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病気の悩みを漢方で

1.分泌物の少ない乾燥皮疹
乾燥皮疹に用いられる主な方剤を図1にまとめました。下部の枠内は適宜併用される方剤です。
図1の中では熱感を伴う乾燥皮疹には温清飲が適し、熱感のない炎症の軽微な場合は当帰飲子が第一選択薬です。
皮膚瘙痒症の漢方の2回の解説を参照してください。
一貫堂方(イッカンドウホウ)は柴胡清肝湯(サイコセイカントウ 15味)や荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ 17味)などの温清飲の加味方です。
一貫堂方と十味敗毒湯は4回目に解説します。
2.地黄(ジオウ)を含む四物湯(シモツトウ)関連方剤
皮膚の乾燥病態には補血(ホケツ)生津(セイシン)滋潤薬(ジジュンヤク)の地黄を主薬とする四物湯関連方剤の適応になります。
乾燥肌の漢方を参照してください。
2.1)温清飲は乾燥皮疹を潤す四物湯と湿潤皮疹を清熱する黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)を2:1の比率で含みます。四物湯の比率が高いので色艶が悪く乾燥した皮疹に適します(なお配合比率の異なる製剤もあります)。
乾燥皮疹と化膿皮疹が併存する場合は温清飲に関連する一貫堂方の柴胡清肝湯や荊芥連翹湯が適します。
2.2)当帰飲子はかゆみと乾燥が顕著で落屑(ラクセツ)を伴う皮膚瘙痒症に用いられます。
本方は四物湯を基本にする方剤です(図2)。
図2から当帰飲子と温清飲の適応病態の相違がわかります。当帰飲子は赤字の清熱薬が少ないので、熱感のある皮疹には適さず、冷え症傾向の人の乾燥皮疹・老人性皮膚瘙痒症に使用されます。乾燥肌の漢方を参照してください。
2.3)三物黄芩湯(サンモツオウゴントウ)は手足のほてり(煩熱)がある肌荒れや乾燥皮疹のかゆみに用いられます。また乾燥皮疹に用いられる十味敗毒湯や加味逍遙散(カミショウヨウサン)や温経湯と併用されます。
本方は温清飲の2生薬(熟地黄、黄芩)と苦参(クジン)からなります。皮膚瘙痒症の漢方(2)熱感とほてりを参照してください。
3.温経湯(ウンケイトウ)
温経湯と当帰飲子の適応は共に冷えと乾燥皮疹です。両方剤の使い分けの目安を図3に示しました。
・温経湯は血虚・津液不足と瘀血(オケツ)による月経異常や婦人更年期障碍を背景にし、冷えと手のひらのほてりを伴う乾燥皮疹に適します。漢方薬名の意味:温経湯を参照してください。
・当帰飲子は乾燥が顕著で熱感のない皮疹に適します。
皮膚瘙痒症の漢方(1)皮膚の乾燥も参照してください。

当帰飲子の臨床効果
当帰飲子は21日間投与すると老人性皮膚瘙痒症患者の皮膚水分保持量を有意に高めます。その効果は投与中止後7日間持続することが明らかにされています。
(2021年1月25日 公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。


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