病気の悩みを漢方で

１．吐き気を伴う「めまい」に用いられる主な漢方方剤

　今回は､吐き気（悪心）や嘔吐を伴う「めまい」に用いられる漢方方剤を解説します（図１）。

２．五苓散（ｺﾞﾚｲｻﾝ）･･･二日酔いに似た症状を伴う「めまい」

　五苓散（ｺﾞﾚｲｻﾝ）は、吐き気､頭痛､咽の渇き､排尿が少ない､むくみなどを伴う「めまい」に用いられます。これらは二日酔いに似た症状です。

　本方に含まれる生薬の中で、図２に示した白朮（ﾋﾞｬｸｼﾞｭﾂ）と沢瀉（ﾀｸｼｬ）の組み合わせが、回転性「めまい」の軽減に寄与すると考えられています。

　苓桂朮甘湯 （ﾘｮｳｹｲｼﾞｭﾂｶﾝﾄｳ）は五苓散の関連方剤です。立ちくらみ、起立性調節障碍､頭痛､動悸を伴う「めまい」に適します。
　本方に含まれる生薬の中で、桂皮（ｹｲﾋ）と甘草（ｶﾝｿﾞｳ）の組み合わせが、動悸の軽減に寄与すると考えられています。

　この両方剤は､苓桂朮甘湯は動悸とのぼせを目標に､五苓散は吐き気と頭痛を目安にして使い分けます。
めまいの漢方（３）頭痛､頭重感も参照してください。

３．半夏厚朴湯（ﾊﾝｹﾞｺｳﾎﾞｸﾄｳ）･･･抑うつ感や膨満感を伴う「めまい」

　半夏厚朴湯（ﾊﾝｹﾞｺｳﾎﾞｸﾄｳ）は、抑うつ感､不安感､吐き気を伴う「めまい」に用いられます。
　本方は「つかえ感や膨満感」が目標になります。のど元・食道部・胸・心窩部・腹部のどこかに違和感があります。
　本方の配合生薬を図３に示しました。

図３の上段の２生薬は抑うつ感や不安を軽減する理気薬（ﾘｷﾔｸ）です。
上段の厚朴（ｺｳﾎﾞｸ）と下段の３生薬は吐き気や「めまい」を軽減する化痰薬（ｹﾀﾝﾔｸ）です。

　本方に関しては､胃食道逆流症の漢方（３）理気化痰剤や、抑うつ感の漢方も参照してください。

４．半夏白朮天麻湯（ﾊﾝｹﾞﾋﾞｬｸｼﾞｭﾂﾃﾝﾏﾄｳ）･･･胃腸虚弱者の「めまい」

　半夏白朮天麻湯は、疲労倦怠感､吐き気､頭重感のある立ちくらみ、起立性調節障碍などの「めまい」に用いられます。本方は胃腸虚弱傾向､低血圧、冷え症傾向の人に適します。

　本方に関しては、めまいの漢方（２）低血圧傾向を参照してください。

　半夏白朮天麻湯は、図４に示すように、
　・半夏（ﾊﾝｹﾞ）など半夏厚朴湯と共通の化痰薬（ｹﾀﾝﾔｸ）に加えて、
　・「めまい」を軽減する天麻（ﾃﾝﾏ）と白朮（ﾋﾞｬｸｼﾞｭﾂ）と沢瀉（ﾀｸｼｬ）
　・胃腸を調える人参（ﾆﾝｼﾞﾝ）と黄耆（ｵｳｷﾞ）
などから構成されています。