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病気の悩みを漢方で
認知症の漢方
1.認知症の概要
認知症は、脳神経細胞の障害による認知機能障害です。
新しいことが覚えられない(記憶障害)にはじまり、簡単な計算ができない、時間や場所がわからない、考えて決めることができない、などなどの症状が徐々に進行し、時には人格も変わります。
認知症は、老化に伴う単なるもの忘れとは違います。日常生活や人間関係などの社会生活に支障がでる疾患です(表1)。
2.認知症の種類・・・血管性認知症と神経変性性認知症
認知症には血管性認知症と神経変性性認知症の2種類があります。
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血流障害が原因で発症する認知症です。
神経変性性認知症は、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症のように異常なタンパク質が脳に溜まり脳神経細胞が変性障害されることによって発症する認知症です。
認知症で一番多いのがアルツハイマー型認知症、です。レビー小体型認知症と脳血管性認知症の3種類で認知症の8割以上になります。
主な認知症の特徴の概要を以下に示します。高齢者のうつ病と紛らわしい認知症もありますので、詳しい診断は、専門の医師に相談してください。
3.認知症の症状
認知症では、表2に示したようにそれぞれに特徴的な症状がありますが、主な症状は、中核症状と周辺症状です(図2)。
①中核症状・・・脳の神経細胞の障害による記憶障害などの症状群
②周辺症状(行動・心理症状:BPSD):中核症状を感じた患者が、不安や焦りや怒りを感じて精神的に不安定になって起きる症状。
周辺症状(BPSD)は患者の性格や生活環境や医療担当者・介護者との人間関係が大きく影響します。
4.認知症治療の現状
現代の科学医療においても、認知症を根治させることは困難な状況です。
しかしながら、早期に発見すれば、進行を遅らせることはできます。また認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)を軽減する治療や介護も行われています。
漢方医療でも認知症を根治させることは困難ですが、行動・心理症状(BPSD)を軽減する効果が明らかになってきました。とくに、黄連(オウレン)、柴胡(サイコ)、釣藤鈎(チョウトウコウ) などを配合した漢方製剤が注目されています。
次回以降に漢方製剤の臨床報告(エビデンス)を紹介しながら、認知症治療における漢方医療や漢方製剤の役割を紹介します。
認知症予防の基本は、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)と生活習慣病の予防軽減です。
脳梗塞後の脳血管性認知症が、生活習慣病(高血圧、糖尿病)と関係が深いことはすぐに分かりますが、アルツハイマー型認知症のような神経変性性認知症の発症も生活習慣病と深く関係しています。
血糖の管理が不適切で血糖の変動が大きいと認知症の危険性が約2倍に増えるということです。脂質の摂取量を控え、適度に運動することも認知症の予防に有用です。
さらに、好奇心をもって頭脳を使うことを意識してください。家族や世間との付き合い、段取りを考えて料理する、絵画や俳句・川柳など創作的な趣味を持つ、などです
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
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