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病気の悩みを漢方で
糖尿病の漢方
1.2型糖尿病の病期と治療
糖尿病の治療において
・高血糖の管理は西洋薬剤が主体になり、
・随伴症状を軽減するために漢方製剤を併用するのが現代の対処方法です。
漢方医療では、糖尿病に伴う症状の経過(病期)に応じて方剤を使い分けます。前回は肥満期の症状を軽減する大柴胡湯(ダイサイコトウ)など大黄(ダイオウ)を含む方剤を紹介しました。糖尿病の漢方(2)を参照してください。
今回は、その他の漢方製剤を解説します。
2.白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)・・・口渴とほてり感に用いられる方剤
白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)は、糖尿病歴の比較的早い時期の、のどの渇き(冷たい飲み物を飲みたい口渴)や口内の乾燥感、顔や皮膚や身体のほてり感(煩熱)に用いられる漢方方剤です。
白虎加人参湯の適応になる口渴は、熱や頻尿によって体内の水分(津液シンエキ)が乏しくなったためだと考えられます。本方の配合生薬の中で、
・熱をさます薬能(清熱セイネツ)のある生薬が石膏(セッコウ)、
・津液を補う薬能(生津セイシン)のある生薬が、知母(チモ)と人参(ニンジン)です。
この3生薬には血糖を低下させる作用のあることが動物実験で明らかにされています。
白虎加人参湯に関しては熱中症と夏ばて(1)の項目でも紹介しています。参照してください。
3.牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)・・・足のしびれ感を伴う糖尿病に用いられる方剤
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は、糖尿病が進行し、やせて皮膚乾燥傾向になった病期の手足のしびれや痛み、むくみに適する漢方方剤です。この症状は糖尿病性神経障害に相当します。
さらに本方は、疲労倦怠感や性欲の減退、口内の乾燥感(口乾)や排尿異常、足腰の脱力感や冷えなども軽減します。この症状群は漢方医学の腎虚(ジンキョ)に相当します。
牛車腎気丸の処方名の「腎気」は「腎気の不足(腎虚)を補う」という意味です。
八味地黄丸(ハチミジオウガン)も、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)とほぼ同じように使われます。八味地黄丸の8生薬に、下肢のしびれ感やむくみを軽減する牛膝(ゴシツ)と車前子(シャゼンシ)を加えた方剤が牛車腎気丸です。
牛車腎気丸(あるいは八味地黄丸)は、肥満期の糖尿病に用いられる大柴胡湯を用量を少なくして併用されます。すなわち大柴胡湯の1日量を満量服用し、牛車腎気丸(あるいは八味地黄丸)を寝る前に1/3量を併用する場合もあります。
4.牛車腎気丸と八味地黄丸の主な配合生薬
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)や八味地黄丸(ハチミジオウガン)は、地黄(ジオウ)を主薬とする方剤です。地黄は、山茱萸(サンシュユ)や山薬(サンヤク)と一緒になって、体の潤いを回復し、性欲の減退、足腰の脱力感を軽減します。
牛車腎気丸と八味地黄丸に関しては排尿異常の漢方(1)の項目でも紹介しています。
また八味地黄丸に関しては、不妊の漢方(2)にも記載があります。参照してください。
糖尿病の漢方治療では、症状の経時に変化に対応して方剤を使い分けます(図1)。そのため 漢方相談の場合には、糖尿病という病名だけでなく、
・口渴、のぼせ、肩こり、腹部膨満感、便秘など肥満期に伴う症状が主体なのか、
・倦怠感、手足の冷えやしびれ感、排尿困難、皮膚の乾燥やかゆみ、
などの症状を詳しく話してください。
なお、貝原益軒の『養生訓』にあるように、
という生活習慣の見直しが基本です。
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
症状と漢方薬
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- 胃腸虚弱(高齢者)
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