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病気の悩みを漢方で

胃苓湯(イレイトウ)
1.胃苓湯(イレイトウ)名の意味
胃苓湯(イレイトウ)の胃は、平胃散(ヘイイサン)を、苓は五苓散(ゴレイサン)を意味しています。本方は、平胃散と五苓散の合剤です(図1)。

本方には、白朮(ビャクジュツ)と蒼朮(ソウジュツ)が含まれています(図2)。

平胃散は、胃部膨満感、消化不良、食欲不振、下痢を軽減する理気化痰、利水健脾剤です。漢方薬名の意味:平胃散を参照してください。
五苓散は、二日酔い様症状(頭痛、吐き気、口渴、むくみ、尿量減少)を軽減する利水健脾剤です。雨天で悪化する低気圧頭痛や、飲めば噴き出すように吐く水逆症状が特徴です。頭痛(6)や霍乱を参照してください。
以上から方剤名は、本方が、平胃散の適応となる胃腸症状に加えて五苓散の適応となる吐き気、下痢が併発している病態に適することを示唆しています。
2.胃苓湯の適応
胃苓湯は、胃腸の消化吸収機能と体内の水分の偏在を調えて、胃部膨満感、消化不良、食欲不振、頭痛、吐き気、むくみ、下痢を改善する方剤です。
炎症の軽微な急性胃腸炎や暑気あたりの下痢に頻用されます。霍乱を参照してください。
胃苓湯の応用例
・かぜ、インフルエンザに伴う下痢・嘔吐に即効。
日良自律., 1990; 35: 168-172
・精神的ストレス下の過敏性腸症候群患者の冷飲食による下痢を軽減。
日東医誌., 2019; 70: 247-253
胃苓湯に含まれる五苓散が、ノロウイルス感染による水様性下痢、噴水状の嘔吐(日東医誌., 2010; 61: 5-8)を軽減した報告があります。ノロウイルス下痢を参照してください。
3.平胃散を含む胃苓湯の関連方剤
藿香正気散(カッコウショウキサン)は、平胃散の6生薬と、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ:理気化痰)の5生薬を含みます(図3)。漢方薬名の意味:藿香正気散を参照してください。

藿香正気散は、胃苓湯と同様の薬能を有しますが、辛温解表薬の比率が高く、胃苓湯より夏かぜに伴う吐き気や胃もたれ、食欲不振、下痢に適します。夏かぜや胃腸かぜを参照してください。
4.五苓散を含む胃苓湯の関連方剤
柴苓湯(サイレイトウ)は、和解剤(ワカイザイ)の小柴胡湯(ショウサイコトウ:清熱理気化痰、補気)と五苓散の合剤です。
本方は、清熱燥湿薬の柴胡と黄芩(オウゴン)を含みます(図4)。そのため本方は、胃苓湯より炎症性の下痢に適します。潰瘍性大腸炎の粘血便、下痢を軽減し、ステロイド薬を減量できた報告があります(医療, 1991; 45(2): 174-176)。

5.下痢に用いられるその他の胃苓湯の関連方剤
啓脾湯(ケイヒトウ)は、補気剤の四君子湯(シクンシトウ)の4生薬と消食薬(消化薬)の山楂子(サンザシ)と止瀉薬の山薬(サンヤク)と蓮肉(レンニク)を含みます(図5)。
本方は、吐き気、胃もたれを伴い胃腸虚弱で消化不良性の慢性軟便泥状下痢に適する点で胃苓湯と異なります。漢方薬名の意味:啓脾湯を参照してください。


胃苓湯の口訣(抜粋)
・平素から痰飲のある人が、急性胃炎や暑気あたりになって水瀉性下痢を呈する場合に用いる。嘔吐、腹痛、心窩部のつかえを伴う(髙山宏世)。
・平胃散と五苓散の合方。平胃散の適応(上腹部膨満感、悪心)と五苓散の適応(消化管内の水分停滞による嘔吐、下痢)に用いる(森雄材)。
・暴飲暴食や夏ばて、消化吸収機能が衰え消化管に水湿が溜まった病態による下痢、胃部痞塞感、身体が重い、むくみに用いられる。(三浦於菟)。
2026年6月10日 公開
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病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。


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