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漢方薬名の意味

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

1.桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)の意味

 桂枝茯苓丸の名は、桂枝(ケイシ:日本では桂皮)と茯苓(ブクリョウ)が主な配合生薬であることを示しています。桂皮の薬能は、降気(コウキ)通脈(ツウミャク)、茯苓利水健脾です。このことから、本方の適応病態が、気逆(キギャク)や水滞(スイタイ)であることを示唆しています。

 ところが、本方の口訣(クケツ)には「此の方(桂枝茯苓丸)は、凡て瘀血(オケツ)より生ずる諸症に活用すべし(浅田宗伯)」とあります。本方は、瘀血 ケツの循環停滞)を軽減する活血剤(カッケツザイ)として活用されています。

 瘀血活血薬の概要を図1に示します。

 瘀血は、気血水漢方薬名の意味:芎帰調血飲も参照してください。

2.桂枝茯苓丸の適応

 桂枝茯苓丸は、
1)月経不順、月経痛、月経前症候群、(日東医誌., 1994; 45: 365-369.)産後諸症に伴う冷えのぼせいらだち頭痛腰痛に用いられます。婦人更年期障碍(4)を参照してください。

 桂枝茯苓丸活血剤としての特徴を臨床的に評価した比較研究があります。

 桂枝茯苓丸は、悪露貯留による産後子宮復古不全の子宮内腔を対照群(子宮収縮止血剤:マレイン酸エルゴメトリン群)より有意に縮小した。

日東医誌., 2022; 73: 8-15.

 さらに、本方は、男女にかかわらず、
2)血行障碍を伴う生活習慣病血管障碍病態痔疾しもやけに用いられます。
肥満(2)ちょっと一言や、しもやけを参照してください。

3)術後の炎症日東医誌., 2017; 68: 140-147.)や、慢性肝炎関節リウマチなどの慢性炎症性疾患に併用剤として用いられます。

 桂枝茯苓丸の応用を裏打ちする基礎薬理作用を以下にまとめました。

1) 微小循環改善(血液粘度、赤血球集合能・変形能改善)、
2) 動脈硬化予防(血管内皮保護、過酸化脂質減少、脂質異常症改善)、
3) 更年期障碍軽減(卵巣摘出、性腺刺激ホルモン放出モデル)、
4) その他:非アルコール性脂肪肝炎(NASH)軽減、糖尿病性腎症進行予防

3.桂枝茯苓丸の配合生薬

 桂枝茯苓丸は、5生薬からなる方剤です(図2)。

 桂皮は、気逆を降ろす降気薬(コウキヤク)です。冷えのぼせなどの気逆症状は瘀血と併発します。さらに桂皮通脈の薬能は桂枝茯苓丸活血に寄与しています。

 茯苓利水(リスイ)は、桂皮と連携して、むくみの軽減に寄与します。
 芍薬(シャクヤク)は、月経痛腰痛などの筋緊張による疼痛を軽減します。
 桃仁(トウニン)と牡丹皮(ボタンピ:図3)は、瘀血を整え、冷えのぼせ、疼痛を軽減します。

 桂枝茯苓丸は、5生薬の粉末を蜂蜜で練った丸剤でした。現在は、刻んだ5生薬の熱水抽出液から水分を除去したエキス製剤が主体です。

4.桂枝茯苓丸の関連方剤

は、桂枝茯苓丸薏苡仁(ヨクイニン:健脾祛湿排膿)を加味した方剤です。桂枝茯苓丸の適応病態に手足の荒れにきびしみを伴う皮膚科領域で使用されます。帯下(コシケ)治療にも適します。
 本方は、糖尿病患者の下肢浮腫を軽減した症例報告があります(漢方の臨床. 2019; 66: 1057-1061.)。

(トウカクジョウキトウ)と(ダイオウボタンピトウ)は、清熱瀉下薬大黄(ダイオウ)と芒硝(ボウショウ)を含む活血化瘀剤です(図4)。
 3方剤は漢方薬名の意味:桃核承気湯で比較しています。

(トウキシャクヤクサン)と(カミショウヨウサン)は、桂枝茯苓丸と共に三大漢方婦人薬と称され、婦人科領域の不定愁訴に頻用されています。
 この3方剤は、婦人更年期障碍(4)漢方薬名の意味:加味逍遙散で比較しています。

(ウンケイトウ)は、桂枝茯苓丸より乾燥冷えほてり上熱下冷)を伴う病態に適した温経散寒補血活血剤です。漢方薬名の意味:温経湯を参照してください。

(セッショウイン)は、冷え症傾向で刺すような月経痛に適します。
 本方は、桂枝茯苓丸茯苓以外の4生薬、当帰芍薬散の要薬(当帰川芎芍薬)や理気活血止痛薬延胡索(エンゴサク)を含み、桂枝茯苓丸に温性の補血活血止痛薬を強化した内容になっています(図5)。

ちょっと一言:(トピックス)

久病有瘀

 「久病(慢性の疾病)には瘀血の病理がある」ので瘀血を確認しながら治療薬を選びなさいという口訣(クケツ)です。
 慢性の疾病では不安や不満が鬱積した気滞になり、さらに闘病過程で臓腑の機能が失調して気血水津液)に運行が乱れて瘀血になります。これが久病有瘀という考えです。

 なお、久病有痰という口訣もあります。漢方薬名の意味:二陳湯ちょっと一言を参照してください。

(2024年2月1日 公開)


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