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病気の悩みを漢方で
婦人更年期障碍の漢方
1.肩こりの原因と病理
肩こりや肩の痛みは、首から背中の上部にある僧帽筋(ソウボウキン)の緊張が持続して血流が低下した状態です。
肩こりの原因は図1に示すように多様です。長時間のパソコン作業のような同じ姿勢を継続するなど生活習慣に関連する要因を少なくするための予防が必要です。「ちょっと一言」を参照してください。
今回から、婦人更年期障碍の肩こりに用いられる方剤を3回に分けて解説します。1回目は婦人更年期障碍の基本方剤、2回目は血圧変動を伴う肩こり、3回目は胃腸症状・冷え・痛みを伴う肩こりの予定です。
なお、かぜ(感冒)に伴う肩こりは、首筋と肩のこり(1.感冒の肩こり)を参照してください。
2.婦人更年期障碍の肩こりに用いられる主な生薬
婦人更年期障碍の肩こりは、精神的ストレスによる気の(キ)の流れが停滞した病態(気滞 キタイ)の関与が大きく、これが筋肉の血流低下(瘀血 オケツ)を誘発します。
このような病態を改善する柴胡(サイコ:理気薬 リキヤク)、芍薬(シャクヤク:緩急止痛薬)、牡丹皮(ボタンピ:活血薬 カッケツヤク)の原材料となる植物の画を図2に示しました。
3.婦人更年期障碍の肩こりに用いられる基本3方剤
婦人更年期障碍に用いられる基本3方剤(図3)は、肩こりに用いられます。
加味逍遙散(カミショウヨウサン)は図2の3生薬を含みます。肩こりをはじめ冷えのぼせ、いらだち、気うつ、不眠など愁訴の多い場合に用いられます。
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は芍薬(シャクヤク)を含み、冷え症・貧血・低血圧傾向で首や肩の筋肉が少ない人の肩こりに適します。
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は牡丹皮(ボタンピ)と芍薬を含み、比較的体力があり、のぼせて足冷えを訴える(高血圧傾向の)人の肩こりに適します。
4.気うつ、いらだちを伴う肩こりに用いられる方剤
柴胡疎肝湯(サイコソカントウ)と抑肝散(ヨクカンサン)はストレスによって引き起こされる気うつ、いらだちを伴う肩こりに用いられます。
これらは加味逍遙散に関連する柴胡(サイコ)を含む方剤です(図4)。
柴胡疎肝湯は、気うつ、いらだち、腹部膨満感などを伴う肩背のこわばりに適します。香附子(コウブシ)や枳実(キジツ)など気の巡りをよくする生薬を強化した方剤です。本方は治肩背拘急方(チケンパイコウキュウホウ)の関連方剤です。
抑肝散(ヨクカンサン)は、神経の高ぶり、怒り、興奮を伴う肩や背中のこりに適します。のぼせ、怒り、焦燥感、頭痛、めまい、痙攣を軽減する釣藤鈎(チョウトウコウ)を含む方剤です。抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)も同じように用いられます。
肩こりの主な要因として筋肉疲労と冷えがあります。
- 1.筋肉疲労:
- 図1にあるように同じ姿勢を続けることによる筋肉疲労も肩こりを引き起こします。パソコンの長時間作業では眼精疲労も加わります。1時間ごとに作業を中断し目を閉じたり、腕や肩を回して肩甲骨を動かしましょう。
- 2.冷え:
- 図1に肩こりの原因として寒冷刺激を記載しています。夏の冷房の風が直接あたらないように、冬の低温にも冷えないように風呂で温まる対策を考えてください。
(2018年4月13日 公開)
病気の悩みを漢方で
谿 忠人 先生
大阪大学薬学部卒・同大学院薬学研究科修了
- 大阪大学薬学部・助手 (生薬材料学と生薬化学)
- 近畿大学東洋医学研究所・講師・助教授 (臨床漢方薬学)
- 住友金属工業(株)未来技術研究所・医薬研究部長 (創薬研究)
- 富山大学和漢医薬学総合研究所・教授 (資源科学と漢方医療薬学)
- 大阪大谷大学薬学部・教授 (漢方医療薬学)
- 平成24(2012)年3月に大阪大谷大学を定年退職。
- 大阪大谷大学名誉教授。
- 日本東洋医学会名誉会員、和漢医薬学会名誉会員。
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