漢方を知る

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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

排尿異常の漢方

(1)前立腺肥大症
(2)過活動膀胱 (3)尿路結石

1.おしっこの悩みの漢方相談

 おしっこの悩み(排尿異常)には、男性も女性も悩みます。排尿異常には、排尿の時間がかかる(排尿困難)、排尿後にまだ尿が残っている感じがする(残尿感)、行ったばかりなのにすぐ行きたくなる(頻尿)、急に尿意をもよおし、もれそうで我慢できない(尿意切迫感)、トイレまでがまんできずもれてしまうことがある(尿もれ、尿失禁)、など多様です。

 ここでは、中高年男性の前立腺肥大による排尿異常(排尿困難や残尿感、夜間頻尿)に用いられる漢方製剤を整理します。

2.排尿の仕組み(膀胱と尿道の筋の収縮と弛緩)

 膀胱に蓄えられた尿は一定の量に達すると意識的に排尿します。そのとき膀胱は収縮し尿を押しだし、膀胱出口と前立腺と、尿道の筋肉がゆるんで(弛緩して)排尿します(図1)。

 これらは主に自律神経で調整されています。副交感神経が働き、交感神経がおさえられると尿がでますが、この反対では尿が出にくくなります。  なお尿道の括約筋は自分の意志で収縮させることが可能なので尿もれを防ぐことができます。

3.前立腺肥大症による排尿困難

 前立腺は男性のみに存在し精液をつくる生殖器です。膀胱の真下にあり尿道をとり囲んでいます(図1)。 

 中年以降に前立腺が肥大すると尿道を圧迫して排尿を障害します。これが前立腺肥大症です。主な症状は、
 ・尿を出したくでもなかなか出ない(排尿困難)、
 ・尿の勢いが弱く、尿線が分かれて出る、排尿の途中で尿が途切れる(尿勢低下)、
 ・排尿後に尿が残っている感じがする(残尿感)
 ・排尿後に下着をつけると尿がたらたらっともれて下着が汚れる(排尿後尿滴下)
  ・トイレが近い(頻尿・・・排尿回数が8回以上、とくに夜間の回数が多い)、
などがあります。

4.八味地黄丸(ハチミジオウガン)・・・前立腺肥大の排尿困難に用いられる基本方剤

 排尿困難や尿勢低下や夜間頻尿などに悩む中高年男性は「疲れやすく、意欲が低下し、腰や四肢が冷えやすく、だるく、しびれ、性欲の減退」などを伴っています。

 このような全身の不調と排尿の異常に用いられる基本方剤が、八味地黄丸(ハチミジオウガン)です。

 上記の排尿異常以外の症状の中で、加齢に伴う全身と下半身の虚弱症状が、腎虚(ジンキョ)です。八味地黄丸は、腎虚(ジンキョ)を補う補腎剤(ホジンザイ)の基本方剤です。

 腎虚は、生殖泌尿器系の機能低下を伴います。 そのため八味地黄丸は、男性不妊や女性の月経不順にも用いられます。不妊(2)男性不妊 や 血の道症(5)月経不順(まとめ)を参照してください。

 なお腎虚(ジンキョ)に関しては、総論(6)漢方薬局における診断(4.五臓)にも解説しています。

5.八味地黄丸(ハチミジオウガン)と関連方剤の配合生薬

 図2の上部の8生薬が八味地黄丸の配合生薬です。とくに地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク )と桂皮(ケイヒ)と炮附子(ホウブシ)が主要な生薬です。

 八味地黄丸の8生薬に牛膝(ゴシツ)と車前子(シャゼンシ)を加えた方剤が牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)です。

 牛車腎気丸八味地黄丸と同じように前立腺肥大症に伴うおしっこの悩みに用いられています。下肢のしびれ感やむくみの顕著な時に適します。

6.清心蓮子飲(セイシンレンシイン)・・・胃腸虚弱者の排尿困難に

 清心蓮子飲(セイシンレンシイン)は、八味地黄丸と同様に排尿できず残尿感のある状態に用いられます。本方は、八味地黄丸を服用して胃もたれや食欲不振になるような日頃から胃腸虚弱傾向の人に適します。さらに心身の疲労で不眠やイラダチなどを伴う排尿異常にも用いられます。

 清心蓮子飲には、胃腸機能を調える人参黄耆(オウギ)が含まれています。さらに蓮肉(レンニク:ハスの種子)という心身の虚弱状態を改善する生薬を含んでいます。

7.猪苓湯(チョレイトウ)・・・排尿痛や着色尿を伴う排尿困難に

 猪苓湯(チョレイトウ)も泌尿器科領域でよく使われる漢方方剤です。本方は主に尿道炎や膀胱炎、尿路結石など炎症や痛みを伴うおしっこの悩み(排尿困難、排尿痛、残尿感)に用いられます。

 本方が適するのは尿が色づいている場合が多いようです。これが炎症の目安になり、着色尿と排尿時の痛みが八味地黄丸清心蓮子飲の適応病態との相違です。

~ちょっと一言:前立腺肥大症

 前立腺肥大症の排尿困難に用いる西洋薬には、排尿を促進する薬物と肥大した前立腺を縮小させる薬物があります。漢方製剤はこれらと併用されています。

 なお薬物治療を行っても、症状が改善しない場合や、腎機能障害などの合併症が起きた場合には手術も考えなければなりません。専門の先生と相談してください。

 なお、患部を冷やすことや長く座って尿道を圧迫することも好ましくありません。注意してください。


症状と漢方薬

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