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病気の悩みを漢方で
にきびの漢方
1.にきび(尋常性ざ瘡)
にきびは、皮脂の分泌が過剰になって毛穴(ケアナ)が詰まり、炎症や「にきび菌」が増殖し赤くなる皮膚病です。
発症のきっかけが皮脂の分泌過剰ですから、食事や肌の手入れ(洗顔)の影響を受けます。女性では月経不順と関連することもあります。
2.にきび治療における漢方医療
にきびの漢方治療は、皮疹の色(とくに発赤状態)や経過、全身の病態(便秘や女性の場合は月経周期など)を総合的に判断して治療薬を決めます。
なお、医療用の角化抑制剤(アダパレン)の外用や「にきび菌」が増殖し赤にきびには抗菌剤(アクチアクリームなど)の外用、内服(ミノマイシン、クラリスなど)も必要です(お医者さんと相談してください)。
3.にきび治療に頻用される3処方
●清上防風湯(セイジョウボウフウトウ) 顔面紅潮を伴う「赤にきび」
●荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ) 皮膚乾燥傾向を伴う慢性の(発赤を伴う)にきび
●十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ) 化膿を伴う初期から亜急性期のにきび
※月経と関連してにきびが悪化する場合、上記3処方の一つと桂枝茯苓丸加ヨク苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)と併用して2剤で治療します。
4.にきび治療に頻用される3処方の配合生薬
にきび治療の処方には、黄連(オウレン)、山梔子(サンシシ)、柴胡(サイコ)、連翹(レンギョウ)などの清熱薬(セイネツヤク)が主体になります。上の図から赤にきびに用いられる清上防風湯は、赤色で表示した生薬を多く含むことが分かります。
さらに体表にとりついた外邪を取り除く解表薬(ゲヒョウヤク)の防風(ボウフウ)や荊芥(ケイガイ)が共通して含まれています。薄荷(ハッカ)、白シ(ビャクシ)も解表薬です。柴胡にも解表の薬能があります。
清上防風湯に関しては、漢方薬名の意味:清上防風湯を参照してください。
5.十味敗毒湯に含まれる桜皮(オウヒ)
十味敗毒湯は、江戸時代の華岡青洲(ハナオカセイシュウ)が創案した処方です。本方には、桜皮(オウヒ:ヤマサクラの仲間の樹皮) が配合されています。桜皮は化膿性の皮膚病、咳嗽、食中毒の下痢などに用いられてきた日本の民間薬です。
なお、現在の十味敗毒湯には、桜皮の代わりに撲そく(ボクソク:クヌギなどの樹皮)の配合された製剤もあります。
十味敗毒湯の桜皮と撲ソクのいずれが適切なのか判断は困難です。
なお、エストロゲン(女性ホルモン)がにきび発生を抑制することから
エストロゲン様作用のある桜皮が適切だとする基礎研究があります。
- 脂っこい物、甘い物を控えめに: バター、ナッツ、ココア、チョコレートを控える。
- 禁煙、節酒
- ぬるま湯で洗顔フォームでていねいに洗顔し、タオルを肌に押し当てるように。
- 油性のファンデーションでこするのは控える。
- 便秘を解消(野菜や食物繊維を食べる)。
(2020年11月4日 改訂公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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