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漢方薬名の意味

女神散(ニョシンサン)

1.女神散(ニョシンサン)の意味

 女神散の名は、性に効がある剤(浅田宗伯)に由来します。女神(メガミ)という意味ではありません。
 一方、中医学的には、(シン)は、意識・思考や精神を担う生命活動の根源的な力です。本方は、が不安定になった心火上炎(シンカジョウエン:気逆上衝)や心神不安(シンシンフアン)に用いる方剤と考えられます。
 これらの病態の背景には、肝気鬱結(カンキウッケツ:気滞)および瘀血(オケツ)や気血両虚(キケツリョウキョ)があります。
 本方の古典に記載された適応病態は血証上衝(ジョウショウ≒気逆)です。

 なお、女神散は、(エイ≒ ケツ)を安定させる安栄湯(アンエイトウ)という方剤の別名です。ちょっと一言を参照してください。

2.女神散の適応

 女神散は、
心火上炎のぼせめまい頭痛いらだち焦燥感動悸不安不眠)、
肝気鬱結抑うつ、胸苦しい、心窩部や腹部の膨満感)があり、背景に
気血両虚(疲れやすい、月経不順)
が関与する病態に用いられます。

 本方は、のぼせ頭痛めまいなど産前産後や更年期の精神神経症状に用いられています。婦人更年期障碍(10)を参照してください。

 女神散が、婦人更年期障碍患者の愁訴を軽減することが報告されています。

 (4-8週間投与)は、 婦人更年期障碍患者の夜間覚醒ゆううつ等の精神症状への効果が高く、動悸の改善効果は加味逍遙散投与群より低い。

準ランダム化比較試験 産婦人科漢方研究のあゆみ. 2003; 20: 95-100.

 本方は、更年期のホルモン補充療法や、乳がんのホルモン療法によるのぼせにも応用されています。

3.女神散の配合生薬

 女神散の配合生薬を図1に示しました。

 図1上段の黄芩(オウゴン)と黄連(オウレン)は、心火上炎気逆上衝)の熱証を冷やし鎮めていらだち不安を軽減する清心瀉火薬(セイシンシャカヤク)です。
 中段は、抑うつなどの気滞を改善する生薬群です。香附子(コウブシ)は理気活血薬(カッケツヤク)、檳榔子(ビンロウシ)は理気利水薬(リキリスイヤク)です。
 下段は、血証血虚瘀血)と気虚を改善する生薬群です。人参心神不安の軽減に寄与します。

 なお、女神散の煎剤療法では大黄(ダイオウ)が含まれている場合があります。

4.女神散の関連方剤

(カミショウヨウサン)は、冷えのぼせいらだち抑うつ不安など多様で変動する不定愁訴を伴う婦人更年期障碍や月経前症候群(PMS)に用いられます。婦人更年期障碍(4)を参照してください。

  本方の【効能又は効果】の適応体力は「中等度以下」です。女神散は「中等度以上」となっています。

 加味逍遙散の適応となるのぼせいらだちは、女神散より程度は軽く、冷え女神散より強い傾向です。
 両方剤の使い分けに関しては、婦人更年期障碍(9)も参照してください。

 両方剤に関する口訣(クケツ:先達が伝える使用上の秘訣)では、
 ・加味逍遙散は、主訴が多様で変動する病態に適し、
 ・女神散適応症状は固定的だとされています。
 この口訣は、配合生薬(図2)から説明し難い先達の経験知です。

 両方剤の共通生薬は多くありません。女神散は、黄連香附子川芎檳榔子などの理気薬を含みます。
 加味逍遙散は、柴胡(サイコ)山梔子(サンシシ)牡丹皮(ボタンピ)を含む理気活血剤です。

(キュウキチョウケツイン)は、月経不順産後の疲労感気力低下冷え症傾向を伴う神経症抑うつ不安いらだち)に用いられます。血の道症(7)を参照してください。

 芎帰調血飲の適応病態は女神散と類似しますが、女神散より体力低下状態冷え症顔色不良抑うつ傾向の病証に適します。

 方剤名の調血血証(ケッショウ:血虚瘀血)を整える薬能です。気証(キショウ:気虚気滞)を整える薬能も含まれています(図3)。
 ・気虚(気力低下、倦怠感、冷え症傾向)⇒ 白朮(ビャクジュツ)
 ・気滞(抑うつ、不安、頭重感)⇒ 香附子烏薬(ウヤク)
 ・血虚(顔色不良、めまい、動悸、冷え症傾向)⇒ 熟地黄(ジュクジオウ)
 ・瘀血(頭痛、肌荒れ、精神不穏、月経不順)⇒ 益母草(ヤクモソウ)。

 芎帰調血飲加味逍遙散女神散を比較しました(図4)。左から右にかけて、冷え症傾向からのぼせ傾向の順に配列しました。

ちょっと一言:(トピックス)

女神散(ニョシンサン)と安栄湯(アンエイトウ)

 女神散は、日本で創案された安栄湯(アンエイトウ)に由来します。
 (エイ)は全身の栄養を整える機能で、という字も用いられます。(ケツ)に相当します。安栄血証(ケッショウ)を安定化する薬能です。

 安栄湯は戦場での金瘡(刀きず)を負った兵士の体力低下と出血や錯乱状態(興奮恐怖不安)を軽減するために創案されました。
 その使用経験を踏まえて、女性の血証(産後や更年期の精神神経症状:血の道症)に用いられるようになりました。

(2023年9月19日 改訂公開)


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