きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。
病気の悩みを漢方で
冷え症の漢方
1.冷えのぼせ
冷えのぼせは、冷え症とのぼせ症が共存することです。上半身や顔面は「のぼせる」が、同時に下半身の冷えに悩む人が多いようです。
顔面の「のぼせ・ほてり」は、ホットフラッシュと言われ、イラストのKBさんのように婦人更年期障碍の主な症状の一つです。
2.桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)・・・のぼせと足冷えに用いられる基本処方
漢方医療では、冷えのぼせは気(キ)と血(ケツ)の流れが異常な病態だと考えます。
気の流れの異常には、気滞(キタイ)と気逆(キギャク)があります。
イラストのKBさんのイライラは、気逆の病態がありそうです。気逆は、逆上という言葉のように冷えのぼせ(顔面紅潮)以外に頭痛、イラダチ、焦燥感、動悸、めまい、などから診断されます。
血(ケツ)の流れの異常(停滞)は、瘀血(オケツ)です。瘀血は、精神不穏(イライラ、冷えのぼせ)以外に頭痛、不眠、肩こり、肌荒れ、腰痛、月経痛などから診断されます。
イラストのKBさんには、肥満・脂質異常(高脂質血症)で血流が悪い傾向が予想されますので瘀血の病態も関与しているようです。なお、瘀血は現代の血行不全に相当しますから、手足の末梢が冷える原因でもあります。
このようなことからKBさんには、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)が適すると考えられます。桂枝茯苓丸には、
・気逆を調整する桂皮(ケイヒ)が含まれ、
・瘀血を調整する牡丹皮(ボタンピ)と桃仁(トウニン)が配合されています。
桂枝茯苓丸は、比較的体力があり、下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴える人の、「月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打撲傷、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎」に用いられます。
3.加味逍遙散(カミショウヨウサン)・・・愁訴の多い冷えのぼせに用いられる処方
イラストのKSさんは、冷え症ですが、午後になると一過性の「のぼせやイライラや腹立たしさ」が出るので悩んでいます。
顔が二つ描かれているのは、「気うつ」の状態と、「のぼせて、イラダチ、腹が立つ」状態が短い期間に繰り返すことを意味しています。
KSさんの情緒不安定傾向は気滞(キタイ)、一過性 ののぼせやイライラは、気逆(キギャク)の病態がありそうです。
このようなことからKSさんには、加味逍遙散(カミショウヨウサン)が適すると考えられます。
加味逍遙散には、
・気滞を調整する柴胡(サイコ)や薄荷(ハッカ)
・気逆を調整する山梔子(サンシシ)が含まれ、
・瘀血を調整する牡丹皮(ボタンピ)と当帰(トウキ)が配合されています。
加味逍遙散は、体力中等度以下で,「のぼせ感があり、肩がこり疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある人の冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不妊症」に用いられています。
加味逍遙散に関しては、PMSの漢方(2)も参照してください。
4.「冷えのぼせ症」に用いられる主な処方
冷えのぼせ症は、症状の発現状況や随伴症状によって複数の処方の適応になります。
・のぼせが主体で、足の冷えもある場合は桂枝茯苓丸の適応です。
・冷え症が主体で、一過性にのぼせる場合は加味逍遙散が適します。本方は症状が 多彩な病態に用いられます。
この2処方は、月経不順や月経痛など瘀血に由来する症状を伴う場合に用いられます。
一方、瘀血による症状は少なく、冷え症が主体で、「ほてり」の症状が頭部の異常発汗や口の渇き(乾燥)で現れる場合には柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)が適します。本方は神経質な人の動悸や不眠(熟眠障害)や肩こりなどなどの症状に用いられます。
なお、関連する項目の婦人更年期障碍の漢方(4)も参照してください。
口訣(クケツ)というのは、漢方処方の使用法の勘所を簡潔に記した漢方医の臨床経験談です。
それによると、加味逍遙散の適応患者は、自分の多様な症状を丁寧にしゃべる人が多い。訴えは多様で「日替わり」で変わる。医療者の話を遮ってでも話し続ける。一方、よく喋る場合と、無表情な場合もあるということです。本人が怒っているときは、周辺の人を不愉快にさせる雰囲気です。
