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漢方薬名の意味

(35)補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

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1.補中益気湯(ホチュウエッキトウ)の意味:を補い、を益す

 補中益気湯補中(おなか:胃腸機能)を補う薬能を、益気気虚(キキョ:生命維持活動エネルギーの不足)を益すという薬能です。

 方剤名は、胃腸の働きが衰えて生命維持活動(体力)が低下した虚弱状態気虚)を補う補気剤(ホキザイ)であることを意味しています。

2.補中益気湯の適応:胃腸虚弱に伴う虚弱状態

 補中益気湯は、いわゆる元気のない状態に用いられます。疲れやすい倦怠感だるさ、根気が続かない、夏ばて、かぜを引きやすく長引く、病中病後や術後の虚弱状態に適します(図1)。
 声に張りがない、眼に力がない、などが投薬目標になります。

 補中益気湯に関しては、疲労感(2)フレイル(2)も参照してください。

 医療用の補中益気湯製剤病中病後の体力低下という漢方独自の適応領域を担っています。がん(1)COPDアトピー性皮膚炎(3)を参照してください。

3.補中益気湯の配合生薬

補中益気湯(10味)の主な配合生薬を図2に示します。

 人参(ニンジン)と黄耆(オウギ)は補中益気湯の基軸になる補気薬です。黄耆が主薬だと考えられています。
 黄耆柴胡(サイコ)と升麻(ショウマ)は気虚が進展した中気下陥(チュウキカカン)を引き上げる昇提薬(ショウテイヤク)です。中気下陥は、気力減退筋緊張低下内臓下垂だるさを呈する病態です。やせと栄養失調(3)も参照してください。

4.補中益気湯に関連する補剤(ホザイ)

(リックンシトウ:8味)は補中益気湯の6生薬を含みます。補気剤四君子湯(シクンシトウ:6味)に化痰薬陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を加味した補気化痰剤(ホキケタンザイ)です(図3)。

 六君子湯は、食欲不振、食後の胃もたれ吐き気に適します。機能性ディスペプシアが本方の特徴的な適応領域です。機能性ディスペプシアを参照してください。

補中益気湯は疲労倦怠感だるさ易感染性に適します。長引くかぜによる体力低下状態は本方の特徴的な適応領域です。かぜ(2)を参照してください。

 両方剤は内蔵平滑筋の弛緩病態に適しますが、作用の方向に相違があります。
 ・六君子湯は、胃気上逆(イキジョウギャク)による吐き気を下に向かわせる化痰降逆薬(ケタンコウギャクヤク)の半夏(ハンゲ)を含みます。
 ・補中益気湯は、だるさ(中気下陥)を上に引き上げる昇提薬黄耆柴胡升麻を含みます。
 補中益気湯六君子湯は、疲労(2)でも比較しています。

(ショウケンチュウトウ)は、腹痛疝痛)、腹部膨満感便通異常を軽減する桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ:図4の黄緑で囲んだ5生薬)に膠飴(コウイ:補中緩急)を加えた方剤です。

 小建中湯は、補中益気湯と同様に、虚弱者(虚労)の倦怠感に用いられます。人参を含まない補気剤です。
 本方は芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)を含み筋緊張性の腹痛に適します。一方、補中益気湯の適応は筋弛緩傾向の病態です。両方剤は、フレイル(2)でも比較しています。

本方と関連する黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)は、共に甘くて服用しやすいので幼児や小児に適します。建中湯類チックを参照してください。

(セイショエッキトウ)は、補中益気湯夏やせや熱中症の倦怠感食欲不振下痢に適するように改変した方剤です。
 本方は発汗後の脱水傾向よる口渴手足のほてりを潤す生脈散(ショウミャクサン:人参麦門冬 バクモンドウ、五味子 ゴミシ)を含みます。
 本方と補中益気湯との比較は、夏やせを参照してください。

(ジュウゼンタイホトウ)は、補気剤四君子湯(4味)と補血剤四物湯(シモツトウ)と黄耆桂皮を含む補気補血剤(ホキホケツザイ)です(図5)。
十全大補湯疲労感(3)を参照してください。

 両方剤は共に疲労倦怠感に用いられますが、十全大補湯冷え顔色不良皮膚乾燥血虚津液不足 シンエキフソク)傾向が補中益気湯より顕著です。
 十全大補湯は、傷の治りが遅い状態を促進する目的で褥瘡(ジョクソウ:床ずれ)に使用されています。
 両方剤はフレイル(3)で比較しています。

ちょっと一言:(トピックス)

虚弱状態は補中益気湯を中心に考える

 補中益気湯は、胃腸虚弱で疲労倦怠感や筋肉が弛緩しただるさを伴う虚弱状態に用いられる第一選択薬です。
 症状に応じて以下の方剤と使い分けます。
 ・食欲不振胃もたれ吐き気があれば六君子湯(リックンシトウ)、
 ・顔色不良など貧血傾向があれば十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)、
 ・不眠不安抑うつ感があれば加味帰脾湯(カミキヒトウ)。
 ・腹痛腹部膨満感便通異常があれば小建中湯(ショウケンチュウトウ)。

(2022年11月7日 改訂公開)


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