病気の悩みを漢方で

　漢方製剤は殺がん細胞性抗がん剤の代わりにはなりませんが､がん治療薬による副作用を軽減する支持療法で活用されています。

１．シスプラチン（白金製剤）の副作用

1.1）六君子湯（ﾘｯｸﾝｼﾄｳ）･･･吐き気､食欲不振を軽減
　シスプラチンはDNA複製を阻害する使用歴の長い抗がん剤です。本剤による吐き気､食欲不振には､六君子湯（ﾘｯｸﾝｼﾄｳ）が有用です。
　六君子湯は吐き気を止めるだけでなく食欲を増して虚弱状態も改善する点が西洋薬の制吐剤と異なります。
　やせと栄養失調の漢方（３）がんを参照してください。

1.2）柴苓湯（ｻｲﾚｲﾄｳ）･･･腎障碍を軽減
　柴苓湯（ｻｲﾚｲﾄｳ）は､大量の輸液と併用してシスプラチンによる腎障碍を軽減することが明らかになっています（図１）。

２．オキサリプラチン（白金製剤）の末梢神経症状

　オキサリプラチンは大腸がん治療の標準３剤といわれる抗がん剤です。特徴的な副作用として､手や足がピリピリとしびれ､ジンジンと痛む、感覚がなくなるなどの末梢神経症状があります。

　牛車腎気丸（ｺﾞｼｬｼﾞﾝｷｶﾞﾝ）がオキサリプラチンによる末梢神経症状を軽減します（鎮痛薬と併用。図２）。

　本方は、タキサン系抗がん剤による同様の副作用の軽減にも使用されています。
　この支持療法は牛車腎気丸が､四肢の冷えや痛み､糖尿病性神経障碍のしびれに用いられてきたことの応用例です。
糖尿病の漢方（３）病期に応じた治療２を参照してください。

３．イリノテカン（核酸合成阻害薬）による遅発性下痢

　イリノテカンは核酸合成を阻害する抗がん薬です。本剤は投与８時間以降に遅発性の水様性下痢を起こします。
　半夏瀉心湯（ﾊﾝｹﾞｼｬｼﾝﾄｳ）はイリノテカンによる遅発性下痢を軽減します（腸管運動抑制薬と併用）。その作用機序も明らかになっています（図３）。

　この支持療法は半夏瀉心湯が､食欲不振で腹が鳴る下痢を軽減してきたことの応用例です。過敏性腸症候群の漢方（２）下痢型を参照してください。

　半夏瀉心湯は､イリノテカンによる口内炎にも用いられています。その時にはエキス剤を水に懸濁させて、薬液が患部に接触するように口に含んでブクブクしてから服用します（含嗽服用）。
　がんの漢方（４）放射線治療後の諸症状も参照してください。