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病気の悩みを漢方で

呉茱萸湯(ゴシュユトウ)
1.呉茱萸湯(ゴシュユトウ)名の意味
呉茱萸湯の名は、呉茱萸(ゴシュユの果実:図1)が主薬であることを意味しています。

呉茱萸は、冷えを伴う
・頭痛、腹痛、月経痛に用いられる散寒止痛薬(サンカンシツウヤク)、
・吐き気、胃もたれ、しゃっくりを軽減する化痰降逆薬(ケタンコウギャクヤク)肝胃不和(カンイフワ)を軽減する疎肝降気薬(ソカンコウキヤク)でもあります。
このことから方剤名は、本方が冷えを伴う頭痛や吐き気に適することを示唆しています。
2.呉茱萸湯の適応
本方の古典には、厥冷(ケツレイ)頭痛、吐利に用いられると記載されています。厥冷は冷え、吐利は、吐き気と下痢です。食後の心窩部の停滞感を伴います。
本方は、体力の低下した人の冷えを伴う激しい反復性頭痛の第一選択薬です(臨床神経, 2013; 53: 938‒941)。
2.1)頭痛に関する呉茱萸湯の報告例
・薬剤の使用過多による頭痛(MOH)から原因薬剤の離脱し、元の片頭痛状態として治療継続(トリプタン系薬と併用)。
総合診療, 2016; 26: 232-238
・慢性頭痛の頻度、程度を軽減。前兆があり、病歴が長い月経関連片頭痛に有効例が多い。
脳神経外科と漢方, 2017; 3: 31–35
・冷えると悪化する片頭痛(両こめかみの拍動性頭痛)を軽減。月5~10錠服用していたイブプロフェンを中止。
日本頭痛学会誌, 2024; 51: 140-143
呉茱萸湯は、片頭痛に頻用されています(脳神経外科と漢方, 2022; 7: 1-7)。片頭痛を参照してください。
頭痛治療における呉茱萸湯との併用例
・苓桂朮甘湯: 動悸、吐き気、めまい、頭痛、不安感(≒肘後方奔豚湯証)。
日東医誌., 2009; 60: 519-525
・当帰芍薬散: 月経前と月経時頭痛に併用。
日東医誌., 2011; 62: 627-633
・五苓散: 透析頭痛を軽減。
脳神経外科と漢方, 2020; 6: 55-57
頭痛治療における呉茱萸湯と五苓散の鑑別(脳神経外科と漢方, 2016; 2: 5–9)
・五苓散: 気圧の変化による頭痛。嘔吐、めまいを伴うが、冷えは軽微
・呉茱萸湯: 片頭痛。発作時に手足や前額部の冷え。激痛による嘔吐。めまいは軽微。
2.2)胃腸症状に関する呉茱萸湯の報告例
・腹部膨満感、食欲不振を伴う噯気(げっぷ)。
日東医誌., 2007; 58: 861-865
・吐き気、動悸、手足の冷え。
産婦人科漢方研究のあゆみ., 2014; 31: 89-93
・難治性吃逆(しゃっくり)。
Palliative Care Research, 2015; 10: 505‒508
しゃっくりを参照してください。
3.冷えと頭痛に用いられる呉茱萸湯の関連方剤
3.1)当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)は、呉茱萸湯と同様に冷えと頭痛に用いられています(脳神経外科と漢方, 2016; 2: 41-46) 。
本方は、全身や手足の冷えと痛み(腹痛、月経痛、腰痛)としもやけのような下肢の血行障碍に適します。腰痛(2)やしもやけを参照してください。
本方は、散寒薬の呉茱萸、細辛(サイシン)を主体として、軽度な補気補血剤の桂枝湯を含みます。さらに経絡内の気血循環を促進する通脈薬の桂皮と木通(モクツウ)と、補血薬の当帰と芍薬を含む点で呉茱萸湯と異なります(図2)。

3.2)桂枝人参湯(ケイシニンジントウ)は、慢性頭痛に対して呉茱萸湯と同程度の改善効果のあることが報告されています(Pharm. Med., 1993; 11(12): 288-291)。
本方は、補気散寒剤の人参湯に温経散寒(オンケイサンカン)通脈降気薬(ツウミャクコウキヤク)の桂皮を加味した方剤です(図3)。漢方薬名の意味:人参湯を参照してください。
本方は、呉茱萸湯より冷え、頭痛、吐き気の程度は軽微です。気逆(キギャク:気上衝)による発作性の顔面紅潮やのぼせを伴うことがあります。桂枝甘草湯(桂皮、甘草:降衝鎮悸)の適応症状です。

3.3)半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)は、呉茱萸湯と同様に冷えと頭重感・頭痛、吐き気に用いられます(女性心身医学, 2000; 5: 161-166)。本方は、呉茱萸湯より胃腸虚弱傾向で冷えと頭痛の程度が軽微な病態に適します。
本方は、甘草と大棗以外の六君子湯(補気化痰)の配合生薬を含みます。さらにめまいを軽減する熄風薬(ソクフウヤク)の天麻(テンマ)を含む補気痰飲利水、熄風剤です(図4)。頭痛(6)を参照してください。


呉茱萸湯の口訣(抜粋)
・本方の適する頭痛は、生理前後、首筋が凝って側頭部から内部に刺しこむように痛む、嘔気や足冷えを伴う、疲れた時に発作性にくる(山本巌)。
・本方は、冷えによる頭痛や嘔吐に頻用される。胃気を温め、寒湿による胃気上逆を降ろし、食後の嘔吐を緩和する温中降逆剤(三浦於菟)。
・呉茱萸湯は手足の冷え、吐いてもすっきりしない嘔吐を伴い、寒冷で増強される頭痛に適する。五苓散は、吐いて一時的に楽になる嘔吐を伴う頭痛に、半夏白朮天麻湯は、胃腸障碍を伴う慢性で軽微な頭痛・頭重に適する、(花輪壽彦)。
2026年5月7日 公開
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病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。


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