病気の悩みを漢方で

１．清上防風湯（ｾｲｼﾞｮｳﾎﾞｳﾌｳﾄｳ）の謂われ：上部を冷やし､防風を含む方剤

　清上防風湯（ｾｲｼﾞｮｳﾎﾞｳﾌｳﾄｳ）の清には､熱を清める（さわやかにする､冷やす）という意味があります。上は上半身とくに頭部や顔面のことで､漢方用語の上焦（ｼﾞｮｳｼｮｳ）に由来します。
　また方剤名の防風（ﾎﾞｳﾌｳ）は､主薬の防風に由来します。なお防風には風（ﾌｳ）という邪気（風邪 ﾌｳｼﾞｬや風熱ﾌｳﾈﾂ）を防ぐという薬能も意味します。

　そこで方剤名は､上半身とくに顔面の熱を冷やし､防風を含む方剤という意味です。熱はのぼせ感､赤ら顔や発赤の強い皮疹から診断されます。

２．清上防風湯（ ｾｲｼﾞｮｳﾎﾞｳﾌｳﾄｳ）の適応・・・顔面や頭部の赤い湿疹皮膚炎

　清上防風湯は､のぼせ､赤ら顔で､顔面や頭部の赤い湿疹・皮膚炎､化膿傾向のにきび､吹き出物､赤鼻（酒皶ｼｭｻ）に用いられます。

清上防風湯は､にきびの項目でも解説していますので参照してください。

３．清上防風湯（ｾｲｼﾞｮｳﾎﾞｳﾌｳﾄｳ）の配合生薬

　清上防風湯を構成する12生薬を示しました（図２）。
　・上段の４生薬と中段右の連翹（ﾚﾝｷﾞｮｳ）は､風邪（ﾌｳｼﾞｬ）や風熱（ﾌｳﾈﾂ）による皮膚症状に用いられる解表薬（ｹﾞﾋｮｳﾔｸ）､
　・中段の赤字の４生薬は､のぼせや炎症症状を軽減する清熱薬（ｾｲﾈﾂﾔｸ）（中段左の３生薬は清熱剤・黄連解毒湯ｵｳﾚﾝｹﾞﾄﾞｸﾄｳの主な構成生薬です）
　・下段の桔梗（ｷｷｮｳ）は化膿傾向を軽減する排膿薬（ﾊｲﾉｳﾔｸ）です。

４．清上防風湯の関連方剤に共通する解表薬（ｹﾞﾋｮｳﾔｸ）

　皮疹には解表薬（ｹﾞﾋｮｳﾔｸ）が用いられます。清上防風湯に含まれる４種の解表薬（図３）を共通して含む関連方剤があります。

５．清上防風湯の関連方剤（１）・・・荊芥連翹湯（ｹｲｶﾞｲﾚﾝｷﾞｮｳﾄｳ）

　荊芥連翹湯（ｹｲｶﾞｲﾚﾝｷﾞｮｳﾄｳ）には清上防風湯のすべての配合生薬が含まれています。両方剤ともに黄連解毒湯（ｵｳﾚﾝｹﾞﾄﾞｸﾄｳ）の関連方剤です（図４）。

　両方剤はともに､にきびや頭部や顔面の赤い皮疹に用いられてきました。用いる時期はまず清上防風湯を用い､次いで荊芥連翹湯を連用するのが一般的です。
　荊芥連翹湯には乾燥傾向の皮疹に適する地黄（ｼﾞｵｳ）を含む四物湯（ｼﾓﾂﾄｳ）の４生薬が含まれています。本方は湿疹皮膚炎やにきびだけでなく扁桃腺炎､副鼻腔炎､中耳炎などの慢性の炎症性疾患を併発している場合に適します。

　荊芥連翹湯は､にきびや鼻炎の漢方（２．慢性鼻炎）や副鼻腔炎（蓄膿症）の漢方（２．慢性期の治療）でも解説していますので参照してください。

６．清上防風湯の関連方剤（２）・・・治頭瘡一方（ﾁﾞﾂﾞｿｳｲｯﾎﾟｳ）

　治頭瘡一方（ﾁﾞﾂﾞｿｳｲｯﾎﾟｳ）と清上防風湯は､図３に示した４種の解表薬（ｹﾞﾋｮｳﾔｸ）を共通して含みます（図５）。
　両方剤はともに､顔面､頭部の炎症性皮膚疾患に用いられてきました。
・治頭瘡一方は小児の分泌物の多いかゆみの強い頭部湿疹に､
・清上防風湯は青壮年の顔面・頭部の赤く化膿傾向の湿疹・皮膚炎
に用いられることが多いようです。

７．清上防風湯の関連方剤（３）・・・防風通聖散（ﾎﾞｳﾌｳﾂｳｼｮｳｻﾝ）

　防風通聖散（ﾎﾞｳﾌｳﾂｳｼｮｳｻﾝ）は､肥満傾向のメタボリック症候群（内臓脂肪症候群）に用いられる方剤ですが､適応症には湿疹・皮膚炎､ふきでもの（にきび）が記載されています。
　防風通聖散と清上防風湯には､図６に示すように
・図３に示した皮疹に用いられる４種の解表薬（ｹﾞﾋｮｳﾔｸ）や
・膿の排泄（排膿）に関与する桔梗（ｷｷｮｳ）､
・炎症性皮疹を軽減する山梔子（ｻﾝｼｼ）などの清熱薬が共通して含まれています。

　防風通聖散は清上防風湯に瀉下薬（大黄（ﾀﾞｲｵｳ）と清熱薬（石膏（ｾｯｺｳ）を強化した方剤だと考えられます。