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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

ヘルパンギーナの漢方


1.ヘルパンギーナ(herpangina:喉頭炎)

 ヘルパンギーナ(喉頭炎)は、発熱と喉の痛み、口腔粘膜に水膨れができます。発熱や喉の痛みは2~4日ほどで自然に改善します。手足口病プール熱とともにウイルス感染による子どもの夏かぜの一部です。夏かぜ(2)を参照してください。

 治療は、発熱と喉や口内の痛みに対する解熱鎮痛薬などの対症療法が主体となります。幼児には飲食量の低下するため栄養と水分補給が必要です。
⇒ちょっと一言。

2.ヘルパンギーナの病期(ビョウキ)と方剤

 ここではヘルパンギーナを含めて広く扁桃炎や口内炎など口腔内の粘膜炎症による痛みに用いられる方剤を考えます。

 口腔内粘膜の炎症の漢方治療では、症状(病態)の経時変化(病期 ビョウキ)に応じて方剤を使い分けます(図1)。かぜ(1)を参照してください。

 基本的には、急性期には葛根湯(カッコントウ)を桔梗石膏と併用し、亜急性期には小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)を用います。

 口腔内の痛みに用いられるエキス剤は、含嗽(ガンソウ)服用が推奨されます。

 エキス剤を水に懸濁させ、口にしばらく含んでブクブクしてから服用します(含嗽服用含み飲み)。薬液を患部に接触させることが狙いです。

夏かぜ(2)ちょっと一言も参照してください。

3.急性期に用いられる方剤

(ギンギョウサン:熱感悪寒)は、熱感が強く悪寒が弱く咽が赤く腫れて痛むかぜに用いられます。舌の尖端が赤いことが選択目標の一つです。

 本方の主体は、清熱解毒薬(セイネツゲドクヤク)の金銀花(キンギンカ)連翹(レンギョウ)と辛涼解表薬(シンリョウゲヒョウヤク)の牛蒡子(ゴボウシ)薄荷(ハッカ)です。

(カッコントウ:悪寒熱感)は、悪寒と発熱(熱感)が同時に発症しているかぜ初期の首筋・肩のこり、筋肉痛、頭痛、鼻閉に用いられます。
 辛温解表薬(シンオンゲヒョウヤク)の桂皮(ケイヒ)麻黄(マオウ)と辛涼解表薬葛根を含みます。
 扁桃腺が痛む時には桔梗湯(キキョウトウ)や桔梗石膏エキスと併用されます。

(マオウブシサイシントウ)は、悪寒の顕著なかぜに用いられます。附子(ブシ)と細辛(サイシン)で温めて痛みを軽減する方剤です。
 本方には「のどチクのカゼに用いる」という口訣(藤平健)があります。のどチクは咽喉痛に相当します。

4.亜急性期以降に用いられる方剤

(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)は、亜急性期に用いられる主方です。小柴胡湯桔梗石膏を加味した方剤です。かぜ亜急性期で、小柴胡湯の適応となる症候に咽喉の発赤・腫れ・痛みに適します。 

 急性期の頭痛などが残る病態では、本方と葛根湯を併用します。併用すれば葛根湯合桔梗石膏を含むことになり、さらに柴葛解肌湯(サイカツゲキトウ)に近くなります(図2)。コロナ後遺症(1)を参照してください。

(サイコセイカントウ)は、神経過敏な小児の反復性の扁桃腺炎、中耳炎など身体上部の炎症を予防する(体質改善する)目的で使用されます。漢方薬名の意味:柴胡清肝湯を参照してください。

5.痛みに用いられる方剤

桔梗甘草)は、のど(咽喉)の腫痛、扁桃炎、扁桃周囲炎に用いられる方剤です。懸濁させた薬液は甘いので小児含嗽服用に適しています。
 本方が舌や口腔内の疼痛に含嗽剤として他剤と併用された報告があります(痛みと漢方. 2007; 17: 43-47.)

は、炎症の顕著な時に他剤と併用されます。

(リッコウサン)は、歯痛や口腔内の疼痛に用いられる方剤です。口内炎(1)を参照してください。
 局所麻痺作用のある細辛を含みます(図3)。

(ハンゲシャシントウ)は、胃食道逆流症に用いられる方剤ですが、がん治療に伴う口内炎にも用いられています。がん(4)を参照してください。
 胃食道逆流症に伴う口唇炎にも用いられています。

 本方の口内炎の鎮痛に関する基礎薬理も明らかにされています(図4)。

(オウレントウ)も口内炎に用いられます。半夏瀉心湯黄芩の代わりに桂皮が配合されています(図5)。

(カンロイン)は、慢性に繰り返す口内炎舌の荒れや痛み歯周炎(歯肉のうっ血)に用いられる一般用の漢方製剤です。口腔内が乾燥口臭のある時にも適します。胃腸虚弱の人には適しません。

 本方は、清熱薬生津清虚熱薬(セイシンセイキョネツヤク)を含みます(図6)。生津清虚熱は、津液不足(シンエキフソク)による虚熱(キョネツ)を潤して冷ます薬能です。

ちょっと一言:(トピックス)

ヘルパンギーナの養生

 水分補給: おかゆ、牛乳、スープ、豆腐、プリン、アイスクリームなど刺激が少なく柔らかい水分の多い食品を摂るとよいでしょう。
 とくに幼児は小まめに水分を摂ることが大切です。
 手洗い・消毒: 初夏から8月頃の流行時期には手洗い・消毒などの感染対策を行うことが大切です。ワクチンや抗ウイルス薬はありません。

(2023年8月18日 公開)


病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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谿 忠人先生

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