きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。

病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

夏かぜの漢方

(1)胃腸症状
(2)口腔内症状

1.夏かぜに伴う口腔内症状

 夏かぜには口腔内症状を伴う小児のウイルス感染症があります。
 ・ヘルパンギーナ(喉頭炎):発熱とのど奥の水疱性発疹、
 ・手足口病:唇や舌の口腔内粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹、
 ・プール熱:咽頭痛や結膜炎があります。
 今回は夏かぜに伴う口腔内粘膜の炎症症状に用いられる方剤を紹介します。

2.口腔内粘膜の痛みに対する対症療法に用いられる方剤

 漢方製剤の 【効能又は効果】にはヘルパンギーナ手足口病プール熱という病名はありません。そこで、のどの腫れや痛み、口内炎、扁桃炎などに用いられる方剤を対症療法として用います(図1)。


 これらのエキス剤は、水に懸濁させた薬液を口にしばらく含んでブクブクしてから飲んでください。含嗽(ガンソウ)服用といいます。「ちょっと一言」を参照してください。

2.1)桔梗湯(キキョウトウ)はのど(咽喉)の腫痛、扁桃炎、扁桃周囲炎に用いられる方剤です。懸濁させた薬液は甘いので小児含嗽服用に適しています。
 患部の赤みが強い時には桔梗石膏(キキョウセッコウ)エキスが適します。

2.2)排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)は化膿性皮膚疾患に用いられることが多い方剤ですが、歯周炎や口内炎にも応用されています。漢方薬名の意味:排膿散及湯を参照してください。
 本方には桔梗湯が含まれています(図2)。


2.3)半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)は、胃もたれ吐き気胸やけ呑酸など胃食道逆流症(GERD)に用いられます。胃もたれ(3)を参照してください。
 夏ばて状態で軟便下痢気味の時には人参湯(ニンジントウ)を用います。半夏瀉心湯より甘いので小児に適します。

2.4)立効散(リッコウサン)は歯痛用の方剤ですが、口内炎にも使用されています。 口内炎(1)を参照してください。
 本方は口腔内の痛みに対する含嗽服用に適していますが、しびれ感を伴うので小児には適さないかもしれません。

3.口腔内粘膜の痛みを伴うかぜ症状に用いられる方剤

 なおヘルパンギーナプール熱食欲不振倦怠感を伴うことがあります。その時は夏かぜ(1)で紹介した柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)や以下のような方剤も用います(図3)。


3.1)銀翹散(ギンギョウサン)は、かぜ初期の熱感咽頭痛を目標に用いられる方剤です。口渴紅い舌尖辺という熱証状態のあることが桂皮(ケイヒ)や麻黄(マオウ)を主薬とする葛根湯(カッコントウ)との相違です。かぜ(1)を参照してください。

 方剤名にある金銀花(キンギンカ)と連翹(レンギョウ)の清熱解毒薬が口腔粘膜痛の軽減に寄与すると考えられています。本方は桔梗湯の2生薬を含んでいます。

3.2)小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)は、少陽病(ショウヨウビョウ)の基本方剤である小柴胡湯(ショウサイコトウ)の適応病態に加えて扁桃炎や上気道炎、中耳炎、頸部リンパ節炎、耳下腺炎、副鼻腔炎などの長引く炎症性疾患に適応されます。

 本方は小柴胡湯桔梗、石膏からなり、桔梗湯排膿湯桔梗湯大棗生姜)を含んでいます(図4)。


3.3)柴葛解肌湯(サイカツゲキトウ)は葛根湯(カッコントウ)の適応病態(悪寒、熱感)と小柴胡湯の適応病態(吐き気食欲不振寒熱往来)に加えて熱感口渴などの熱証の顕著な時に使用されます。かぜ(2)を参照してください。

 本方は辛温解表薬桂皮麻黄辛涼解表薬葛根柴胡清熱薬石膏を含みます(図5)。


 柴葛解肌湯はエキス剤の葛根湯小柴胡湯加桔梗石膏を併用して代用します。そうすれば桔梗石膏の方意が含まれるのでのどの痛みにも応用できます。

ちょっと一言:(トピックス)

含嗽服用アイスボール服用

 含嗽服用: エキス剤を水に懸濁させ、口にしばらく含んでブクブクしてから飲んでください。薬液を患部に接触させることが狙いです。
  エキス顆粒剤(1回分2.5g)を50~60mLの水に溶かします。痛みの強い時には冷たい水がよいでしょう。
 アイスボール服用: 上記の薬液を冷蔵庫で凍らせて、そのアイスボールを口に含んで服用すると痛みの顕著な時に適します。

