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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

1.冷え症のまとめ

 冷え症の病態は、総論4:気血水で解説した「(キ)、(ケツ)、(スイ:津液シンエキ)」の量や機能の不足と流れの失調(停滞)に由来します。

 冷え症は西洋医学の検査の感知困難な病態ですが、気血水の失調という独自の病態観と治療する生薬が伝承されているため、漢方医療の特徴を生かせる領域です。

 冷え症に悩む患者さんのイメージを示しました。

・NJさんは胃腸が弱く全身が冷え「冷え腹」に悩んでいる人のイメージです。気虚(キキョ)の病態です。人参を主薬とする人参湯(ニンジントウ)などが適する病態です。冷え症(6)を参照してください。

・TSさんは、冷え症・貧血症・低血圧にともなう頭重感やめまいに悩んでいます。血虚(ケッキョ)を補う当帰(トウキ)を主薬とした当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)が適します。

・BOさんの悩みは、水肥りで下肢の冷え症やむくみです。水滞(スイタイ)を防已(ボウイ)や白朮(ビャクジュツ)で改善する防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)が適します。冷え症(5)を参照してください。

 この他に「冷えのぼせ」の悩みもあります。冷え症(8)を参照してください。

2.男性の冷え症に用いられる八味地黄丸(ハチミジオウガン)

 男性にも冷え症があります。

・HJさんは年齢を重ねたひとの腰や下肢の冷え症のイメージです。男性の場合は夜間の頻尿を伴います。気虚(キキョ)の中の腎虚(ジンキョ)に伴う冷え症です。

 HJさんは補腎(ホジン)薬の附子(ブシ)を主薬とする八味地黄丸(ハチミジオウガン)の適応になります。八味地黄丸に関しては冷え症(4)を参照してください。

3.冷え症を予防する生活習慣の見直し

 冷え症は疾患の前段階です。これを漢方医療では未病(ミビョウ)と言います。生活習慣を見直して養生し適切に予防することが大切です。これが漢方医療の「未病の段階に治める」ことです。

生活習慣の見直し:

  • 風呂:40度未満のぬるめの湯にゆっくりつかる。
    (気分転換のリラックス効果もある)。
  • 頭寒足熱(ズカンソクネツ):足下を冷やさない。
  • 適度な運動で血行を促進する。
    同じ姿勢を続けると血行が悪くなる。運動は血行を促進し、気分を転換する。
  • 筋力を維持し新陳代謝を促進する。
    ストレッチやスクワット運動でふとももやふくらはぎの筋肉の衰えを予防。
  • 衣服:からだを締めつけない衣服や靴を選ぶ。
    首もとを温めるネックウオーマー(→感冒の予防にもなる)

4.冷え症を予防する食事の見直し

・無理なダイエットを慎み、体力(正氣 セイキ:自然治癒力)と筋力をつける。

・身体を温める食材を加熱して食べる。
 ネギ、ニラ、ニンニク、ゴボウ、ニンジン、レンコン、カボチャ、カブ、クルミ、鶏肉、羊肉、ウナギ、チーズ
(例)玉ねぎ、かぼちゃ、にんじんを具にした「味噌汁」にショウガをすって入れる。

5.冷え症を軽減する薬用酒・・・ベニバナ酒 (紅藍花酒 コウランカシュ)

 漢方の古典『金匱要略(キンキヨウリャク)』には、ベニバナの花(紅花 コウカ)の酒を、冷え症・血色不良に伴う腹痛に用いることが記されています。

冷え症を予防するためのベニバナ酒
 ベニバナ10gとホワイトリカー(焼酎)200mlを1ヶ月以上熟成させる。
(好みによりザラメ砂糖を適量入れる)。寝る前に大さじ1杯程度を服用してください。

※なお、妊娠中の女性はベニバナ酒を「連用」しないでください。漢方医療ではベニバナ(紅花)を含む処方を「連用」すると流産を引き起こす可能性があると考えています。

ちょっと一言:(トピックス)

生薬と食材の四気(シキ:熱・温・涼・寒)

 生薬(漢方用薬)は、冷やして亢進状態を沈静させる熱証を軽減する寒涼薬と、温めて機能を高め寒証を軽減する温熱薬に分類されています。このような生薬の性質を四気四性と言います。また寒性や熱性に偏らない薬物を平性(ヘイセイ)といいます。これらの四気を考慮して漢方処方が構成されています。

 薬膳(ヤクゼン)では、食材の四気に基づいて組み合わせて調理されます。


病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
谿 忠人先生のプロフィール
谿 忠人先生

漢方医療とは

症状と漢方薬

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アルコール性肝炎
アルツハイマー型認知症
アレルギー性鼻炎
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胃腸かぜ
胃腸虚弱
胃腸虚弱(高齢者)
胃腸虚弱(フレイル)
胃痛
胃もたれ
意欲の低下
意欲低下(虚弱)
イライラ
イライラ(産後)
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ウイルス肝炎
うつ感
運動器症候群
円形脱毛症
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(か行)
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過換気症候群(過呼吸)
霍乱
かぜ(風邪)
肩・首筋のこり
過敏性腸症候群
下部尿路症状
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がん
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関節リウマチ
感染性胃腸炎
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肝臓病
気うつ
気うつ(産後)
気管支炎
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虚労
起立性調節障碍
緊張型頭痛
筋肉減少症
軽度認知障碍
月経周期の乱れ
月経痛(冷え症)
月経痛(冷えのぼせ症)
月経不順(周期の長短)
月経不順(血の道症)
月経前症候群(PMS)
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下痢(ゲンノショウコ)
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高血圧傾向(虚弱)
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口内炎
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高齢者
五十肩
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(さ行)
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産後の回復不全
残尿感(前立腺肥大)
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COPD(慢性閉塞性肺疾患)
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脂肪肝
しもやけ
しゃっくり
主婦湿疹
暑気あたり
女性不妊
自律神経失調症
脂漏性湿疹
尋常性乾癬
尋常性ざ瘡
頭重感
頭痛
頭痛(しめつける痛み)
頭痛(低気圧)
頭痛(婦人更年期障碍)
ストレス胃
生理痛(冷え症)
生理痛(冷えのぼせ症)
生理不順(血の道症)
精力低下(男性)
せき(咳)
咳(こじれた感冒)
脊柱管狭窄症
喘息
喘息(発作)
喘息(寛解)
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GERD
(た行)
たん(痰)
男性更年期障碍
男性不妊
蓄膿症
血の道症
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痛風
手足口病
手足のしびれ(糖尿病)
低気圧頭痛
天気痛
動悸
凍瘡
糖尿病
(な行)
内臓脂肪症候群(糖尿病)
ながびく咳(感冒)
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