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病気の悩みを漢方で

症状と漢方薬

関節リウマチの漢方

(1)基礎知識
(2)エキス剤療法

1.関節リウマチ(RA)の漢方エキス製剤療法の概要

  図1に示すように、RAの関節破壊を抑制するMTX(メトトレキサート)のような治療薬の登場によって、現代の漢方エキス製剤の適応領域は、かつての漢方煎剤療法の時代と異なってきました。


  今回は図1
 2)慢性期の全身病態を(西洋薬と併用しながら)調整する領域と
 3)西洋薬による胃腸障碍や易感染性などの副作用を軽減する支持療法
で使用される漢方製剤を解説します。
 1)初期の軽度の腫痛を軽減する領域は前回に概説しました。

2.RA慢性期の全身病態を調整する漢方製剤

 RA慢性期の全身病態を調整する漢方製剤は、1)風寒湿(フウカンシツ)を発散する祛風湿薬(キョフウシツヤク)と、2)疾病の本態を調整する補益薬(ホエキヤク)や3)発病後の病理産物を消去する活血薬(カッケツヤク)などからなります(図2)。


 図3はRA慢性期の足腰の衰えを軽減する主な補腎薬(ホジンヤク)です。


 なお、漢方エキス剤だけでは関節の痛みや変形を抑制する効果には限界がありますので西洋薬のMTX分子標的薬と併用するのが現実的です。

3.RA慢性期の全身病態を調整する主な3方剤

 RA慢性期に用いられる補腎・補血薬熟地黄補腎・活血薬(カッケツヤク)の牛膝を含む3方剤(図4)を解説します。変形性膝関節症の漢方(2)でも比較しています。

(ソケイカッケツトウ)は関節腫脹に加えてや筋肉の痛みしびれに適します。日中より夜間に痛む傾向です。本方は補血活血剤四物湯(シモツトウ)を含みます。3方剤の中では祛風湿薬活血薬の配合比率が高い方剤です。
漢方薬名の意味:疎経活血湯を参照してください。
 冷えと痛みが強い時には桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)を、暗紫色の歯肉や下肢の静脈瘤を伴う場合には桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)を併用します。


大防風湯(ダイボウフウトウ)は栄養状態が悪く冷えが顕著で筋肉量の減少した病態に適します。補血活血剤四物湯補気薬人参黄耆(オウギ)と補腎薬牛膝附子、さらに祛風湿薬防風(ボウフウ)などを加味した方剤です。

(ゴシャジンキガン)は疲労倦怠感、足腰の衰え、冷え、しびれ、排尿異常など腎虚の症状を確認して使用します。漢方薬名の意味:牛車腎気丸を参照してください。
 本方は附子桂皮熟地黄牛膝など補腎薬を基軸にした方剤です。祛風湿薬を含みません。3方剤の中では本方が頻用薬です。

活血剤(カッケツザイ) 長引くRAの固定的な疼痛は瘀血(オケツ)に相当します。
 図3の方剤には活血薬牛膝桃仁(トウニン)牡丹皮(ボタンピ)が配合されていますが、病態に応じて活血剤桂枝茯苓丸が併用されます。

4.RA慢性期の心身の虚弱状態を調整する補剤(ホザイ)

 慢性期のRAでは全身足腰の衰えに加えて長引く治療に対する不安焦り抑うつ傾向などの精神神経症状を伴います。RA患者には神経症の傾向や抑うつ傾向のある人が多いとされています。

 このような体力の低下した心身症傾向には適する主な方剤として、
 ・人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ:倦怠感、意欲低下、咳嗽、息切れ、不眠)、
 ・帰脾湯(キヒトウ:倦怠感、顔色不良、抑うつ感、不安、動悸、不眠)があります。
  両方剤は漢方薬名の意味:人参養栄湯で比較しています。

 この2方剤は、RA患部の炎症病態の治療ではなく、RAに悩んでいる患者の心身の虚弱や精神神経症状の調整を目指して用いられます。これが病中病後の体力低下を回復する補剤(ホザイ)の適応領域です。

5.西洋薬による副作用を軽減する支持療法

 MTX分子標的薬は明確な副作用があることを考慮しながら使用されます。副作用症状を軽減する支持療法に漢方製剤も少しは貢献できそうです。

MTXによる口内炎: 口内炎には半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)が有用です。エキス剤を水に懸濁させて、薬液が患部に接触するように口に含んでブクブクしてから服用します。がんの漢方(5)を参照してください。

 MTX分子標的薬は免疫抑制作用による易感染性の副作用があります。副作用による易感染性には補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などで改善できる可能性があります。漢方薬名の意味:補中益気湯を参照してください。

ちょっと一言:(トピックス)

関節リウマチの後期治療における補剤(ホザイ)

 補剤正氣(セイキ:生命維持活動)の不足を補う方剤です。病中病後の気力と体力を回復させて闘病反応を支えます。

 補剤はRA以外の慢性疾患の後期治療で活用されています。
アトピー性皮膚炎の漢方(3)COPDの漢方がんの漢方(1)を参照してください。

(2021年6月25日 公開)


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