漢方を知る

きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。

病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

1.アトピー性皮膚炎治療の概要

 アトピー性皮膚炎は皮膚の病変だけでなく免疫異常・アレルギーなどの内因虚弱状態、易感染性いらだち、不安、不満などが絡む全身疾患です(図1)。


 現代科学医療の標準的な治療概要は、
1)生活指導(抗原を回避する食事とスキンケア)で皮膚バリア機能障碍を軽減させることと並行して、
2)皮疹治療ステロイド・タクロリムス軟膏)でかゆみと炎症を抑制して寛解に導きそれを維持することが目標です。

 新たな治療薬が開発されました。2型ヘルパー T細胞(Th2)が関与する炎症やかゆみを抑制する新しい機序の注射薬と外用薬が使用できるようになりました。皮膚科専門医にご相談ください。

2.アトピー性皮膚炎の漢方治療の概要

 アトピー性皮膚炎に対する現代の漢方治療は、生活指導をしながら西洋薬による皮疹治療に加えて漢方方剤を併用します(図2)。


 アトピー性皮膚炎の漢方治療は皮疹の性状と全身病態を診て治療を進めます。
1)皮疹の対症療法的な治療を標治(ヒョウチ)といい、
2)内因や全身病態を調整する治療を本治(ホンチ)といいます。

 図2に示すように標治には皮疹の病態に応じて消風散(ショウフウサン)や柴胡清肝湯(サイコセイカントウ 15味)が用いられます。さらに病態に応じて清熱剤排膿剤などを併用します。今回は標治を概説し、第2回目に具体的な方剤を解説します。 

 本治では胃腸虚弱易感染性に加えて、いらだち、神経過敏不安抑うつ感など心身症傾向の全身病態に注目して方剤を選びます。
 本治に関しては第3-4回目で解説します。

3.漢方の皮疹治療(標治

3.1) 外邪(ガイジャ)による皮疹性状に応じた治療

 漢方皮疹治療は体外から侵襲する風邪(フウジャ)や湿邪(シツジャ)などの外邪を消散させることを作業仮説として生薬を選びます。
 その具体例を消風散の配合生薬を例にして図3に示しました。


 風邪(フウジャ)によるかゆみや乾燥病態には祛風薬(キョフウヤク)の防風(ボウフウ)や清熱祛風薬牛蒡子(ゴボウシ)の適応となると考えるわけです。
 湿邪(シツジャ)による湿潤皮疹は消風散の主な適応病態です。
 燥邪(ソウジャ)による乾燥皮疹の併存にも消風散は対応できます。


3.2)皮疹性状の経時変化に応じた治療

 アトピー性皮膚炎の皮疹病態の経時変化に応じて使用する主な方剤を図4に示しました。


 図4漢方湿疹三角形に応じて使用する方剤は湿疹・皮膚炎と同様です。湿疹・皮膚炎の漢方の4回の稿を参照してください。

 図4一貫堂方(イッカンドウホウ)は温清飲(ウンセイイン)関連方剤の柴胡清肝湯荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ 17味)です。

 アトピー性皮膚炎の原因や悪化要因や症状は人それぞれに異なります。経時的に使い分ける標治の皮疹治療剤と本治で用いる全身病態を調整する方剤を適切に組み合わせながら治療します。
 このような考え方を踏まえて次回以降に解説します。

ちょっと一言:(トピックス)

ステロイド薬のプロアクティブ治療

 プロアクティブ治療は症状を抑制するために用いたステロイド薬を再発を予防するためにも使用する治療です。 

 適切な強さのステロイド軟膏を適切に塗布する方法を皮膚科の先生に指導してもらってください。

 漢方製剤ステロイド薬と併用しながら脱ステロイド薬を目指します。

(2021年3月24日 公開)


病気の悩みを漢方で

谿 忠人 先生

大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了

  • 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
  • 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
  • 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
  • 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
  • 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
  • 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
  • 大阪大谷大学名誉教授。
  • 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
谿 忠人先生のプロフィール
谿 忠人先生

