きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。
病気の悩みを漢方で
総論
1.診察と診断と治療薬選択の過程
疾患や病気を治療する時には、診察と診断を経て治療方針や治療薬が選ばれます。
- 現代科学医療では、医師が各種の検査をして西洋医学の病名を診断し、治療薬を決めます。治療薬は主として単一の化合物です。科学医療はバクテリア感染症に対する抗菌剤(抗生物質)療法に強みがあります。
- 漢方医療では、医師や薬剤師が患者の様子を見ながら対話して漢方医学の病態(証ショウ)を診断し、治療薬を選びます。治療薬は複数の生薬を組み合わせた漢方処方です。漢方医療は虚弱児や高齢者医療、過敏性腸症候群や婦人更年期障碍など慢性の症状に対する治療に有用です。
- 民間医療では、患者自身が医療専門家の病態診断を経ないで自ら症状を指標にして生薬を煎じて服用します、治療薬は主に一つの生薬です。
2.漢方医療と民間療法の相違(下痢治療を例にして)
2.1)下痢の漢方医療
冷房病の下痢に用いられる人参湯(ニンジントウ:人参・白朮・甘草・乾姜)は、「体力虚弱で、疲れやすく手足などが冷えやすい人の下痢、嘔吐、胃痛、腹痛を伴う急性・慢性胃炎に用いられます。上記イラストのような患者さんの冷え症に伴う下痢が人参湯の適応病態です。
下線部分が人参湯を選ぶ条件、すなわち「どのような人の、どのような症状」に適するかが示されています。これを漢方医療では虚寒証(キョカンショウ)と診断します。
このように、漢方医療では個性と症状群から漢方医学の病態を診断して処方を使い分けます。
なお半夏瀉心湯と人参湯に関しては、過敏性腸症候群(2 下痢型)を参照してください。
2.2)下痢の民間療法: 下痢にゲンノショウコ
民間療法では漢方医学のような病態診断はなく、下痢という一つの症状を指標にしてゲンノショウコの開花期の地上部を煎じて、下痢や便通を整える目的で服用されます。
ゲンノウショウコに含まれるタンニン成分が(軽い食あたりなどで)障害された消化管粘膜を保護して下痢・軟便を軽減すると考えられています。
便通を整えるためのゲンノショウコの標準的な1日量は10 gです。
これを600 mlの水で400 mlになるまで煎じ、空腹時に3回に分けて服用します。
なお、好みの味や症状に応じて煎じる時間を適宜調節するといいでしょう。
(下痢止めには薄く煎じ、便秘には濃く煎じるともいわれています)
なお、ゲンノショウコのタンニンによる薬効から考えると、 イラストの女性のような冷房下痢には、ゲンノウショウコより温めて胃腸の機能を整える人参湯の方が適していると思われます。
3.日本3大民間薬
ゲンノショウコ、センブリ、ドクダミが主な日本の主な民間薬です。
センブリは、胃もたれなどの健胃薬(当薬トウヤク)として、 ドクダミは、吹き出物など皮膚病薬(十薬や重薬:ジュウヤク)として用いられています。
なお、ゲンノショウコやドクダミは健康茶などに配合されていますが、それは健康維持を目的とする食品としての利用です。
症状を治療する医薬品としての1日の服用量は、ゲンノショウコ10g、ドクダミ12-15gです。健康茶に含まれる量よりかなり多い量で使用されています。
4.漢方医療と民間療法の相違点(まとめ)
漢方医療と民間療法は以下の三つの点で、異なっています。
- 1)漢方医療には、「証(ショウ)」という病態診断があります。証は、どのような人の、どのような症状が、どのような病理で発現しているのか、を診断することです。
- 2)漢方医療では、証を診断することで、その証(病態)を調整する生薬を選びます。
このように診断と連携した生薬の効能論という治療理論が整備されています。 - 3)漢方医療は、複数の生薬を組み合わせた処方として治療します。
ゲンノショウコの効果は早く確実なので、「現に効果の証拠がある」という意味で「現の証拠」と名付けられました。
なおゲンノショウコの葉は、毒草のトリカブトの仲間と似ています。ゲンノショウコの地下部は細い根ですが、トリカブトの仲間の地下部には塊根があります。野山でゲンノショウコを採集する時には、まちがわないように区別してください。
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
漢方医療とは
- (1)現代医療における漢方製剤
- (2)漢方薬局における診察
- (3)漢方薬局における診断(1)虚実と寒熱
- (4)漢方薬局における診断(2)気血水
- (5)漢方薬局における診断(3)病期
- (6)漢方薬局における診断(4)五臓
- (7)漢方処方の剤形
- (8)漢方医療と民間療法
- (9)セルメと健康相談
症状と漢方薬
- (あ行)
- RSウイルス
- 足腰の衰え(虚弱)
- 足のむくみ
- アトピー性皮膚炎
- アルコール性肝炎
- アルツハイマー型認知症
- アレルギー性鼻炎
- 胃食道逆流症
- 胃腸かぜ
- 胃腸虚弱
- 胃腸虚弱(高齢者)
- 胃腸虚弱(フレイル)
- 胃痛
- 胃もたれ
- 意欲の低下
- 意欲低下(虚弱)
- イライラ
- イライラ(産後)
- インポテンツ
- ウイルス肝炎
- うつ感
- 運動器症候群
