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病気の悩みを漢方で

真武湯(シンブトウ)
1.真武湯(シンブトウ)名の意味
真武湯の元の名は、玄武湯(ゲンブトウ)でした。玄武は、北方を守る四方神です。亀と蛇の合体した黒色の神獣として描かれています。
五行説では北は、腎や陰証(インショウ:寒証)と関係づけられています。
玄武湯の名は、玄武⇒黒色⇒腎なので補腎陽散寒薬(ホジンヨウサンカンヤク)の附子(ブシ:図1)を含む方剤名とされました。
補腎や腎陽虚(ジンヨウキョ)は、漢方薬名の意味:八味地黄丸を参照してください。
真武湯は、附子と散寒薬の生姜と、利水健脾薬(リスイケンピヤク)の白朮(ビャクジュツ)茯苓(ブクリョウ)を含む補腎陽・補脾・利水剤(ホジンヨウホヒリスイザイ)です(図2)。補血薬(ホケツヤク)の芍薬(シャクヤク)は、過剰な利水による乾燥を防ぎます。

以上のことから真武湯の名は、冷えが主体の腎陽虚と、むくみ、めまいなどの水滞(スイタイ)症状に用いる方剤であることを示唆しています。
2.真武湯の適応
真武湯の適応は、新陳代謝の低下(腎陽虚)による冷えと全身倦怠感と、めまい・浮遊感、むくみ(水滞)を伴う病態です。冷えると悪化する症状に適します。気温の低い早朝の水様性下痢(虚寒性の鶏鳴下痢)が特徴です。
疲労感(6)や冷え症(2)やめまい(2)を参照してください。
冷え、胃腸症状、下痢、倦怠感に関する真武湯の報告例
・腸管麻痺治療後の倦怠感、めまい感、手足腹の冷え、早朝未消化便を軽減(修治ブシ末と併用)。
日病総診誌., 2019; 15: 434-441
・体力低下者の疲労倦怠感を軽減。
漢方の臨床, 2023; 70: 191-196
めまいに関する真武湯の報告例
・手足の冷え、息切れ、臍上下の動悸を伴う高齢者の起床時のめまいを軽減。
日本脳神経漢方医学会誌, 2024; 9: 1‒11
その他の領域における真武湯の報告例
・高齢者の心不全に伴う胸水を減少。
日東医誌., 2017; 68: 117-122
・慢性腎臓病の進行を抑制(防已黄耆湯と併用)。
日東医誌., 2020; 74: 378-383
・新型コロナウイルス感染後の倦怠感を軽減。
日東医誌., 2025; 76: 211-219
3.冷えと下痢に用いられる真武湯の関連方剤
3.1)人参湯(ニンジントウ)は、補気薬の人参を主薬として、温中散寒薬の乾姜(カンキョウ)で裏寒を温めて軟便下痢を軽減する方剤です(図3)。
漢方薬名の意味:人参湯を参照してください。

本方は、胃腸虚弱者の冷え(脾胃虚寒)の軟便下痢、冷房下痢に用いられます。冷え症(2)や夏の諸症状を参照してください。
本方と真武湯と併用して茯苓四逆湯(ブクリョウシギャクトウ)の代用とされます(漢方の臨床, 2020; 67: 923-926)。両方剤は、疲労感(6)でも比較しています。
3.2)啓脾湯(ケイヒトウ)は、補気剤の四君子湯(シクンシトウ:図4黄色枠の4生薬)と消食薬(消化薬)の山楂子(サンザシ)と止瀉薬の山薬(サンヤク)と蓮肉(レンニク)を含みます。
本方は、吐き気、胃もたれを伴い胃腸虚弱で消化不良性の軟便泥状下痢に適する点で真武湯と異なります。霍乱や漢方薬名の意味:啓脾湯を参照してください。

4.めまいに用いられる真武湯の関連方剤
4.1)苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)は、めまい、立ちくらみに頻用されています。めまい(2)や起立性調節障碍を参照してください。
本方は、気逆の発作性の頭痛、動悸を鎮める桂皮と甘草との薬対(降衝鎮悸)を含みます(図5)。この両生薬が本方と真武湯との相違点です。

苓桂朮甘湯と真武湯を併用して全身倦怠感、冷えを伴う起立性調節障碍の立ちくらみを軽減した報告があります(漢方の臨床, 2025; 72: 665-670)。
4.2)当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は、冷え症と顔色不良と月経に関連するめまいに用いられています(耳鼻臨床., 1995; 88: 1571-1578)。
本方は、顔色不良や月経不順を調整する補血活血の3生薬と利水の3生薬を含む補血活血利水剤(ホケツカッケツリスイザイ)です(図6)。冷え症(1)を参照してください。補血活血薬を含むことが本方と真武湯との相違です。

4.3)桂枝加苓朮附湯(ケイシカリョウジュツブトウ)は、桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ:図7の点線で囲んだ7生薬)に茯苓(ブクリョウ)を加味した方剤です。
本方は、真武湯と苓桂朮甘湯(茯苓、桂皮、白朮、甘草)を含みます。そのため冷えを伴うめまいに用いられています(日東医誌., 2009: 60: 465-469)。

なお.桂枝加苓朮附湯の主たる適応は、原方の桂枝加朮附湯と同様に冷えを伴う関節の腫痛です。足のむくみ(2)を参照してください。

真武湯の口訣(抜粋)
・歩いていてフラッとする、歩行中に右か左にそれる、雲の上を歩くように不安定、目の前がスーッと流れるよう感じるめまいに用いる(藤平健)。
・虚寒性下痢に用いる代表的方剤。腎陽虚と脾陽虚のために虚寒証となり水湿が貯留した病態を腎と脾を暖め強めて水湿を取り去る(三浦於菟)。
・新陳代謝が低下して顔色不良で、下腹部が冷たく、夜明け前の下痢(鶏鳴下痢)に用いる。人参湯の下痢は、上部消化管症状を伴う(新井信)。
2026年3月17日 公開
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病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。


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