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
症状と漢方薬
- (あ行)
- RSウイルス
- 足腰の衰え(虚弱)
- 足のむくみ
- アトピー性皮膚炎
- アルコール性肝炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー性鼻炎
- 胃食道逆流症
- 胃腸かぜ
- 胃腸虚弱
- 胃腸虚弱(高齢者)
- 胃腸虚弱(フレイル)
- 胃痛
- 胃もたれ
- 意欲の低下
- 意欲低下(虚弱)
- イライラ
- イライラ(産後)
- インポテンツ
- ウイルス肝炎
- うつ感
- 運動器症候群
- 円形脱毛症
- おしっこの悩み(前立腺肥大)
- (か行)
- 顔色不良(虚弱)
- 過活動膀胱
- 過換気症候群(過呼吸)
- 霍乱
- かぜ(風邪)
- 肩・首筋のこり
- 過敏性腸症候群
- 下部尿路症状
- 花粉症
- がん
- かんしゃく
- 関節痛(冷え症)
- 関節リウマチ
- 感染性胃腸炎
- 乾燥肌
- 肝臓病
- 気うつ
- 気うつ(産後)
- 気管支炎
- 機能性ディスペプシア
- 虚労
- 起立性調節障碍
- 緊張型頭痛
- 筋肉減少症
- 軽度認知障碍
- 月経周期の乱れ
- 月経痛(冷え症)
- 月経痛(冷えのぼせ症)
- 月経不順(周期の長短)
- 月経不順(血の道症)
- 月経前症候群(PMS)
- げっぷ
- 下痢
- 下痢(ゲンノショウコ)
- 高血圧
- 高血圧傾向(虚弱)
- 高血糖
- 好酸球性副鼻腔炎
- 口内炎
- 後鼻漏
- 高齢者
- 五十肩
- 呼吸困難(COPD)
- こじれた咳(感冒)
- 骨粗鬆症
- 子どもがほしい
- こむら返り
- コロナ後遺症
- (さ行)
- サルコペニア
- 産後の回復不全
- 残尿感(前立腺肥大)
- CFS(慢性疲労症候群)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 湿疹
- 脂肪肝
- しもやけ
- しゃっくり
- 主婦湿疹
- 暑気あたり
- 女性不妊
- 自律神経失調症
- 脂漏性湿疹
- 尋常性乾癬
- 尋常性ざ瘡
- 頭重感
- 頭痛
- 頭痛(しめつける痛み)
- 頭痛(低気圧)
- 頭痛(婦人更年期障碍)
- ストレス胃
- 生理痛(冷え症)
- 生理痛(冷えのぼせ症)
- 生理不順(血の道症)
- 精力低下(男性)
- せき(咳)
- 咳(こじれた感冒)
- 脊柱管狭窄症
- 喘息
- 喘息(発作)
- 喘息(寛解)
- 前立腺肥大
- GERD
- (た行)
- たん(痰)
- 男性更年期障碍
- 男性不妊
- 蓄膿症
- 血の道症
- チック
- 痛風
- 手足口病
- 手足のしびれ(糖尿病)
- 低気圧頭痛
- 天気痛
- 動悸
- 凍瘡
- 糖尿病
- (な行)
- 内臓脂肪症候群(糖尿病)
- ながびく咳(感冒)
- 夏かぜ
- NASH
- 夏バテ
- 夏やせ
- 2型糖尿病
- にきび
- 尿意切迫
- 尿失禁
- 尿路結石
- 尿路不定愁訴
- 妊娠力をつけたい
- 認知症
- 脳血管性認知症
- 熱中症
- 脳梗塞と脳出血
- のぼせ感
- ノロウイルス下痢
- (は行)
- 肺気腫(COPD)
- 排尿異常
- 鼻アレルギー
- 鼻かぜ
- 鼻づまり
- 鼻水
- 非アルコール性肝炎
- 冷え症
- 冷えのぼせ症
- 鼻炎
- 皮膚炎
- 皮膚瘙痒症
- 肥満
- 肥満(糖尿病)
- 疲労感
- 頻尿
- PMS(月経前症候群)
- 不安定膀胱
- プール熱
- 腹痛
- 副鼻腔炎
- 婦人更年期障碍
- 不眠
- 不眠(産後)
- フレイル(虚弱)
- ヘルパンギーナ
- 変形性膝関節症
- 片頭痛
- 便通異常
- 便秘
- 膀胱結石
- (ま行)
- マタニティー・ブルー
- 慢性胃炎
- 慢性気管支炎(COPD)
- 慢性の咳(COPD)
- 慢性疲労症候群(CFS)
- 慢性閉塞性肺疾患
- むくみ(足のむくみ)
- 無月経
- 胸やけ
- メタボ肥満
- メタボリック・シンドローム(糖尿病)
- めまい
- めまい(婦人更年期障碍)
- (や行)
- 夜間頻尿
- やせと栄養失調
- 腰痛
- 抑うつ感
- 抑うつ感(虚弱)
- 夜泣き
- (ら行)
- 冷房下痢
- 老年症候群
- ロコモ
漢方薬名を選ぶ!
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)