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病気の悩みを漢方で

(36)抑肝散(ヨクカンサン)
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1.抑肝散(ヨクカンサン)の意味・・・肝気の高ぶりを抑制
抑肝散の抑肝は、肝気(カンキ)の高ぶりを抑制する薬能です。
精神ストレスが継続すると肝気が停滞し体内で熱となって肝気が上逆(ジョウギャク)します。これによって発現する興奮的な精神神経症状を抑える(鎮静させる)方剤が抑肝散です。
2.抑肝散の適応・・・神経の高ぶり、怒り、いらだち、不眠

抑肝散は神経の高ぶり、興奮、怒り、いらだち、焦燥感、不眠、を目標にして使用されます。
もともと小児の夜泣き、ひきつけなどは疳の虫(カンノムシ)と言われる興奮症状に用いられてきました。
現在では抑肝散は小児に限らず神経の高ぶりを伴う病態に使用されています。自律神経失調症の漢方(4.方剤解説2)に本方の適応症状をまとめています。過換気症候群の漢方(2.緩解期治療)も見てください。
最近の応用例は「ちょっと一言」を見てください。
3.子母同服(シボドウフク:患児と母親に共に服用させる)

抑肝散の原典には子母同服という用法指示があります。患児の治療薬を母にも服用させることです。
図1のように子どもの疳の虫に悩むお母さんは不安やいらだちを感じます。この母親のいらだちが子どもの疳の虫症状の誘因になります。
このような子母の関係を踏まえて双方の「こころ」を和らげる抑肝散を患児と母親に服用させました。
子母同服は約500年前の古典の記載ですが、患者と保護者の精神状態の関係に着目した用法指示です。
なお子母同服を拡張して患児と母や父に異なる方剤を用いることも行われています。現代の介護医療でも活用できる漢方の智慧です。
4.抑肝散の配合生薬

抑肝散は、柴胡(サイコ)を含む7生薬からなります(図2)。
方剤名は散剤ですが、生薬末を煎じて服用されてきました。
本方の主な配合生薬を図3に示しました。

図3上段の釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡が抑肝散の適応となる神経の高ぶり、興奮、いらだち、怒りの軽減に関与し、それを支援するために血流を調える下段の2生薬が寄与しています。
熄風(ソクフウ)は、めまい、のぼせ、いらだち、眼の充血、頭痛、痙攣などを鎮める薬能です。
5.抑肝散の関連方剤
5.1) 抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)は陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を抑肝散に加えた方剤です。抑肝散の適応病態に吐き気、胃もたれ、膨満感が加わった時に用いられます。
脳梗塞と脳出血の漢方(1.後遺症)や婦人更年期障碍の漢方(11.不眠)も参照してください。
5.2) 加味逍遙散(カミショウヨウサン)は抑肝散と同様に自律神経失調症の不定愁訴に用いられる柴胡配合剤です。
加味逍遙散は、冷えのぼせなど愁訴が多彩で、主訴が変化する病態に用いられます(図4)。
抑肝散は神経の高ぶり、怒り、興奮、不眠に適します。

加味逍遙散と抑肝散に関しては、男性更年期障碍の漢方(2.いらだち、気うつ)でも解説しています。

抑肝散の適応拡大
医療用の抑肝散製剤は、神経の高ぶりを指標にして、
・認知症の行動心理症状(BPSD)の怒り、不穏行動、
・外科手術後のせん妄(一時的な錯乱による危険行動)
を鎮める目的で活用されています。
認知症の漢方(3.アルツハイマー型認知症)や
がんの漢方(3.術後の諸症状)を参照してください。
(2020年10月29日公開)
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