漢方医療とは

症状と漢方薬

(あ行)
RSウイルス
足腰の衰え(虚弱)
足のむくみ
アトピー性皮膚炎
アルコール性肝炎
アルツハイマー型認知症
アレルギー性鼻炎
胃食道逆流症
胃腸かぜ
胃腸虚弱
胃腸虚弱(高齢者)
胃腸虚弱(フレイル)
胃痛
胃もたれ
意欲の低下
意欲低下(虚弱)
イライラ
イライラ(産後)
インポテンツ
ウイルス肝炎
うつ感
運動器症候群
円形脱毛症
おしっこの悩み(前立腺肥大)
(か行)
顔色不良(虚弱)
過活動膀胱
過換気症候群(過呼吸)
霍乱
かぜ(風邪)
肩・首筋のこり
過敏性腸症候群
下部尿路症状
花粉症
がん
かんしゃく
関節痛(冷え症)
関節リウマチ
感染性胃腸炎
乾燥肌
肝臓病
気うつ
気うつ(産後)
気管支炎
機能性ディスペプシア
虚労
起立性調節障碍
緊張型頭痛
筋肉減少症
軽度認知障碍
月経周期の乱れ
月経痛(冷え症)
月経痛(冷えのぼせ症)
月経不順(周期の長短)
月経不順(血の道症)
月経前症候群(PMS)
げっぷ
下痢
下痢(ゲンノショウコ)
高血圧
高血圧傾向(虚弱)
高血糖
好酸球性副鼻腔炎
口内炎
後鼻漏
高齢者
五十肩
呼吸困難(COPD)
こじれた咳(感冒)
骨粗鬆症
子どもがほしい
こむら返り
コロナ後遺症
(さ行)
サルコペニア
産後の回復不全
残尿感(前立腺肥大)
CFS(慢性疲労症候群)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
湿疹
脂肪肝
しもやけ
しゃっくり
主婦湿疹
暑気あたり
女性不妊
自律神経失調症
脂漏性湿疹
尋常性乾癬
尋常性ざ瘡
頭重感
頭痛
頭痛(しめつける痛み)
頭痛(低気圧)
頭痛(婦人更年期障碍)
ストレス胃
生理痛(冷え症)
生理痛(冷えのぼせ症)
生理不順(血の道症)
精力低下(男性)
せき(咳)
咳(こじれた感冒)
脊柱管狭窄症
喘息
喘息(発作)
喘息(寛解)
前立腺肥大
GERD
(た行)
たん(痰)
男性更年期障碍
男性不妊
蓄膿症
血の道症
チック
痛風
手足口病
手足のしびれ(糖尿病)
低気圧頭痛
天気痛
動悸
凍瘡
糖尿病
(な行)
内臓脂肪症候群(糖尿病)
ながびく咳(感冒)
夏かぜ
NASH
夏バテ
夏やせ
2型糖尿病
にきび
尿意切迫
尿失禁
尿路結石
尿路不定愁訴
妊娠力をつけたい
認知症
脳血管性認知症
熱中症
脳梗塞と脳出血
のぼせ感
ノロウイルス下痢
(は行)
肺気腫(COPD)
排尿異常
鼻アレルギー
鼻かぜ
鼻づまり
鼻水
非アルコール性肝炎
冷え症
冷えのぼせ症
鼻炎
皮膚炎
皮膚瘙痒症
肥満
肥満(糖尿病)
疲労感
頻尿
PMS(月経前症候群)
不安定膀胱
プール熱
腹痛
副鼻腔炎
婦人更年期障碍
不眠
不眠(産後)
フレイル(虚弱)
ヘルパンギーナ
変形性膝関節症
片頭痛
便通異常
便秘
膀胱結石
(ま行)
マタニティー・ブルー
慢性胃炎
慢性気管支炎(COPD)
慢性の咳(COPD)
慢性疲労症候群(CFS)
慢性閉塞性肺疾患
むくみ(足のむくみ)
無月経
胸やけ
メタボ肥満
メタボリック・シンドローム(糖尿病)
めまい
めまい(婦人更年期障碍)
(や行)
夜間頻尿
やせと栄養失調
腰痛
抑うつ感
抑うつ感(虚弱)
夜泣き
(ら行)
冷房下痢
老年症候群
ロコモ

漢方薬名を選ぶ!

TOP