病気の悩みを漢方で

１．色々な肩・首筋のこりを診る漢方医療の眼

　首筋や背筋や肩のこりの漢方医療では、肩こり以外の症状を含めて総合的に診断して処方を使い分けます。
　今回は色々な症状を考慮に入れた肩・首筋のこりの漢方治療を整理します。

２．血圧と胃腸症状を目安にした使い分け

　SOさんとOGさんは、高血血症傾向で顔面紅潮してイライラしたかんしゃく傾向で首筋のこりに悩んでいます。このイライラには黄連（オウレン）が適します。
　便秘傾向であれば、大黄（ダイオウ）を含む三黄瀉心湯（サンオウシャシントウ）が適します。
　便秘の症状がないOGさんには、黄連解毒湯（オウレンゲドクトウ）が適します。

　RKさんとTSさんは、冷え症傾向で肩のこりや「めまい」に悩んでいます。血圧は低い傾向で、胃腸も虚弱傾向です。
　RKさんは、胃腸が虚弱傾向で食後にみぞおちあたりが「つかえる」人のイメージです。 薬用人参や半夏（ハンゲ）を含む六君子湯（リックンシトウ）が適します。

　TSさんは、冷え症で顔色のよくない貧血傾向の人のイメージです。当帰（トウキ）や芍薬（シャクヤク）を含む当帰芍薬散（トウキシャクヤクサン）が適します。胃腸が弱く皮膚の乾燥傾向が強い場合には薬用人参を含む十全大補湯（ジュウゼンタイホトウ）が用いられます。

血圧	{	高い傾向	｛	便秘傾向	…SOさん　三黄瀉心湯
				普通便	…ＯGさん　黄連解毒湯
		低い傾向	｛	胃部停滞感	…RKさん　六君子湯
				冷え症	…TSさん　当帰芍薬散

３．気分・情緒を目安にした使い分け

　かんしゃく傾向には柴胡（サイコ）を含む処方も適します。
　のぼせで肥満・便秘傾向であれば、柴胡と大黄（ダイオウ）を含む大柴胡湯（ダイサイコトウ）の適応になります。 血圧の変動が不安でドキドキして眠れない場合には、柴胡加竜骨牡蛎湯（サイコカリュウコツボレイトウ）が適します。

　KSさんは、婦人更年期障碍で、冷えのぼせ、情緒の変動が大きい人のイメージです。柴胡と山梔子（サンシシ）や当帰を含む加味逍遙散（カミショウヨウサン） が適します。

　HKさんは内向性の気うつ傾向の人のイメージです。肩こりとともに、「咽の異物感や胸の閉塞感」に悩みます。半夏（ハンゲ）や厚朴（コウボク）を含む半夏厚朴湯（ハンゲコウボクトウ）が適します。

気分	{	かんしゃく傾向	のぼせ傾向	…DSさん　大柴胡湯
			不安・動悸	…SBさん　柴胡加竜骨牡蛎湯
			情緒の変動	…KSさん　加味逍遙散
		気うつ傾向	咽のつかえ感	…HKさん　半夏厚朴湯

４．肩こりに伴う症状をくわしく話してください。

　このように肩こりに伴う症状や気分を考慮して適切な処方を選ぶことが漢方医療です。
　肩や首筋の「こり」や痛みで漢方医療を希望される方は、肩こり以外の胃腸の状態、とくに便通、さらには、のぼせ感や冷え症、イライラや焦り感などの気分の変調などをくわしく話してください。
　気安く相談できる「かかりつけの」薬剤師さんを見つけることが、適切な漢方医療を受ける近道です。