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病気の悩みを漢方で
1.胃腸虚弱(気虚)と疲労倦怠感
胃腸虚弱による消化吸収機能の低下(気虚 キキョ)は疲労倦怠感、だるさなどの原因になります。
今回は気虚に基づく疲労感に用いられる主な補気剤(図1)を解説します。
この3方剤はやせと栄養失調(2)でも解説しています。
2.補中益気湯(ホチュウエッキトウ)と関連方剤
2.1)補中益気湯は、胃腸の働きが衰えて手足がだるく筋肉の緊張が低下した状態(図2)を伴う疲労倦怠感に用いられます。こじれた時期のかぜや夏やせのだるさ、意欲低下に適します。
本方は補気薬の人参(ニンジン)と黄耆(オウギ)を含む参耆剤(ジンギザイ)です。
医療用の補中益気湯製剤は、病中病後の倦怠感を軽減する領域で活用されています。
COPDやがん(1)を参照してください。
2.2)清暑益気湯(セイショエッキトウ)は補中益気湯を夏ばて時の口渴を伴う疲労倦怠感に適するように改変された方剤です。熱中症と夏ばて(1)を参照してください。
3.六君子湯(リックンシトウ)と関連方剤
3.1)六君子湯は食欲がなく、食後の胃もたれ、吐き気を伴う疲労感に用いられる補気化痰剤(ホキケタンザイ)です。漢方薬名の意味:六君子湯を参照してください。
六君子湯は食欲不振、胃もたれ、吐き気、補中益気湯は倦怠感、だるさ、易感染性が主たる目標になります。
両方剤はフレイル(2)で比較しています。
3.2)半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)は六君子湯の適応病態でめまいや頭重感を伴う場合に適します。めまい(2)を参照してください。
3.3)人参湯(ニンジントウ)は六君子湯の適応病態より冷え症で軟便下痢を伴う場合に適します。
4.小建中湯(ショウケンチュウトウ)と関連方剤
4.1)小建中湯は腹痛、腹部膨満感、便通異常(便秘傾向)を伴う疲労感に用いられます。人参を含まない補気剤です。
本方は桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)に膠飴(コウイ 補中・緩急止痛)を加味した方剤です。過敏性腸症候群(1)を参照してください。
本方と補中益気湯は漢方薬名の意味:建中湯類で比較しています。
4.2)黄耆建中湯(オウギケンチュウトウ)は小建中湯に黄耆を加味した方剤です。小建中湯より疲労感や体力の低下が顕著な時に適します。本方は皮膚病巣の治癒が長引く時にも使用されます。アトピー性皮膚炎(3)を参照してください。
5.疲労感(胃腸虚弱)に用いられる3補気剤の使い分け
疲労感(胃腸虚弱)に用いられる3補気剤の使い分けの目安を図4にまとめました。
3方剤は以下の目安で使い分けます。
・補中益気湯:全身や手足のだるさ、易感染性、抑うつ傾向(内臓下垂傾向)
・六君子湯:食欲不振、食後の胃もたれ、吐き気(内臓下垂傾向)
・小建中湯:腹痛、便通異常(コロコロ便)(過敏性腸症候群様の平滑筋緊張)
胃腸虚弱による疲労倦怠感、食欲を高める。
ここでは胃腸虚弱に伴う疲労倦怠感を調整する補気剤を紹介しました。
疲労倦怠感や夏バテには豚肉やウナギがよいと言われます。このような脂っこい食材は、少食で胃もたれ傾向の人は食べる気になりません。
胃腸状態を整え食欲を高めるのが六君子湯の役割です。
(2022年3月8日 改訂公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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