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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

咳と痰

(1)感冒初期の咳と痰
(2)こじれた感冒の咳と痰

1.こじれた感冒の咳と痰

 前回は、ひきはじめの感冒(風邪)の咳や痰に用いる漢方薬を説明しました。
今回は、こじれた時期の感冒の咳や痰の治療を紹介します。

こじれた感冒の咳と痰

 漢方医療では症状群とその経過の情報が必要です。漢方医療の相談をされるときには、

  1.  いつから?:「いつごろから風邪を引いているのか、話してください。


  2.  状態は? :イラストのAさんのように水っぽい「痰」を伴う咳なのか、Bさんのように、のどにからみつくような粘っこい「痰」を伴う咳き込みなのか、痰が多いのか、少ないのか、などの状態を話して下さい。

2.こじれた感冒(風邪)の「咳と痰」

柴朴湯や半夏厚朴湯の適するタイプのイメージ


 (2・1)数日以上経った時期の「咳や痰」: 柴胡(サイコ)や薬用人参(ニンジン)を含む処方を用います。免疫力を調える漢方薬です。免疫力はウイルスなど体外から侵入した異物を処理する機能のことです(抵抗力や抗病力ともいいます)。

 この時期に用いる代表的な処方は柴朴湯(サイボクトウ)です。これは気管支炎や気管支喘息の発作と発作の間の時期(寛解期)にも用います。


柴 胡 ミシマサイコの畑(奈良県)

柴 胡

ミシマサイコの畑(奈良県)

 柴胡はミシマサイコという植物の根です。この植物名は静岡県三島地方に自生していたことに由来します。現在では主として中国で栽培されています。日本でも奈良県などで少し栽培されています。

 柴朴湯には、不安感や不眠を伴う内向性の気うつ傾向の人に用いる半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)という処方が含まれています。この処方は緊張した時の咽の「つまり感(咽喉頭異常感といいます)」に用います。半夏(ハンゲ)や厚朴(コウボク)が症状の軽減に寄与しています。

ハンゲ 6.0g
ブクリョウ 5.0g
コウボク 3.0g
ソヨウ 2.0g
ショウキョウ 1.0g

半夏厚朴湯の配剤生薬の写真

 半夏はカラスビシャクという植物の地下にある球状の茎です。むかつきや空咳に用いる代表的な漢方薬です。半夏は、そのまま口に入れると「えぐみ」が強いのですが煎じ薬では「えぐみ」がなくなります。


カラスビシャクの花とそれを掘り起こした塊茎 半 夏

カラスビシャクの花とそれを掘り起こした塊茎

半 夏

 厚朴はホオノキの幹の皮(樹皮)です。ホオノキは、葉は、味噌と肉をのせて焼く「ほう葉味噌」という奥飛騨の郷土料理に使われます。

 ほのかな香りに気持ちを和らげる作用があります。ホオノキの材は工芸品や下駄の歯(ほう歯の下駄)として使われます。

ホオノキの花 中国の凹葉ホオノキ 厚 朴

ホオノキの花

中国の凹葉ホオノキ

厚 朴

 (2・2)こじれた時期ののどの乾燥感: イラストのBさんの咳き込みに適するのが麦門冬湯(バクモンドウトウ)のように、口やのどの「かわき」など、体内の水の不足した病態を改善する漢方処方です。薬用人参や半夏を含む処方です。

 医療用の麦門冬湯は、妊娠時の感冒の咳や、慢性閉塞性肺疾患および西洋薬剤の副作用による咳に応用されています(これらの場合は医療機関にご相談ください)。

 主薬の麦門冬はジャノヒゲの根の肥大部です。ジャノヒゲはリュウノヒゲとも称され、庭木の下草に植えられ冬には紺青色の実をつけます。「わだつみの色より碧し龍の玉(宇田零雨)」など俳句では冬の季語になっています。

ジャノヒゲとその果実 麦門冬

ジャノヒゲとその果実

麦門冬

 (2・3)胃腸虚弱のこじれた咳: 胃腸を整えて咳や微熱や食欲不振を伴うこじれた感冒の仕上げをする処方が参蘇飲(ジンソイン)です。処方名にあるように人参と紫蘇葉(シソヨウ)を中心にして、半夏も含む処方です。

 紫蘇葉はシソの葉です。梅干しやしば漬けに用いる赤ジソを用います。胃腸虚弱や気うつ感に用いる薬食同源の漢方薬です。

 赤シソの色素は「いわゆる」ポリフェノール成分です。また種子の油にはα-リノレン酸を含み、その抗アレルギー作用に注目されています。

シソ 紫蘇葉

シソ

紫蘇葉

 参蘇飲には桔梗根(キキョウ)と薬用人参が配剤されています。

キキョウの花 桔 梗

キキョウの花

桔 梗

3.症状を語っていただくことが、適切な漢方医療を受ける「コツ」です

 以上のように、患者さんの雰囲気や症状に応じて漢方処方を選ぶのが漢方医療です。そのため、悩みや色々な症状をくわしくお話ください。
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~ちょっと一言~「しば」漬けは、「紫葉」漬け

しば漬けは、京都洛北の大原特産の漬け物です。賀茂ナスやキュウリやミョウガの子などと赤紫蘇とともに塩漬けにした漬け物です。香りと酸味が特徴です。
「しば」漬けは「柴」漬け、と記載されますが、紫蘇の葉に由来する「紫葉」漬け、という語源説もあります。

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