病気の悩みを漢方で

１．緊張型頭痛に用いられる主な生薬と方剤

　緊張型頭痛は､ストレスや姿勢の悪さが関係し､頭の周りや肩､首筋から背中の筋肉がこる頭痛です。しめつけられるように痛みます。
　予防のためには筋肉の緊張と疲労を緩和することです。「ちょっと一言」を見てください。

　緊張型頭痛には､以下のような漢方病理を調整する生薬を含む方剤が用いられます（図１）。

２．高血圧傾向に伴う緊張型頭痛･･･気逆や気滞の関与

2.1）大柴胡湯（ﾀﾞｲｻｲｺﾄｳ）は､メタボ肥満傾向で､上腹部・下腹部 の膨満感があり首筋や肩こりを伴う緊張型頭痛に適します。

2.2）柴胡加竜骨牡蛎湯（ｻｲｺｶﾘｭｳｺﾂﾎﾞﾚｲﾄｳ）は､大柴胡湯の適用より精神神経症状（抑うつ､いらだち､動悸､不安､不眠）があり肩こりを伴う緊張型頭痛に適します。
　両方剤に関しては､動悸の漢方（２）を参照してください。

2.3）釣藤散（ﾁｮｳﾄｳｻﾝ）は､片頭痛にも用いられますが､高血圧傾向の緊張型頭痛にも適します。のぼせ､めまい､目の充血､肩こりを伴い､気むずかしい傾向の人に適します。
脳梗塞と脳出血の漢方（１）やめまいの漢方（３）を参照してください。
　本方は､軽度から中等度の晩発性認知症に伴う緊張型頭痛に有効であり､認知症患者の鎮痛薬乱用を予防する上で有用であることが報告されています。

３．月経異常に関連する緊張型頭痛･･･瘀血（ｵｹﾂ）の関与

　月経不順を伴う緊張型頭痛の治療では､
　・冷え症傾向には当帰（ﾄｳｷ）を､
　・のぼせ傾向には牡丹皮（ﾎﾞﾀﾝﾋﾟ）を含む活血剤（ｶｯｹﾂｻﾞｲ）が用いられます。
　婦人更年期障碍の漢方（10）を参照してください。

3.1）桂枝茯苓丸（ｹｲｼﾌﾞｸﾘｮｳｶﾞﾝ）は､高血圧傾向の婦人更年期障碍に伴う緊張型頭痛に適します。本方は牡丹皮を含みます。

3.2）加味逍遙散（ｶﾐｼｮｳﾖｳｻﾝ）は､気分のむらがあり､冷えのぼせ､めまい､動悸など多愁訴の婦人更年期障碍に伴う緊張型頭痛に適します。本方は牡丹皮と当帰を含みます。

3.3）当帰芍薬散（ﾄｳｷｼｬｸﾔｸｻﾝ）は､冷え症､顔色不良､貧血・低血圧傾向の血行不全に伴う婦人の緊張型頭痛に適します。本方は当帰を含みます。

４．緊張型頭痛に用いられるその他の方剤

4.1）抑肝散加陳皮半夏（ﾖｸｶﾝｻﾝｶﾁﾝﾋﾟﾊﾝｹﾞ）は眼の痛み､いらだち､背中の張り､不眠を伴う緊張型頭痛に用いられます。
　関連する釣藤散（ﾁｮｳﾄｳｻﾝ）との比較は脳梗塞と脳出血の漢方（１）を参照してください。

4.2）呉茱萸湯（ｺﾞｼｭﾕﾄｳ）は手足の冷えと吐き気を伴う激しい頭痛に適します。
　本方は､片頭痛に頻用されますが､肩がこる緊張型頭痛にも用いられます。
片頭痛の漢方を参照してください。

4.3）葛根湯（ｶｯｺﾝﾄｳ）は肩こりや首筋のこりを伴う感冒初期に用いられる方剤です。感冒以外の慢性の肩首筋のこり､頸肩腕症候群（肩関節や上腕の痛み）を伴う緊張型頭痛にも用いられます。
　また副鼻腔炎による項背部のこわばりを伴う頭痛には葛根湯加川芎辛夷（ｶｯｺﾝﾄｳｶｾﾝｷｭｳｼﾝｲ）が適します。