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漢方薬名の意味

三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)

1.三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)名の意味

 三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)名は、黄の字を含む黄芩(オウゴン)黄連(オウレン)大黄(ダイオウ)の3生薬(図1)からなる瀉心湯類を意味しています。

 黄芩は、清熱瀉火解毒薬です。とくに消化器の心窩部のつかえ下痢、呼吸器系の咳嗽などの熱証に適します。
 黄連は、清心瀉火(セイシンシャカ)除煩薬です。とくに消化器、循環器の熱証や、いらだちのぼせ焦燥感などの興奮症状(心火上炎 シンカジョウエン)に適します。
 大黄は、便秘腹部膨満感を解消する清熱瀉下攻積薬です。

 瀉心湯類は、黄芩黄連を基本にした方剤群です(図2)。

 瀉心湯類は、心火上炎いらだちのぼせ)を冷まし鎮め、心下痞(シンカヒ:心窩部のつかえ感)を取り去る、移動する薬能を有する方剤群です。

 心火上炎は、心神不安(シンシンフアン:不安胸苦しさ不眠)を誘発します。心火上炎心神不安は、漢方薬名の意味:黄連解毒湯も参照してください。

 以上から本方の名は、本方が、黄芩黄連大黄の適応となる熱証のぼせ顔面紅潮興奮不眠便秘)を冷やして鎮める瀉心湯類であることを示唆しています。

2.三黄瀉心湯の適応

 三黄瀉心湯は、体力の実証、症状の熱証病態の便秘婦人科疾患精神神経症状を伴う頭痛に用いられます(日脳神漢方医会誌., 2025; 10: 18‒25)。
 本方のエキス製剤の適応症には、高血圧の随伴症状(のぼせ肩こり耳鳴り頭重不眠不安)が例示されています。その他、鼻血痔出血婦人更年期障碍にも用いられます。

 三黄瀉心湯の応用例

焦り不穏興奮を伴うめまいを軽減。

日東医誌., 1992; 43: 21-26



・アカシジア(静座不能症)の「ムズムズいてもたってもいられない」症状を軽減。
抗パーキンソン病薬を減量。

日東医誌., 2000; 50: 665-672



・一過性の血圧上昇に伴う頭痛のぼせめまいを軽減(振り出し薬) 。

日東医誌., 2002; 53: 41-46


興奮赤ら顔肥満便秘を伴う舌痛症を軽減。

日口粘膜誌., 2008; 14: 1-8


・婦人更年期のホットフラッシュを軽減。

女性心身医学, 2013; 18: 197-203


3.三黄瀉心湯の関連方剤


(オウレンゲドクトウ)は、三黄瀉心湯大黄を除き、山梔子(サンシシ)と黄柏(オウバク)を加味した4生薬からなる瀉心湯類です(図2)。漢方薬名の意味:黄連解毒湯を参照してください。

 黄連解毒湯は、三黄瀉心湯の適応となる熱症状や出血症状で便秘を「伴わない」病態に用いられます。高血圧随伴症状や婦人更年期障碍、皮膚科領域や耳鼻咽喉科領域の慢性炎症に用いられます。湿疹(4)鼻副鼻腔炎(2)を参照してください。

(ハンゲシャシントウ)は、黄芩黄連吐き気食欲不振下痢など消化器症状に適する補気薬人参大棗甘草)と化痰薬(ケタンヤク:半夏乾姜)を加味した瀉心湯類です(図2)。胃食道逆流症(2)漢方薬名の意味:半夏瀉心湯を参照してください。


瀉心湯類三黄瀉心湯黄連解毒湯半夏瀉心湯)の比較(図3

(トウカクジョウキトウ)の承気は、熱邪による(キ:生体を生命活動、精神活動を担う力)の流れの異常や停滞を下降させる薬能です。
 桃核承気湯は、体力の実証熱証の高血圧の随伴症状(頭痛肩こり)や、婦人更年期症状(のぼせいらだち頭痛便秘)に用いられています。

 桃核承気湯の主な適応は、婦人科領域です。本方は、赤黒い顔暗赤色の歯肉口唇舌下静脈の怒張月経痛など瘀血証(オケツショウ)と、発作的なのぼせ動悸頭痛気上衝 キジョウショウ)に適します(産婦人科漢方研究のあゆみ, 2009; 26: 40-43)。

 桃核承気湯は、瀉心湯類ではありませんが、大黄三黄瀉心湯と共有して適応症状は三黄瀉心湯と類似します。本方の特徴は、活血薬(カッケツヤク)の桃仁(トウニン)と、気上衝を下降させる桂皮甘草の薬対(降衝鎮悸)を含むことです。三黄瀉心湯との相違点です(図4)。
 漢方薬名の意味:桃核承気湯を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

三黄瀉心湯口訣(抜粋)

のぼせ顔面紅潮気分が落ち着かない精神不安心下痞膨満感)を伴う高血圧に頻用される。気の上衝と鮮紅色の出血が目標(三谷和合)。

瀉心湯類中もっとも実証向けの薬方。瀉下効果により実熱を排泄する。のぼせいらいら心窩部の痞え便秘がポイント( 髙山宏世)。

高血圧のぼせ興奮頭痛肩こり心下痞鞕便秘を伴う卒中タイプ実証に用いる。口内炎胃炎婦人更年期障碍にも用いる(喜多敏明)。

2026年7月29日 改訂公開


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谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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