病気の悩みを漢方で

１．分泌物のある湿潤皮疹に用いられる主な方剤

　湿疹･皮膚炎の漢方医療では､皮疹の湿潤と乾燥の程度を方剤を選択する指針にします。
　今回は分泌物のある湿潤皮疹に用いられる主な方剤を解説します（図１）。

　図１左側が急性期､右側が慢性期に適する方剤です。
治頭瘡一方が乳幼児の急性期の湿潤皮疹に用いられます。
　図１下部の枠内は適宜併用される方剤です。

　一貫堂方（ｲｯｶﾝﾄﾞｳﾎｳ）は柴胡清肝湯（ｻｲｺｾｲｶﾝﾄｳ）や荊芥連翹湯（ｹｲｶﾞｲﾚﾝｷﾞｮｳﾄｳ）など温清飲（ｳﾝｾｲｲﾝ）の加味方です。漢方薬名の意味：温清飲を参照してください。
　なお､一貫堂方と消風散は湿潤皮疹と乾燥皮疹が併存する病態に適しますので､４回目の稿で解説します。 　

２．治頭瘡一方（ﾁﾞﾂﾞｿｳｲｯﾎﾟｳ）

　治頭瘡一方は乳幼児の胎毒（ﾀｲﾄﾞｸ）と称されてきた顔面や頭部の皮疹に頻用されます（図２）。
　分泌物が多く､化膿､びらんを伴う湿潤性の皮疹や痂皮（ｶﾋ：かさぶた）が付着した病態に適します。

　治頭瘡一方の配合生薬を図３に示しました。

　図３上段右の忍冬（ﾆﾝﾄﾞｳ：スイカズラの葉と茎）と連翹（ﾚﾝｷﾞｮｳ）が熱感を冷ます清熱（ｾｲﾈﾂ）と化膿を軽減する排膿･消癰（ｼｮｳﾖｳ）に寄与します。
　本方は皮疹の性状に応じて他剤と併用されます（図４）。

３．清上防風湯（ｾｲｼﾞｮｳﾎﾞｳﾌｳﾄｳ）

　清上防風湯は発赤､化膿が顕著な顔面や頭部の皮疹やにきびに用いられます。 のぼせ傾向の若者の赤いにきび（図５）に適した“漢方にきび薬”です。
　本方はに活血剤の桂枝茯苓丸（ｹｲｼﾌﾞｸﾘｮｳｶﾞﾝ）と併用されます。

　清上防風湯は黄連解毒湯の３生薬と防風などの祛風薬（ｷｮﾌｳﾔｸ）に加えて排膿薬の桔梗（ｷｷｮｳ）を含みます。

　治頭瘡一方と清上防風湯を比較しました（図６）。

　両方剤は頭部､顔面の化膿傾向の皮疹に用いられますが､
・治頭瘡一方は分泌物が多い乳幼児の急性湿疹に､
・清上防風湯は熱感､のぼせが顕著なにきびに適します。
漢方薬名の意味：清上防風湯を参照してください。

４．越婢加朮湯（ｴｯﾋﾟｶｼﾞｭﾂﾄｳ）

　越婢加朮湯は発表利水薬の麻黄と蒼朮と清熱薬の石膏を含みます（図７）。
　本方は四肢関節の腫脹､疼痛､熱感に用いられることが多い方剤です。
　皮膚科領域では急性期の熱感､水疱のある湿潤皮疹や蕁麻疹に用いられます。

　本方は治頭瘡一方や消風散の適応病態で水疱や湿潤の顕著な時に併用されます。