病気の悩みを漢方で

１．婦人更年期障碍（手足の冷え）に用いられる主な生薬

　婦人更年期障碍に伴う冷え症の漢方相談では、「どこがとくに冷えますか」とお尋ねします。
　今回は婦人更年期の手足の冷えと痛み（頭痛・腰痛）を伴う場合に用いられる方剤を解説します。この領域で用いられる主な生薬を図１に示しました。

２．当帰芍薬散（ﾄｳｷｼｬｸﾔｸｻﾝ）･･･婦人更年期障碍（冷え症）の頻用方剤

　婦人更年期障碍の冷え症には当帰芍薬散（ﾄｳｷｼｬｸﾔｸｻﾝ）が頻用されています。
　本方は手足や腰の冷えと頭痛､月経痛を軽減します。疲労感があり顔色が悪い人に適し、めまい､耳鳴り､動悸、むくみも改善します。

　当帰芍薬散は６生薬からなります（図２）。
　・上段の３生薬が血（ｹﾂ）の不足や流れの停滞を調整して冷えを軽減し、
　・下段の３生薬が水滞（ｽｲﾀｲ）による冷えとめまい、動悸を軽減します。

　当帰芍薬散に関しては、冷え症（３．全身の冷え）や冷え症（７．月経痛）や疲労感の漢方（６．冷えと疲労感）も参照してください。

３．婦人更年期障碍（冷えと痛み）に用いられる多様な方剤

　冷え症治療には、冷えに伴う症状に応じて多様な方剤が用いられます。
例として冷えに伴う頭痛と腰痛に用いられる方剤群を図３に示しました。

４．当帰四逆加呉茱萸生姜湯（ﾄｳｷｼｷﾞｬｸｶｺﾞｼｭﾕｼｮｳｷｮｳﾄｳ）
　　　･･･手足の冷えと頭痛､腹痛､腰痛､月経痛を伴う婦人更年期障碍

　手足の冷えには当帰四逆加呉茱萸生姜湯（ﾄｳｷｼｷﾞｬｸ ｶ ｺﾞｼｭﾕｼｮｳｷｮｳﾄｳ）も適します。本方は、手足とくに下肢の冷えと痛みが強く、しもやけ（凍瘡）の専門薬です。
　さらに冷えに伴う頭痛（片頭痛）や腹痛、腰痛、月経痛に悩む人にも適します。

本方は９生薬からなります（図４）。
　・当帰（ﾄｳｷ）と芍薬（ｼｬｸﾔｸ）で血（ｹﾂ）の不足を補って温め、
　・最下段の４生薬が冷えを温めます。とくに呉茱萸（ｺﾞｼｭﾕ：図５）は冷えを温め痛みを緩和する重要な生薬です。

　当帰四逆加呉茱萸生姜湯散に関しては、冷え症（４．冷えと腰痛）や冷え症（６．冷え腹・腹痛）も参照してください。