- 円形脱毛症
- おしっこの悩み(前立腺肥大)
- (か行)
- 顔色不良(虚弱)
- 過活動膀胱
- 過換気症候群(過呼吸)
- 霍乱
- かぜ(風邪)
- 肩・首筋のこり
- 過敏性腸症候群
- 下部尿路症状
- 花粉症
- がん
- かんしゃく
- 関節痛(冷え症)
- 関節リウマチ
- 感染性胃腸炎
- 乾燥肌
- 肝臓病
- 気うつ
- 気うつ(産後)
- 気管支炎
- 機能性ディスペプシア
- 虚労
- 起立性調節障碍
- 緊張型頭痛
- 筋肉減少症
- 軽度認知障碍
- 月経周期の乱れ
- 月経痛(冷え症)
- 月経痛(冷えのぼせ症)
- 月経不順(周期の長短)
- 月経不順(血の道症)
- 月経前症候群(PMS)
- げっぷ
- 下痢
- 下痢(ゲンノショウコ)
- 高血圧
- 高血圧傾向(虚弱)
- 高血糖
- 好酸球性副鼻腔炎
- 口内炎
- 後鼻漏
- 高齢者
- 五十肩
- 呼吸困難(COPD)
- こじれた咳(感冒)
- 骨粗鬆症
- 子どもがほしい
- こむら返り
- コロナ後遺症
- (さ行)
- サルコペニア
- 産後の回復不全
- 残尿感(前立腺肥大)
- CFS(慢性疲労症候群)
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 湿疹
- 脂肪肝
- しもやけ
- しゃっくり
- 主婦湿疹
- 暑気あたり
- 女性不妊
- 自律神経失調症
- 脂漏性湿疹
- 尋常性乾癬
- 尋常性ざ瘡
- 頭重感
- 頭痛
- 頭痛(しめつける痛み)
- 頭痛(低気圧)
- 頭痛(婦人更年期障碍)
- ストレス胃
- 生理痛(冷え症)
- 生理痛(冷えのぼせ症)
- 生理不順(血の道症)
- 精力低下(男性)
- せき(咳)
- 咳(こじれた感冒)
- 脊柱管狭窄症
- 喘息
- 喘息(発作)
- 喘息(寛解)
- 前立腺肥大
- GERD
- (た行)
- たん(痰)
- 男性更年期障碍
- 男性不妊
- 蓄膿症
- 血の道症
- チック
- 痛風
- 手足口病
- 手足のしびれ(糖尿病)
- 低気圧頭痛
- 天気痛
- 動悸
- 凍瘡
- 糖尿病
- (な行)
- 内臓脂肪症候群(糖尿病)
- ながびく咳(感冒)
- 夏かぜ
- NASH
- 夏バテ
- 夏やせ
- 2型糖尿病
- にきび
- 尿意切迫
- 尿失禁
- 尿路結石
- 尿路不定愁訴
- 妊娠力をつけたい
- 認知症
- 脳血管性認知症
- 熱中症
- 脳梗塞と脳出血
- のぼせ感
- ノロウイルス下痢
- (は行)
- 肺気腫(COPD)
- 排尿異常
- 鼻アレルギー
- 鼻かぜ
- 鼻づまり
- 鼻水
- 非アルコール性肝炎
- 冷え症
- 冷えのぼせ症
- 鼻炎
- 皮膚炎
- 皮膚瘙痒症
- 肥満
- 肥満(糖尿病)
- 疲労感
- 頻尿
- PMS(月経前症候群)
- 不安定膀胱
- プール熱
- 腹痛
- 副鼻腔炎
- 婦人更年期障碍
- 不眠
- 不眠(産後)
- フレイル(虚弱)
- ヘルパンギーナ
- 変形性膝関節症
- 片頭痛
- 便通異常
- 便秘
- 膀胱結石
- (ま行)
- マタニティー・ブルー
- 慢性胃炎
- 慢性気管支炎(COPD)
- 慢性の咳(COPD)
- 慢性疲労症候群(CFS)
- 慢性閉塞性肺疾患
- むくみ(足のむくみ)
- 無月経
- 胸やけ
- メタボ肥満
- メタボリック・シンドローム(糖尿病)
- めまい
- めまい(婦人更年期障碍)
- (や行)
- 夜間頻尿
- やせと栄養失調
- 腰痛
- 抑うつ感
- 抑うつ感(虚弱)
- 夜泣き
- (ら行)
- 冷房下痢
- 老年症候群
- ロコモ
漢方薬名を選ぶ!
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
- 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
- 柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
- 柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)
- 三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)
- 滋陰降火湯(ジインコウカトウ)
- 四逆散(シギャクサン)
- 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
- 小柴胡湯(ショウサイコトウ)
- 小青竜湯(ショウセイリュウトウ)
- 消風散(ショウフウサン)
- 辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)
- 清上防風湯(セイジョウボウフウトウ)
- 清暑益気湯(セイショエッキトウ)
- 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
- 清肺湯(セイハイトウ)
- 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)