病気の悩みを漢方で

１．麦門冬湯（ﾊﾞｸﾓﾝﾄﾞｳﾄｳ）ほか･･･放射線治療後の口乾燥

　口腔や頭頸部にあるがんの放射線治療後には、唾液腺が傷害され口の中が乾燥し味覚が低下し摂食や嚥下が障碍されます。

1.1）麦門冬湯（ﾊﾞｸﾓﾝﾄﾞｳﾄｳ）は放射線治療後の口腔乾燥を軽減するために用いられます（口腔乾燥症状改善薬と併用）（図１）。

　この使用例は､麦門冬湯が咽頭の乾燥感を伴う咳き込みに用いられてきた滋潤剤（ｼﾞｼﾞｭﾝｻﾞｲ）としての使用実績を踏まえています。
　かぜの漢方（３）長引く咳を参照してください。

1.2）白虎加人参湯（ﾋﾞｬｯｺｶﾆﾝｼﾞﾝﾄｳ）は放射線治療後の口腔の顕著な時に麦門冬湯と併用されています。
　本方は口渴､ほてりに用いられてきた滋潤剤です。熱中症と夏ばての漢方（１）熱感と口渴を参照してください。

1.3）柴胡桂枝乾姜湯（ｻｲｺｹｲｼｶﾝｷｮｳﾄｳ）は放射線治療後の口渴で緊張や不安や動悸を伴う場合には麦門冬湯と併用されます。
　本方は､神経過敏で動悸､息切れ､不眠､ロの乾きに用いられてきた理気剤（ﾘｷｻﾞｲ）です。
婦人更年期障碍の漢方（11）不眠を参照してください。

２．半夏瀉心湯（ﾊﾝｹﾞｼｬｼﾝﾄｳ）と立効散（ﾘｯｺｳｻﾝ）･･･口内炎

　頭頸部がんの放射線治療後には､口腔粘膜炎（口内炎）が起きます。痛みのために食事が進まず退院が遅れます。

2.1）半夏瀉心湯（ﾊﾝｹﾞｼｬｼﾝﾄｳ）は放射線治療後の口内炎を軽減します（うがい薬や局所麻酔薬と併用）（図２）。

　半夏瀉心湯は口内炎､食欲不振､下痢に用いられてきました。口内炎の漢方（２）急性期の全身治療を参照してください。
　この使用実績を踏まえて本方は､放射線照射後や抗がん剤による口内炎にも応用されるようになりました。

2.2）立効散（ﾘｯｺｳｻﾝ）も放射線治療後や抗がん剤による口内炎に応用されています。
　本方は､歯痛や口腔内の痛みに用いられてきました。配合生薬の細辛（ｻｲｼﾝ：図３）の局所麻痺作用が痛みの緩和に寄与しています。
　口内炎の漢方（１）患部の局所治療も参照してください。

　　半夏瀉心湯､立効散エキス製剤の
　　服用方法用法の工夫

３．半夏瀉心湯と五苓散（ｺﾞﾚｲｻﾝ）･･･腸炎

　半夏瀉心湯と五苓散には放射線治療後の下痢（放射線性腸炎）を軽減した臨床報告があります。
　両方剤の基礎研究では大腸内の水分を吸収する作用が明らかにされています。