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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

認知症の漢方

(1)基礎知識
(2)脳血管性認知症
(3)アルツハイマー型認知症

1.神経変性性認知症の概要

 アルツハイマー型認知症はレビー小体型認知症と共に神経変性性認知症に分類されます。これらは脳に異常なタンパク質が溜まり脳神経細胞が変性障害されることによって発症する認知症です(図1)。

 これらの認知症は、高年齢(老化)とともに発症します。さらに、糖尿病などの生活習慣病、うつ病、喫煙およびストレスなども発症の危険因子として関与します。

2.軽度認知障害の早期発見

 図1に記した軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)は、正常と認知症の中間段階です。認知症の前段階で、物忘れなど一部の認知機能が低下していますが日常生活はできる状態です。

軽度認知障害を早期に発見し、治療やケアを開始すれば、認知症の進行を遅らせることができます。

 家族や知人で以下のような予兆が見られたら、「物忘れ外来」や「神経科」、「神経内科」、「老年病内科」、「老年内科」などの専門医での受診を勧めてください。

3.神経変性性認知症治療の現状

 アルツハイマー型認知症は、記憶障害(忘れていることを忘れること)から始まり、判断力や理解力の低下が進行します。

 認知症を正常にもどす治療薬は、現時点ではありませんが、認知機能の低下の進行を遅らせる治療と行動・心理症状(BPSD)を軽減する介護が行われています。

 漢方医療でも認知症を根治させることは困難です。現状では、神経の高ぶり、怒り、興奮、暴力行為などのBPSDを軽減する漢方製剤が用いられています。

4.抑肝散(ヨクカンサン)・・・認知症のBPSD(神経の高ぶり・怒り)を軽減

 抑肝散(ヨクカンサン)は、神経がたかぶり、怒りやすく、性急でイライラする人の不眠症や神経症、更年期障害さらに小児の夜泣きや歯ぎしりに用いられてきました。

 このことに関しては、イライラ(3.柴胡と釣藤鈎と菊花)を参照してください。

 医療用の抑肝散製剤をアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症患者に応用したところ、興奮や攻撃性症状というBPSDが軽減することが多くの施設で認められています。

※(医療用)抑肝散(ヨクカンサン)製剤のエビデンス
(臨床研究)
 ・アルツハイマー型認知症患者のBPSD(興奮・攻撃性、異常行動)を改善。
 ・レビー小体型認知症患者の幻覚を軽減。
(基礎研究)
 ・セロトニン2A受容体抑制による抗幻覚作用

 なお、抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサン カ チンピハンゲ)も抑肝散と同じようなBPSD症状を軽減する効果のあることが報告されています。

 本方は、抑肝散陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を加えた方剤です。抑肝散と同様の症候で、やや胃腸虚弱傾向の者に適するようです。

5.抑肝散(ヨクカンサン)の配合生薬と関連方剤

 抑肝散(ヨクカンサン)は釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡(サイコ)を含む7種の生薬からなる方剤です。

 釣藤鈎(チョウトウコウ)はカギカズラという植物の「とげ・かぎ(鈎・鉤)」から調製される生薬です。頭痛、めまい、耳鳴りなどに用いられます。

 抑肝散(ヨクカンサン)は釣藤鈎(チョウトウコウ)を配合する点で、脳血管性認知症に用いられる釣藤散(チョウトウサン)と類似します(図4)。

 抑肝散は、怒りやいらだちなど神経の高ぶりの顕著な場合に適し、
釣藤散は、高血圧・のぼせ、頭痛・めまいを伴う脳血管性認知症に適します。

6.認知症に用いられるその他の漢方製剤

 軽度認知障害(MCI)や認知症には、釣藤散(チョウトウサン)も用いられます。
また、気分が落ち込み、意欲が低下する場合には以下のような方剤も適応になります。
 ・精神不安、不眠症、疲労感のある場合は加味帰脾湯(カミキヒトウ)、
 ・精神不安、動悸、不眠のある場合は柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)、
 ・精神不安、不眠症、胃腸虚弱のある場合は加味温胆湯(カミウンタントウ)、
も適応になります。

 多様な症状を先生に伝えて相談してください。

 釣藤散に関しては、認知症の漢方(2.脳血管性認知症)を参照してください。
 加味帰脾湯に関しては、疲労感の漢方(4.ストレスと疲労感)を参照してください。
 柴胡加竜骨牡蛎湯に関しては、高血圧(4.動悸)を参照してください。

~ちょっと一言:神経変性性認知症の進行を遅らせる生活習慣

 認知症の進行を遅らせるためには、有酸素運動と、知的な活動と社会交流を継続することです(図1)

 有酸素運動は、酸素を取り込みながら行う持続的な運動です。歩く、ジョギング、水泳などを1回に20~60分、週3-5回程度を体調と相談しながら無理のない範囲で継続してください。この運動は生活習慣病の予防にもなります。

 知的な活動社会交流は、家に閉じこもらず生活に変化と刺激を加えることです。例えば、好奇心をもって公開講座などに参加し、聞いてきた内容を家族の人に説明したり、友人に電話やメールするとよいでしょう。

 このように、身だしなみを調えて外出し、話しを聞いて脳に適度の刺激を入れ、それをまとめて話す・書く、という一連の刺激がいいのです。このような工夫を継続してください。

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