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病気の悩みを漢方で

漢方薬名の意味

清暑益気湯(セイショエッキトウ)

1.清暑益気湯 (セイショエッキトウ)名の意味

 清暑益気湯清暑は、暑邪(ショジャ:暑熱)を清める(冷やす)薬能です。は「暑気あたり」や「暑気払い」といわれる夏の暑さのことです。
 益気は、暑邪暑熱)による気血(キケツ)津液(シンエキ)の機能低下を益すという本方の主な薬能です。気血津液は、消化吸収や滋養を含めて生命維持活動を担う機能です。気血水を参照してください。

 本方は補中益気湯(ホチュウエッキトウ)の6生薬(図1上段の人参と下段の5生薬)を含む関連方剤です。

 本方は、発汗による脱水後の口渴息切れを軽減する益気生津剤(エッキセイシンザイ)の生脈散(ショウミャクサン:図1灰色枠内の3生薬)を含みます(図2)。生津津液(シンエキ)の不足病態を補う薬能です。これが補中益気湯との相違点です。 

2.清暑益気湯の適応

 清暑益気湯は、高温多湿による熱中症後の暑気あたり夏ばて夏やせに用いられます。

 目標となる症状は、全身倦怠だるさ発汗後の口渴食欲不振下痢です。

 清暑益気湯の応用例:

夏ばてを軽減(白虎加人参湯と併用)。

漢方の臨床, 2012; 59: 677-683


めまいを軽減(真武湯と併用)。

日東医誌., 2019; 70: 65-71


・気管支喘息の長期管理薬として咽喉不快感動悸自汗を軽減。

日東医誌., 2004; 55: 811-815


3.清暑益気湯の関連方剤

 熱中症以降の夏ばて夏やせ症状に用いられる清暑益気湯の主な関連方剤を考えます(図3)。熱中症と夏ばて(1)を参照してください。熱中症は、漢方薬名の意味:白虎加人参湯を参照してください。


 (リックンシトウ)は、食欲不振胃もたれ吐き気を軽減する方剤です(日東医誌., 2012; 63: 191-195)。機能性ディスペプシアを参照してください。

 本方は、胃腸虚弱を改善する補気剤四君子湯(シクンシトウ:図4の●印を付した6生薬)に、吐き気を軽減する化痰薬(ケタンヤク)の陳皮(チンピ)と半夏(ハンゲ)を加味した補気化痰剤です。漢方薬名の意味:六君子湯を参照してください。
 化痰薬を含むことが清暑益気湯との相違点です。夏ばて(2)を参照してください。


は、病中病後や術後の虚弱状態に用いられています(日本静脈経腸栄養学会雑誌, 2017; 32: 955-959)。疲労感(2)を参照してください。
 本方は、夏ばてが進んで疲れやすい倦怠感だるさかぜを引きやすく長引く内臓下垂に適します。声に張りがない眼に力がないなどが投薬目標になります。フレイル(2)漢方薬名の意味:補中益気湯を参照してください。

 本方は、昇提薬(ショウテイヤク:図5の※印)の柴胡(サイコ)と升麻(ショウマ)と黄耆(オウギ)でだるさ内臓下垂を軽減することが清暑益気湯との相違点です。

(ジュウゼンタイホトウ)は、補中益気湯の適応病態から虚弱状態が進み栄養状態が悪く顔色不良皮膚乾燥傾向になった病態に適します。
 疲労感(3)漢方薬名の意味:十全大補湯を参照してください。
 本方は、補血剤(ホケツザイ)の四物湯(シモツトウ:図6を付した4生薬)を含むことが清暑益気湯との相違点です。
 本方と清暑益気湯は、夏ばて(2)で比較しています。


(ケイヒトウ)は、胃腸虚弱者消化不良による慢性下痢に適した補気消食止瀉剤(ホキショウショクシシャザイ)です。
 本方は、消食薬(ショウショクヤク≒消化薬)の山楂子(サンザシ)と、補脾止瀉薬蓮肉(レンニク)や山薬(サンヤク)を含む四君子湯の関連方剤です(図7)。漢方薬名の意味:啓脾湯を参照してください。本方と清暑益気湯は、霍乱で比較しています。

 夏ばて夏やせ治療において、清暑益気湯に関連する人参配合剤は、以下のように使い分けられます。

)発汗後の口渴がある軽い熱中症と夏ばてには、
食欲不振が強く、吐き気胃もたれを伴えば、
軟便下痢冷房下痢)、腹痛があれば、人参湯

)手足のだるさ倦怠感力のない声になれば、
栄養不足顔色が悪くなった長引く夏ばてには、
消化不良を伴う慢性下痢には、の適応になります。

ちょっと一言:(トピックス)

清暑益気湯の口訣(クケツ)(引用抜粋)

夏痩せ夏負け疰夏 シュカ)の専剤である。暑熱により気虚津液の損傷を起こした食欲不振口渴尿量減少倦怠感心煩息切れに用いる。(髙山宏世)

補中益気湯生脈散の合方に相当する。夏期の発汗による脱水疲労の病態(気津両虚)に適する気陰双補剤。(森雄材)

暑気による消化機能低下(脾虚)や発汗後の脱水状態(津液損傷)に伴う食欲不振口渴下痢尿量減少に用いる。夏季以外でも使用可能。(三浦於菟)

2025年5月12日 改訂公開


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病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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