赤ら顔、冷えのぼせ(ホットフラッシュ)、いらだち、肩こり、腰痛、便秘に用いられます。
本方は大黄と芒硝(ボウショウ)を含む方剤です(図4)。

5.防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)・・・汗の多い水太り肥満
防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)は、筋肉にしまりのない、いわゆる「水ぶとり」と言われる肥満に用いられます(図5.左のイラスト)。
防已黄耆湯は、筋肉が軟らかい肥満で、疲れやすく汗のかきやすい傾向があり、関節の腫れ・痛み、下半身のむくみを伴います。体が重く感じ動作が緩慢です。
桃核承気湯は、がっちり型肥満で、赤ら顔、冷えのぼせ、月経前症候群(PMS)や婦人更年期障碍に伴う精神神経症状に用いられます。

6.肥満に用いられる4方剤の使い分けイメージ
肥満に用いられる方剤は、がっちり型の固太りか、ぽっちゃり型の筋肉にしまりのない肥満かを判断し、さらに症状に応じて使い分けられます(図6)。


ここでは肥満を軽減する大黄(ダイオウ)を含む方剤を中心にして紹介しました。
大黄剤は、脂肪吸収抑制剤に相当しますが、服用すればやせる薬ではありません。食事療法と運動療法と組み合わせることが必要です。
中年以降のメタボ年齢になると体温を調整したり内臓を動かすなど生命維持のための基礎的なカロリー消費が低下します。この時期に飽食と運動不足が重なるので肥満するわけです。
1)食事の量に減らし、緑黄色野菜(食物繊維)を食べてください。
2)歩く機会を増やしてください。
3)便意をがまんせず、朝食後の排便習慣の確立してください。
肥満は生活習慣病→認知症→要介護状態に進展する前の段階です。メタボ肥満の軽減は、寝たきり・要介護状態になるのを遅らせるためなのです。
(2017年7月18日 公開)
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