漢方を知る

きぐすり.com は、漢方薬、女性の健康、サプリメント、ハーブの情報を専門家がやさしく解説しています。

病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

1.標本同治(ヒョウホンドウチ):標治方剤本治方剤の併用

 アトピー性皮膚炎の漢方治療では、局所の証(皮疹の性状)と全身の証(発症や慢性化に関係する全身病態)を診ます。
 局所の証に対する治療を標治(ヒョウチ)、全身の証を調整する治療を本治(ホンチ)といいます。アトピー性皮膚炎(5)を参照してください。

 標本同治(ヒョウホンドウチ)は標治本治を同時に行うことです。一般的な標本同治図11)のように急性期は標治方剤のみで治療し、亜急性期以降に本治方剤を併用します(先標後本)。

 体力の低下が著しい場合は、図12)のように本治方剤で先に体力・回復力を整えてから標治方剤を併用する標本同治もあります(先本後標)。
 時には治療開始時から標本同治することもあります。

2.併用する時に考えること

漢方製剤を併用する時には、以下のことを考えます。

3.本治方剤に必要な生薬

 生命維持活動の低下を調整する本治で注目する生薬は、
 ・回復力を補う人参(ニンジン)や黄耆(オウギ)などの補気薬(ホキヤク)に加えて 
 ・長引く治療に対する抑うつ、いらだちを軽減する理気薬(リキヤク 図3)です。

 本治で頻用される理気薬柴胡(サイコ)です。本治方剤の基本となる補気剤補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は柴胡陳皮(チンピ)を含みます。

 陳皮補気化痰(ケタン)の薬能も有する理気薬です。食欲不振を軽減する本治に用いられる補気化痰剤六君子湯(リックンシトウ)に配合されています。

 川芎(センキュウ)は活血の薬能のある理気薬です。本治に用いられる抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)には、柴胡陳皮とともに配合されています。いらだち、怒り、不安、不満を伴う時に適します。

4.消風散(ショウフウサン)と併用される本治方剤

 消風散は湿潤が主体の皮疹の標治に頻用される方剤です。アトピー性皮膚炎(2)を参照してください。

 消風散標治に必要な薬能を備えていますが、
 ・正氣(生命維持活動と自然治癒力)の低下を補う補気薬
 ・長引く治療に対する不安、不満、抑うつ感を軽減する理気薬
の配合が十分ではありません(図4)。

 補中益気湯は、消風散補気を追加する本治に頻用されます。小児には甘くて服用しやすい黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)が適します。

 六君子湯は、消風散の連用時には地黄による食欲不振を軽減する考えから併用されます。

 抑肝散加陳皮半夏は、消風散理気を強化するために併用します。アトピー性皮膚炎(4)を参照してください。
 香砂六君子湯(コウシャリックンシトウ)も候補になります。理気剤香蘇散(コウソサン)と六君子湯を組み合わせた補気理気化痰剤です。

5.柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)と併用される本治方剤

 柴胡清肝湯一貫堂方 15味)は乾燥した苔癬化皮疹が主体ですが化膿皮疹も伴う慢性期状態の標治に適します。

 柴胡清肝湯標治本治に必要な薬能を備えていますが、回復力の維持や地黄の副作用を軽減する補気薬(ホキヤク)の配合が十分ではありません(図5)。

 補中益気湯柴胡清肝湯補気を追加する本治方剤として頻用されます。
 黄耆建中湯六君子湯も用いられます。アトピー性皮膚炎(3)を参照してください。

 柴胡清肝湯は炎症が慢性化し苔癬化した皮疹にも用いられます。その時には活血剤桂枝茯苓丸加薏苡仁(ケイシブクリョウガンカヨクイニン)が併用されます。
アトピー性皮膚炎(4)を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

併用の功罪を考える

併用すれば適応病態は広くなりますが、
・目的以外の薬味が多くなり効果が鈍り、
・生薬の重複による副作用のリスクが高まります。

併用する目的と配合生薬の重複を考慮しながら
併用方剤を適切に選ぶことが大切です。 

(2022年3月7日 公開)


