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症状と漢方薬

熱中症と夏ばての漢方

(1)熱感と口渴
(2)高齢者

1.高齢者の熱中症と夏ばて

 猛暑が続き高齢者が住居内で発症する熱中症と夏ばてが注目されています。暑さや水分不足がじわじわと蓄積して発症する夏ばてです。

 高齢者に熱中症と夏ばてが多い理由を図1にまとめました。


 図11)-3)に注意することが予防の基本ですが、高齢者の心情や生活習慣を変更するのは困難です。そこで独居されている高齢者には猛暑の時期には身内や周囲の人の声かけが必要になります。

1)エアコンを日中だけでなく、良質の睡眠を得るため夜も使用しましょう。
2)水分補給を習慣化しましょう。目標:食事以外に1.2 L。
  (朝起きた時、朝食時、10時、昼食時、15時、夕食時、風呂の前後、睡眠前)
  (高齢者に馴染みのある味噌汁、梅昆布茶、冷やし水飴、すいか、桃など)
3)たんぱく質を筋肉を維持して転倒を防止するために食べましょう。
  (高齢者に馴染みのある冷やし茶碗蒸し、卵豆腐、胡麻豆腐など)

2.高齢者の熱中症や夏ばての漢方医療の概要

 漢方医療は熱中症段階と夏ばて段階に分けて考えることを前回紹介しました。今回は胃腸虚弱傾向の高齢者に適した方剤を整理します(図2)。


3.高齢者の熱中症段階のほてり、口渴

 熱中症の熱感と口渴に白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)が頻用されることを前回紹介しました。
 高齢者の脱水によるほてり口渴には竹葉石膏湯(チクヨウセッコウトウ:図3)が適します。本方は白虎加人参湯の適応に類似しますが、より体力が低下し疲労感や皮膚乾燥傾向を伴う人に適します。


4.高齢者の夏ばてや夏やせに人参剤

4.1)六君子湯(リックンシトウ)は高齢者に多い少食や食欲不振を改善して食事療法を補完して夏ばてや夏やせの予防治療に寄与します。
 本方は食欲亢進ホルモンのグレインを介して食欲を高めることが明らかにされています。漢方薬名の意味:六君子湯を参照してください。

4.2)清暑益気湯(セイショエッキトウ)は高温多湿による熱中症段階から疲労倦怠感を伴う夏ばて状態に頻用されます。前回を参照してください。

 本方は虚弱に用いられる補中益気湯(ホチュウエッキトウ)を夏ばてに適するように改変した方剤です。口渴を潤す生脈散(ショウミャクサン:人参五味子ゴミシ、麦門冬 バクモンドウ)を含む参耆剤(ジンギザイ)です。漢方薬名の意味:清暑益気湯を参照してください。

4.3)十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)は清暑益気湯の適応病態に加えて栄養不足傾向が進み顔色不良、皮膚乾燥傾向を伴う夏ばてや夏やせに適した参耆剤です。補血剤(ホケツザイ)の四物湯(シモツトウ)を含みます。漢方薬名の意味:十全大補湯を参照してください。

 関連する炙甘草湯(シャカンゾウトウ)は動悸息切れを伴う夏ばてに適します。

 3方剤の使い分けの目安を図4にまとめました。

5.高齢者の便秘を改善する方剤

 夏ばて状態の高齢者は水分不足のため便秘傾向になります。便秘の改善は食欲不振の軽減に有用です。

 小建中湯(ショウケンチュウトウ)は胃腸が弱く疲労しやすく、顔色がさえず、夜泣きや腹痛、兎の糞のようなコロコロ便の便秘を伴う時に用いられます。関連する黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)も適します。漢方薬名の意味:建中湯類夏やせを参照してください。

 小建中湯瀉下薬大黄(ダイオウ)を含まない緩下剤です。効果が不十分な場合は、大黄を含む桂枝加芍薬大黄湯(ケイシカショクヤクダイオウトウ)や潤腸湯(ジュンチョウトウ)を投与します。これらの大黄剤は効き過ぎて下痢便にならないように服用量を自分で調整してください。便秘(4.高齢者)を参照してください。

6.熱中症・夏ばて予防の薬食同源素材

6.1)ナガイモ、ヤマノイモの食用部位は、山薬(サンヤク:補脾補腎生津益肺)の原料です。
山薬は食欲不振、軟便、倦怠感、下肢の脱力感などに用いられています。

 ナガイモはミネラル、ビタミンB群やCを含みます。短冊切りにしたナガイモのポン酢あえ、冷やしとろろ、マグロの山かけなどで食べ るとよいでしょう。

 

6.2)クルミの食用部位は、胡桃肉(コトウニク:補腎強腰潤腸通便)の原料です。胡桃肉は高齢者の足腰の衰えや津液不足による便秘 に用いられています。

 

 クルミはたんぱく質やオメガ3脂肪酸リフェノールを含みます。クルミの佃煮や「くるみもなか」などお菓子として食べるとよいでしょう。

ちょっと一言:(トピックス)

高齢者の夏ばて

 高齢者の夏ばて治療の基本は、水分栄養休養です。漢方製剤はこれらの養生を支えます。
 その第一歩は食欲を増し消化吸収機能を調える六君子湯です。便通を調えることも重要です。小建中湯の適応です。
 ほてり、口渴、疲労倦怠感、だるさには清暑益気湯が適します。さらに虚弱が進めば十全大補湯の適応になります。

(2021年7月30日 改訂公開)


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