(2021年6月14日 改訂公開)


病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
谿 忠人先生のプロフィール
谿 忠人先生

漢方医療とは

症状と漢方薬

(あ行)
RSウイルス
足腰の衰え(虚弱)
足のむくみ
アトピー性皮膚炎
アルコール性肝炎
アルツハイマー型認知症
アレルギー性鼻炎
胃食道逆流症
胃腸かぜ
胃腸虚弱
胃腸虚弱(高齢者)
胃腸虚弱(フレイル)
胃痛
胃もたれ
意欲の低下
意欲低下(虚弱)
イライラ
イライラ(産後)
インフルエンザ
インポテンツ
ウイルス肝炎
うつ感
運動器症候群
円形脱毛症
おしっこの悩み(前立腺肥大)
(か行)
顔色不良(虚弱)
過活動膀胱
過換気症候群(過呼吸)
霍乱
かぜ(風邪)
肩・首筋のこり
過敏性腸症候群
下部尿路症状
花粉症
がん
かんしゃく
関節痛(冷え症)
関節リウマチ
感染性胃腸炎
乾燥肌
肝臓病
気うつ
気うつ(産後)
気管支炎
機能性ディスペプシア
虚労
起立性調節障碍
緊張型頭痛
筋肉減少症
軽度認知障碍
月経周期の乱れ
月経痛(冷え症)
月経痛(冷えのぼせ症)
月経不順(周期の長短)
月経不順(血の道症)
月経前症候群(PMS)
げっぷ
下痢
下痢(ゲンノショウコ)
高血圧
高血圧傾向(虚弱)
高血糖
好酸球性副鼻腔炎
口内炎
後鼻漏
高齢者
五十肩
呼吸困難(COPD)
こじれた咳(感冒)
骨粗鬆症
子どもがほしい
こむら返り
コロナ後遺症
(さ行)
サルコペニア
産後の回復不全
残尿感(前立腺肥大)
CFS(慢性疲労症候群)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
湿疹
脂肪肝
しもやけ
しゃっくり
主婦湿疹
暑気あたり
女性不妊
自律神経失調症
脂漏性湿疹
尋常性乾癬
尋常性ざ瘡
頭重感
頭痛
頭痛(しめつける痛み)
頭痛(低気圧)
頭痛(婦人更年期障碍)
ストレス胃
生理痛(冷え症)
生理痛(冷えのぼせ症)
生理不順(血の道症)
精力低下(男性)
せき(咳)
咳(こじれた感冒)
脊柱管狭窄症
喘息
喘息(発作)
喘息(寛解)
前立腺肥大
GERD
(た行)
たん(痰)
男性更年期障碍
男性不妊
蓄膿症
血の道症
チック
痛風
手足口病
手足のしびれ(糖尿病)
低気圧頭痛
天気痛
動悸
凍瘡
糖尿病
(な行)
内臓脂肪症候群(糖尿病)
ながびく咳(感冒)
夏かぜ
NASH
夏バテ
夏やせ
2型糖尿病
にきび
尿意切迫
尿失禁
尿路結石
尿路不定愁訴
妊娠力をつけたい
認知症
脳血管性認知症
熱中症
脳梗塞と脳出血
のぼせ感
ノロウイルス下痢
(は行)
肺気腫(COPD)
排尿異常
鼻アレルギー
鼻かぜ
鼻づまり
鼻水
非アルコール性肝炎
冷え症
冷えのぼせ症
鼻炎
皮膚炎
皮膚瘙痒症
肥満
肥満(糖尿病)
疲労感
頻尿
PMS(月経前症候群)
不安定膀胱
プール熱
腹痛
副鼻腔炎
婦人更年期障碍
不眠
不眠(産後)
フレイル(虚弱)
ヘルパンギーナ
変形性膝関節症
片頭痛
便通異常
便秘
膀胱結石
(ま行)
マタニティー・ブルー
慢性胃炎
慢性気管支炎(COPD)
慢性の咳(COPD)
慢性疲労症候群(CFS)
慢性閉塞性肺疾患
むくみ(足のむくみ)
無月経
胸やけ
メタボ肥満
メタボリック・シンドローム(糖尿病)
めまい
めまい(婦人更年期障碍)
(や行)
夜間頻尿
やせと栄養失調
腰痛
抑うつ感
抑うつ感(虚弱)
夜泣き
(ら行)
冷房下痢
老年症候群
ロコモ

漢方薬名を選ぶ!

TOP