漢方を知る

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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

やせと栄養失調の漢方


1.がんとその治療に伴うやせと栄養不足と栄養失調

 やせて栄養不足の原因になる疾患にがんがあります(図1)。

1)がんによるやせ: がん細胞が増殖すると食欲を低下させ、やせ(筋肉量の減少)と栄養不足となり衰弱します。この病態を悪液質といいます。

2)がん治療によるやせ: がんの摘出手術抗がん剤放射線治療は、傷害性や副作用があるので、やせと栄養不足と栄養失調の原因になります。

 現代の科学医療は、がんを摘出し増殖を抑制するために有用です。
 漢方医療は、がんとその治療に伴うやせと栄養不足と不快な症状を軽減して治療が継続できるように併用されます。
 使用される多くの方剤に人参(ニンジン)が含まれます。

2.がん ⇒ やせ ⇒「疲労倦怠感、だるさ」

 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)は、やせと栄養不足によって体力が低下し、疲労倦怠感、だるさに悩む状態に適します。フレイル(虚弱)の漢方(2.胃腸虚弱)も参照してください。

 本方に含まれる10生薬の中で代表的な4生薬を図2に示しました。
1)消化吸収機能を調えて体力を回復させる人参(ニンジン)と黄耆(オウギ)、
2)この2生薬と連携してだるさや内臓下垂を軽減するのが柴胡(サイコ)と升麻(ショウマ)の役割だと考えられています。

 補中益気湯は、栄養不足になって抵抗力が低下する状態を軽減します。

(医療用)補中益気湯製剤の術前術後投与の有用性
  手術の前と術後に本方を使用すると、感染症の悪化を軽減し抗菌剤の使用量が少なくなることが報告されています。

3.がん ⇒ やせ⇒ 疲労倦怠感、栄養不足、貧血傾向

3.1) 十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)・・・貧血傾向改善の基本方剤

 十全大補湯は、やせて体力が低下した人の疲労倦怠や顔色が悪い貧血傾向に用いられる基本方剤です。

 本方は図3に示すように、人参(ニンジン)を含む黄色で囲んだ4生薬と、
熟地黄(ジュクジオウ)を含む灰色で囲んだ4生薬が骨格になっています。

 フレイル(虚弱)の漢方(3.顔色不良)を参照してください。

3.2) 帰脾湯(キヒトウ)・・・(やせと栄養不足・貧血傾向)+不安感、不眠

 帰脾湯(キヒトウ)は十全大補湯の適応症状に加えて、抑うつ感、不安、不眠に悩む人に用いられます。体力の低下したがん患者さんの不安感や意欲低下の軽減に適します。

 フレイルの漢方(6.意欲低下)も参照してください。

4.がん治療に伴う有害事象(副作用)

4.1) 六君子湯(リックンシトウ)・・・抗がん剤による食欲不振、吐き気

 食欲不振と吐き気はやせる大きな原因になります。六君子湯は、抗がん剤による食欲不振や吐き気を軽減するために併用されています。
 図4人参半夏が寄与しています。

4.2) 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウトウ)・・・抗がん剤による口内炎、下痢

 口内炎は食欲不振を招き、下痢は吸収を阻害してやせの原因になります。
半夏瀉心湯は、抗がん剤や放射線治療による口内炎や下痢を軽減するために併用されています。図4の赤字で示した2生薬が寄与しています。

 口内炎の漢方(2.急性期の全身治療)を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

がん医療を補完する漢方製剤

 がん細胞の増殖やそれを抑える治療によってやせて栄養不足になり体力は低下します(図1)。
 漢方製剤は、抗がん剤(殺がん細胞薬)の代用にはなり得ませんが、栄養不足や体力低下による種々の苦悩を軽減することでがん医療を補完します。

(2019年10月15日公開)

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