症状と漢方薬

(あ行)
RSウイルス
足腰の衰え(虚弱)
足のむくみ
アトピー性皮膚炎
アルツハイマー型認知症
アレルギー性鼻炎
胃食道逆流症
胃腸かぜ
胃腸虚弱
胃腸虚弱(高齢者)
胃腸虚弱(フレイル)
胃痛
胃もたれ
意欲の低下
意欲低下(虚弱)
イライラ
イライラ(産後)
インポテンツ
うつ感
運動器症候群
円形脱毛症
おしっこの悩み(前立腺肥大)
(か行)
顔色不良(虚弱)
過活動膀胱
過換気症候群(過呼吸)
霍乱
かぜ(風邪)
肩・首筋のこり
過敏性腸症候群
下部尿路症状
花粉症
かんしゃく
関節痛(冷え症)
関節リウマチ
感染性胃腸炎
乾燥肌
がん
気うつ
気うつ(産後)
気管支炎
機能性ディスペプシア
虚労
起立性調節障碍
緊張型頭痛
筋肉減少症
軽度認知障碍
月経周期の乱れ
月経痛(冷え症)
月経痛(冷えのぼせ症)
月経不順(周期の長短)
月経不順(血の道症)
月経前症候群(PMS)
げっぷ
下痢
下痢(ゲンノショウコ)
高血圧
高血圧傾向(虚弱)
高血糖
好酸球性副鼻腔炎
口内炎
後鼻漏
高齢者
五十肩
呼吸困難(COPD)
こじれた咳(感冒)
骨粗鬆症
子どもがほしい
こむら返り
コロナ後遺症
(さ行)
サルコペニア
産後の回復不全
残尿感(前立腺肥大)
CFS(慢性疲労症候群)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
湿疹
しもやけ
しゃっくり
主婦湿疹
暑気あたり
女性不妊
自律神経失調症
脂漏性湿疹
尋常性乾癬
尋常性ざ瘡
頭重感
頭痛
頭痛(しめつける痛み)
頭痛(低気圧)
頭痛(婦人更年期障碍)
ストレス胃
生理痛(冷え症)
生理痛(冷えのぼせ症)
生理不順(血の道症)
精力低下(男性)
せき(咳)
咳(こじれた感冒)
脊柱管狭窄症
喘息
喘息(発作)
喘息(寛解)
前立腺肥大
GERD
(た行)
たん(痰)
男性更年期障碍
男性不妊
蓄膿症
血の道症
チック
痛風
手足口病
手足のしびれ(糖尿病)
低気圧頭痛
天気痛
動悸
凍瘡
糖尿病
(な行)
内臓脂肪症候群(糖尿病)
ながびく咳(感冒)
夏かぜ
夏バテ
夏やせ
2型糖尿病
にきび
尿意切迫
尿失禁
尿路結石
尿路不定愁訴
妊娠力をつけたい
認知症
脳血管性認知症
熱中症
脳梗塞と脳出血
のぼせ感
ノロウイルス下痢
(は行)
肺気腫(COPD)
排尿異常
鼻アレルギー
鼻かぜ
鼻づまり
鼻水
冷え症
冷えのぼせ症
鼻炎
皮膚炎
皮膚瘙痒症
肥満
肥満(糖尿病)
疲労感
頻尿
PMS(月経前症候群)
不安定膀胱
プール熱
腹痛
副鼻腔炎
婦人更年期障碍
不眠
不眠(産後)
フレイル(虚弱)
ヘルパンギーナ
変形性膝関節症
片頭痛
便通異常
便秘
膀胱結石
(ま行)
マタニティー・ブルー
慢性胃炎
慢性気管支炎(COPD)
慢性の咳(COPD)
慢性疲労症候群(CFS)
慢性閉塞性肺疾患
むくみ(足のむくみ)
無月経
胸やけ
メタボ肥満
メタボリック・シンドローム(糖尿病)
めまい
めまい(婦人更年期障碍)
(や行)
夜間頻尿
やせと栄養失調
腰痛
抑うつ感
抑うつ感(虚弱)
夜泣き
(ら行)
冷房下痢
老年症候群
ロコモ

漢方薬名を選ぶ!

TOP