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漢方薬名の意味

柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)

1.柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)の名前

 柴胡桂枝湯柴胡(サイコ)と桂枝(ケイシ)は、それぞれ小柴胡湯(ショウサイコトウ)と桂枝湯(ケイシトウ)を意味しています。本方は両方剤の合剤です。
 方剤名は、小柴胡湯桂枝湯の適応病態に使用することを示唆しています。それぞれの適応は、漢方薬名の意味:小柴胡湯桂枝湯を参照してください。

2.柴胡桂枝湯の配合生薬

 柴胡桂枝湯は、小柴胡湯図1の桃色枠内の7生薬)に桂枝(日本では 桂皮 ケイヒ)と芍薬(シャクヤク)を加味した9生薬です。一方、桂枝湯図1の黄色枠内の5生薬)に人参(ニンジン)半夏(ハンゲ)柴胡黄芩(オウゴン)を加味した方剤です。

 芍薬-柴胡図2)は、ストレスによる抑うつ感いらだちなどの気滞(キタイ:肝鬱気滞 カンウツキタイ)を軽減する薬対です。
 芍薬柔肝(ジュウカン)という薬能は、肝血虚を補い柴胡理気疎肝解鬱(リキソカンカイウツ)の薬能を支援します。
 芍薬-柴胡薬対は、漢方薬名の意味:四逆散も参照してください。

3.柴胡桂枝湯の適応

 柴胡桂枝湯の主な適応病態を4領域に分けて示します。

(かぜ・上気道炎、気管支炎)。
 本方は、寒け頭痛吐き気食欲不振を伴う急性期から亜急性期のかぜに用いられます。これは、桂枝湯小柴胡湯の適応病態(表的少陽病:藤平健)です。

 柴胡桂枝湯をかぜ治療に用いられる関連方剤と比較しました(図3)。

 柴胡桂枝湯は、小児のかぜ症候群胃腸かぜに用いられています(漢方の臨床. 2006; 53: 265-277)。

 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)は、柴胡桂枝湯より抑うつ動悸不眠などの不定愁訴に適します。漢方薬名の意味:柴胡桂枝乾姜湯を参照してください。

 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、柴胡桂枝湯より倦怠感だるさに適した補益剤です。漢方薬名の意味:補中益気湯かぜ(2)を参照してください。

 柴胡桂枝湯が、かぜ以外に慢性閉塞性肺疾患(COPD)に続発した肺炎に抗菌薬投与で薬疹を起こした病態で呼吸状態全身状態を改善した報告があります(日東医誌., 2012; 63: 401-406)。
 本方は慢性肝炎にも用いられます。肝臓病(1)を参照してください。

は、心窩部痛を伴う機能性ディスペプシアの第一選択薬です(漢方の臨床. 2024; 71: 173-185)。古典に「心腹卒中痛(突然に発症する腹痛)」に適応することが例示されています。
 柴胡桂枝湯が、消化器症状に用いられている報告を示します。

・慢性胃炎患者の食欲不振胃部膨満感を改善。

日東医誌., 1994; 44: 553-560


・消化性潰瘍の治癒後再発を予防(H2ブロッカーと併用)。

多施設症例集積研究 新薬と臨牀., 1996; 45: 1749-1754


 これらは、湿熱痰飲気虚の錯雑したストレスの関与した肝脾不和(カンピフワ)病態です。本方に含まれる半夏-生姜の化痰(ケタン)と人参補気芍薬-甘草緩急止痛の適応病態です。胃食道逆流症(3)を参照してください。

 本方は、心窩部痛に投与する場合に安中散(アンチュウサン)と併用されます。
 安中散は、胸焼けを伴う鈍痛柴胡桂枝湯は筋痙攣による疝痛に適します。これが使い分けの指標になります(日本消化器病学会雑誌. 2010; 107:1577-1585)。

は、小児の体質改善や心身症に頻用されています(小児疾患の身近な漢方治療. 2005; 4: 89-103)。
 本方は、胃腸虚弱反復する腹痛易感染性を伴うやせ型、几帳面な虚弱児に用いられます。チックも参照してください。

 (4ヶ月から30ヶ月服用)は、易感冒児の発熱食思を改善し易感冒状態を改善。

日東医誌., 1991; 41: 149-155


 は、小児の易感染性、易感冒とアレルギー疾患に有効。

小児疾患の身近な漢方治療. 2009; 8: 45-50


 は、登校困難児起立性調節障碍を軽減(病態に応じて半夏厚朴湯六君子湯と併用)。

日東医誌., 2018; 69: 350-358


 本方のこの領域への応用には、人参補脾益肺と、桂枝湯の(調和営衛≒軽度の補気補血)の薬能が関与します。
 調和営衛は、漢方薬名の意味:桂枝湯を参照してください。

柴胡桂枝湯は、不定愁訴に用いられています。

・月経前症候群(PMS)に伴ういらだち頭痛肩こり生理痛を軽減。

産婦人科漢方研究のあゆみ. 2015; 32: 152-155


動悸肩こり不眠など精神神経症状に適する。ホルモン補充療法は、ほてりのぼせなど血管運動神経症状に適する。

日東医誌., 2016; 67: 323-330


ほてる冷やすと寒がる婦人の不眠を軽減。

日東医誌., 2018; 69: 168-172


 これらは柴胡桂枝湯に含まれる桂皮-甘草降衝鎮悸(コウショウチンキ)と芍薬-柴胡理気疎肝(リキソカン)の適応病態です。降衝鎮悸動悸(1)を、理気疎肝は、漢方薬名の意味:四逆散を参照してください。

 この不定愁訴領域では、本方と桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)との鑑別が必要です。桂枝加竜骨牡蛎湯は、柴胡桂枝湯より不安感動悸不眠物音に驚きやすい神経過敏状態に適します(日東医誌., 2012; 63: 325-329)。不眠(3)を参照してください。

 桂枝加竜骨牡蛎湯は、桂枝湯安神薬(アンシンヤク)の竜骨牡蛎を加味した方剤です(図4)。安神は、不安感動悸不眠悪夢物音に過敏を改善する薬能です。疲労感(1)を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

柴胡桂枝湯の口訣(抜粋)

実際の臨床では「頭痛が強ければ柴胡桂枝湯吐き気が強ければ小柴胡湯」が初心者的な鑑別です(三谷和合)。

・柴胡桂枝湯の適応は、頭痛などの表証と、腹直筋の緊張自汗のぼせ腹痛である。(小柴胡湯にはこのような症状は顕著ではない)(高山宏世)。

感冒以外では、1)胃痛腹痛を伴う消化器症状2)軽度胃弱易感冒小児の体質改善3)抑うついらだちなどの精神神経症状に使用する(三浦於菟)。

(2024年5月24日 公開)


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