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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

慢性疲労症候群の漢方

(1)基礎知識
(2)倦怠感

1.慢性疲労症候群(ME/CFS)の概要

 慢性疲労症候群(CFS)は、日常生活が著しく損なわれる疲労倦怠感を6ヶ月以上持続し再発を繰り返す症候群です。過労による単なる疲労ではなく、休息によっても改善しない病態です。
 CFSは筋痛性脳脊髄炎(ME)と関連することから、最近では筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と称されるようになりました。ME筋痛関節痛こわばり感に加えて全身倦怠感抑うついらだちなど精神神経症状を伴います。

 ME/CFSの原因は単一ではなく、ウイルス感染、免疫異常、過酸化病態、内分泌や代謝系の失調、ストレスや自律神経失調、虚弱病態などが考えられています。患者ごとに原因の比率が異なるため現れる症状は多様です(図1)。

 ME/CFSは、器質的病変が軽微(不明確)な不定愁訴の様相がありますから、対症療法が主体になります。症状軽減のために、ステロイド薬、睡眠導入剤、鎮痛剤、抗不安薬、ビタミン剤を用いながら、認知行動療法運動療法が併用されます。

 セルフメディケーション(自己管理治療)領域では、抗過酸化作用のあるビタミンCや血行を良くするビタミンEを配合した滋養強壮薬の適応になります。

2.ME/CFSの漢方医療の概要

 漢方医療は、愁訴に対応する医学的(病理学的)な病名を診断し難い不定愁訴に適します。自律神経失調症(1)を参照してください。

 不定愁訴の漢方治療では、精神神経症状を含めた全身病態を(キ)(ケツ)(スイ)の過不足など独自の病理観を想定して治療薬を選びます(図2)。
気血水津液)に関しては、気血水を参照してください。

3.ウイルス感染後のME/CFSに用いられる主な生薬

 ME/CFS微熱頭痛食欲不振を伴う倦怠感は、ウイルス感染後のSickness behavior意欲・行動変化)に相当すると考えられます(図1)。
 Sickness behaviorの病態は、漢方の少陽病(ショウヨウビョウ)に相当します。和解剤(ワカイザイ)の小柴胡湯(ショウサイコトウ)の適応になります。主な生薬は柴胡(サイコ)黄芩(オウゴン)人参(ニンジン)半夏(ハンゲ)です。かぜ(2)を参照してください。

 疲労倦怠感、だるさの顕著な病態に進んだ場合は、人参黄耆(オウギ)を主薬とする虚証用和解剤補中益気湯(ホチュウエッキトウ)が適します(図3)。コロナ後遺症(1)を参照してください。

4.ME/CFSの精神神経症状に用いられる主な生薬

 精神神経症状気滞(キタイ)や気逆(キギャク)が関与し、理気薬(リキヤク)の柴胡香附子(コウブシ)や降気薬(コウキヤク)の厚朴(コウボク)の適応になります。

 精神神経症状には心神不安(シンシンフアン)も関与します。心神不安気虚気滞による不安抑うつ意欲低下動悸不眠などを伴う病態です。竜骨(リュウコツ)や牡蛎(ボレイ)などの安神薬(アンシンヤク)の適応となります。
 体力の低下した虚証心神不安には、補血安神薬が用いられます(図4)。

5.ME/CFSの虚弱状態(虚労 キョロウ)に用いられる主な生薬

 ME/CFSの主症状の疲労倦怠感は、正氣(セイキ 生命維持活動)の低下した虚労に相当します。虚労に関しては虚労(1)を参照してください。

 胃腸虚弱の気虚(キキョ)には人参黄耆の適応になります。
 栄養不良、皮膚乾燥の血虚(ケッキョ)には熟地黄(ジュクジオウ)が頻用されます。これは補腎陰薬(ホジンインヤク)でもあります。

 新陳代謝が低下し冷えが顕著な腎陽虚(ジンヨウキョ)には附子(ブシ:補腎陽散寒止痛)の適応です。主な補腎薬図5に示します。

6.ME/CFSの多様な病態

 今回は、慢性疲労症候群(ME/CFS)に対する漢方医療の基礎的な考え方と主な生薬を概説しました。

 ME/CFSに関する臨床報告では、補中益気湯十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)が主体ですが、これら以外に多様な方剤が用いられています。
 この多様性は ME/CFSが病理の錯雑した病態であることを示唆しています。ME/CFSの多様な病態に対応する個々の方剤は、次回以降に解説します。

:(トピックス)

疲労倦怠感の非薬物療法

 薬局漢方では慢性疲労症候(ME/CFS)と確定する前から疲労倦怠感の治療が始まります。漢方製剤は非薬物療法と併用されます。

 生活習慣の見直し:野菜を重視した食材のバランス、睡眠、節酒
 ストレスの緩和の工夫:楽しく継続できる適度な運動
 考え方の見直し:焦らず社落ち込まずゆっくり治療する心構えを確認

 漢方製剤を1ヶ月程度服用しても日常生活が損なわれる疲労倦怠感が続けば、原因疾患の有無やME/CFSかどうかの診断を受けてください。

(2022年12月2日 改訂公開)


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